1階で売る

 しげる、安永そしてロビンソンの3人の売り歩きが始まった。まず向かったのは一階の一年生の教室。3人は「1―A」と書かれたドアを開けて、大きな声で品物を宣伝する。


「マグロカツサンドはいかがっすか!」

「新メニューイカの塩辛巻きもあるよ!」

「両方ともうまいこと間違いなし!」


 すると、大きなペットボトルを持った少女が近づいてきた。


「安永先輩、何してるんですか?」

「ああ、菊ちゃん。売店の売り歩きの手伝いをしているんだ。一つどう?イカの塩辛巻きとか」


 安永が声をかけたのは、サッカー部の新マネージャー、菊池萌子だった。


「え、あたしイカの塩辛苦手なんです。じゃ、マグロカツサンドのほうで」

「ありがとう」

「拳ちゃん、ありがとうじゃなくて『ありがとうございました!』って元気よく言わなきゃ。接客の基本だよ」

「わかったよ、ロビンソン。ありがとうございました!」


 ロビンソンに注意された安永が元気に挨拶した。


 次に向かったのは「1―B」とドアに書かれた教室。中に入ると、紫のリボンをつけた女子高生がいた。


「あ、江戸さん」

「キャプテン、どうしたんですか?」


 しげるが声をかけたのは、体操部のマネージャーの江戸サキだった。


「いや、売店の売り歩きをしていて。一つどうかな・・・?」


 なぜか、しげるの顔が赤い。


「ちょっと、リーダー君。そんなちっちゃい声じゃだめだよ。大きな声で『お一ついかがですか?』って言わなきゃ。男子たるもの元気がなきゃ」

「わかったよ、ロビンソン。お一ついかがですか?」


 しげるが大きな声で勧める。


「ふふふ、じゃマグロカツサンドを」

「ありがとうございました!」


 しげるの顔が真っ赤になった。

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