くさデカ

 菊ちゃんの店をあとにした3人は異様な人だかりを発見した。みんな携帯で写真をとっている。3人が人ごみをかきまわると、黒い帽子にスーツを着た男がアイスを食べている。


「ああ、平ちゃん!」

「すげー!平ちゃんだ!」


 男の姿をみたモモとしげるは携帯で写真をとり始めた。安永はひとり状況が飲み込めていない。


「『平ちゃん』って誰?」

「ヤスケン、平ちゃんしらないの?くさデカの平ちゃんだよ!静岡のカリスマタレントなんだから」

「モモッチ、仕方ないよ。ヤスケン1月に北海道から来たばっかりだから。平ちゃん知らないのも当然かもよ」

「そっか、でもヤスケン。とにかくこの人はすごいんだから!」


 くさデカの平ちゃんこと、平畠啓史のグルメレポートが始まった。


「今週のアレは釜揚名物「シライス」ということで。これはシラス入りのアイスということで「シライス」なんですねぇ。では、一口。うーん、シラスの塩味とアイスの甘みが絶妙にあってますね。この味のハーモニーはまさに『ルギーマーチングバンド』。そして、食べた後の口解けの爽快感。この爽快感、まさに『釜揚噴水公園』。さらになんど食べても飽きない、おふくろの味みたいなものを感じますね。これはまさに『居酒屋ナンシー』ですね」


 平ちゃんのレポートが終わると、人々はシライスを求めて行列を作った。モモたちも並ぶ。30分後、やっとの思いでシライスを買った3人、一口食べてみる。


「お、結構いける」

「あ、おいしい」

「うん、うまい!」


 シライスを食べた3人が歩いていると、モモがメガネをかけた長身の男性を発見した。


「あ、ルギーさんだ」

「本当だ」

「ルギーさんって……あれ?おじさんだ」

「え?」

「『へのつっぱりはいらんですよ』っていったおじさんか?」


 モモと安永は驚く。


「ああ、間違いないな、うちのおじさんだよ。でもなんで『ルギー』?」


 しげるが不思議そうに答える。

 すると、ルギーの横に女性がひとり駆け寄ってきた。その姿に3人は声を荒げてしまった。


「え、あすか先生?!」

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