しげるのホワイトデー その1

 3月14日。リーダーこと城ヶ崎しげるは体操部で使うテーピングをもらいに保健室へ向かっていた。


「あすか先生、テーピングもらいに来ました」

「あ、リーダー、いつもごくろうさん。はい、どうぞ」


 テーピングを渡す保健室のあすか先生の顔がいつも以上に輝いていた。


「あの、先生。なんかいい事ありました?」

「うふふ。顔に出ちゃった?実は今日、旦那と久しぶりのデートなんだ」

「え?旦那さん?」


 リーダーは思わず目を見開いた。


「うん。もしかして、知らなかったの?」

「はい……。でも、この前ひかり先生のところに泊まってましたよね?」

「ああ、あの時は旦那と喧嘩しちゃって、怒って出てってひかり先生のところに転がり込んじゃったんだ」

「そうだったんですか……。では旦那さんと楽しんできてください。失礼します」

「ありがとう。またね」


 リーダーは保健室の戸を閉めると、手に持ったテーピングを見つめながら一人さびしく体育館へ帰っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る