マグロカツサンド
11:58。しげるはクラスメートとひそひそと話している。
「おい、今日はあの日だな」
「そうそう、マグロカツサンドの特売日だ。ありゃ絶品だよ。あれ食べるとここの高校来てよかったと思えるんだ」
しげるたちの高校では月に一度売店でマグロカツサンドの特売日があるのだ。その人気は絶大で長い行列ができ、買うまで最大で30分以上もかかってしまう。
「はやく、チャイム鳴らないかな」
しげるが昼休みを待ち遠しくしている頃、体育の授業が少し早めに終わった安永は教室に戻る途中、エプロンをつけて大きな箱を持っているかわいらしい女性を発見した。
「あ、のりさん。こんにちは。今日はなんでここに?」
「あら、拳ちゃん。ここの高校だったの?うちの店で月に一度マグロカツサンドの特売やってんのよ」
のりは安永の父が足しげく通う漁港の食堂「ロビンソン亭」の看板娘、海の男たちにとってのマドンナだ。
「重そうですね。手伝いましょうか?」
「じゃ、あそこの車にまだ箱があるから持ってきてくれない?売店までね」
「はい、わかりました」
安永は車に積んである箱をひょいと持ち上げて、のりと一緒に売店に向かった。
12:15。しげるはマグロカツサンドを買う生徒たちの行列にはまっていた。
「あー、ちょっと遅れたかな」
5分後、やっと売店にたどり着いたしげるは、売店のお姉さんの隣で手伝っている男子をみて怒りがわいてきた。しげるは早々とマグロカツサンドを買うと、売店の男子に向かって、
「この女ったらしが!」
と捨て台詞を吐き、走り去った。思わぬ罵声をあびた安永は驚きを隠せない。
「拳ちゃん、お友達?」
「いや、違うけど。なんだ、あれ……」
その3分後、マグロカツサンドは見事に完売した。のりさんは安永にマグロカツサンドを一つ差し出した。
「拳ちゃん、お疲れ様。ほんと助かったよ」
「いえいえ、父ちゃんがお世話になってますから、これくらい手伝わないと」
「でさ、日曜日空いてる?友達とひなまつりパーティーをするんだけど来ない?」
「あ、いいですね。行きますよ、いやぜひ」
「じゃあ、日曜日昼の1時に駅ね」
「はい、わかりました」
おいおい、何か忘れていないかい、安永!
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