ラストスパート

 お昼休みも残りわずか。しかし、まだ品物は残っている。リーダーと安永は疲労困憊で売るのをあきらめようとしていた。


「ロビンソン、今日はこの辺でいいんじゃない」


 安永が話を切り出した。すると、ロビンソンは、


「もう少しだから、がんばるよ。もう少しで売り切れるんだから」


 と言って、あきらめる様子は少しも無い。


 三人は3年D組の教室に入っていった。


「マグロカツサンドはいかがっすか!」

「新メニューイカの塩辛巻きもあるよ!」

「両方ともうまいこと間違いなし!」

「リーダーにヤスケン、なにしてんの?」


 二人に声をかけたのは、三日月モモだった。


「モモッチ、頼む、買ってくれ・・・」


 しげるがモモに懇願する。


「しょうがないわね。じゃあ、マグロカツサンド5つにイカの塩辛巻き3つね」

「え、そんなに食うの?」

「な、なに言ってんの?家族へのお土産用よ」

「モモッチなら食えそうだけど」

「ちょっと、ヤスケン、何?」

「ごめん」


 モモは失言を発した安永をにらんだ。


 その後、クラスメートたちが買ったおかげで、なんとか売り切ることができた。


「やった、売り切ったぞ!みんな、ありがとう!」


 しげるが感謝の言葉を叫んだ瞬間、ロビンソンの携帯電話が鳴った。


「おお、のりか。今日の分完売だよ」

「なにのんびりしてるのよ!お父さん、早く帰ってきてよ。あたし一人じゃお客さんさばききれないよ」

「おお、わかった。すぐ帰るよ」


 ロビンソンは携帯電話を切ると、リーダーと安永を呼んで、


「ちょっと、片付けるの手伝ってよ。早く帰らなきゃいけなくてさ」


 二人が文句を言う暇もなく、ロビンソンは二人の手を引き、片づけを手伝わせた。すべての荷物を急いでトラックに積み、ロビンソンが早々と去っていった瞬間、昼休みの終了のチャイムが鳴った。


「ロビンソン・・・」


 二人は空腹と疲労と絶望でうつむいた。

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