こどもの日パーティ
5月5日、こどもの日。安永拳を先頭にサッカー部、体操部あわせて15人は港の食堂「ロビンソン亭」に到着した。屋根の上には巨大な魚拓が三枚こいのぼりのように掲げられていた。
「どうも、こんにちは」
「いらっしゃい、拳ちゃん。さあ、入って」
一行を出迎えたのは「ロビンソン亭」の看板娘ののりだ。のりが手際よく席に案内した。
「どんなご馳走が来るのかな?楽しみだな」
全員これから出てくるご馳走に興味津々だ。しばらくすると、大量の刺身・天ぷら・エビフライなどが運び込まれた。運び込んでくる人の中にしげると安永が知っている顔がいた。
「あれ?モモッチ、なんでここにいるの?」
「あら、ヤスケンにリーダー!あなたたちだったの、お客さんって?」
三日月モモがなぜか「ロビンソン亭」にいた。
「うん。で、なんでここに?」
「あたしは先輩にここの手伝いを頼まれてきたんだけど。あとでおいしいもの食べられるって聞いたから」
「モモ、早く来て!まだまだ運ばなきゃいけないから」
「はーい。なっちゃん先輩、今いきます。それじゃ、またね」
モモは厨房へ戻っていった。
ご馳走がそろうと、モモ、なっちゃん先輩も含めみんなで食べ始めた。
「ヤスケン先輩、はい、あーん」
菊ちゃんが安永にエビフライを食べさせようとする。
「ちょっと、菊ちゃん、照れるな」
安永は照れながら口をあけて、エビフライを食べた。
「ヒューヒュー、うらやましいね」
友人たちが冷やかす中、その様子を見たモモは唇を尖らせた。
一方、しげるは一人黙々と刺身を食べていた。目線はサキに向けられているが、間に何人もいて話しかけることができない。そこへ、しげるの肩をたたく人影が、
「ちょっと、ルギー!なに寂しそうにしてるの!あたしがいるでしょ!」
「え、いや、俺『ルギー』じゃなくて『しげる』ですけど」
「あら、ごめんなさい。でも、あんたルギーに似てるわよ」
その女性はすでに酔っているようだ。その姿を見た安永は思わず声を上げた。
「ナンシーおばさん!なんでここにいるの?」
しげるにからんだ女性は安永の叔母、ナンシーであった。
「ハロー、拳ちゃん」
ナンシーは安永に手を振る。
「いや、なんでここにいるんよ?」
状況が把握しきれない安永はナンシーに問う。
「飲み友達のロビンソンに『パーティーやるから、手伝ってくれ』って頼まれたから手伝いに来たのよ。そこで、なっちゃんとモモちゃんにも手伝いに来てもらったわけ」
「そうなのか。でも、あまり若者にからむなよ」
「はーい、わかりましたよ。んー」
ナンシーは突然しげるの顔を近づけて、そのまま勢いで唇を重ねてしまった。突然の衝撃的な出来事にしげるは驚き失神してしまった。
「ちょっと、リーダー。しっかり、しっかりしろ!」
安永が急いで駆け寄り、しげるの頬をたたくが、しげるはなかなか目を覚まさない。3分後ようやくしげるは目をさました。しげるは自分の唇に指を当て、呆然としていた。
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