こどもの日

メンバー発表

 4月25日 16:00。三日月モモは放課後だというのに3-Dの教室に残っていた。すると、次々と生徒たちが3-Dに入ってくる。そして、最後に教室に入ったのは吹奏楽部の指揮者、玉木であった。玉木は教壇に立って話しはじめた。


「そろそろインターハイの応援がはじまるから、今からメンバーの発表をするよ」


 3-Dに集まったのは吹奏楽部の部員たちであった。これからインターハイの応援メンバーの発表をするのだ。次々と部員の名前を呼ぶ玉木。そして、二十人ほど呼んだ後、


「じゃ、メンバーは以上」


 モモの名前は呼ばれなかった。


 メンバー発表の後、部室に戻ろうとするモモを玉木が呼び戻した。


「何よ、玉木」


 モモは不満気に答えた。


「いや、頼みたいことがあって。新入部員の教育係をやってもらいたいんだけど」

「え、なんであたしなの?第一なんであたしがメンバーに選ばれないの?」

「だって応援に木琴パートないだろ」

「無いけどさ。ドラムとかもできるし、高校最後の年だからやっぱり応援したいじゃない。三年で選ばれなかったの、あたしだけだし」

「いや、各パートの人数足りてるし。人数に限りがあるんだから、仕方ないじゃん。それともこの前の『なんでもやります』発言は嘘か?」

「う、それを言われると……」


 マーチングバンドに感動したモモはしばらくサボっていた部活に戻った際、部員全員の前で今までの侘びをこめて『なんでもやります』と宣言してしまったのだ。


「じゃあ、わかった。引き受けるわよ」


 モモは渋々教育係を引き受けることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る