安永拳に刻まれた謎の暗号

 安永が家路に着くと、父とある女性がすでに酒盛りをしていた。


「ナンシー叔母さん来てたんだ」


 その女性は安永の叔母、ナンシーであった。


「拳ちゃん、おきゃえり。ヴァレンタインはどうだったの?」


 酔ったナンシーの問いに対して、安永は


「ヴァレンタイン?別にもらってないけど」


 と適当にあしらうように答えた。


「おいおい、情けないな。父ちゃんは『ロビンソン亭』ののりちゃんからもらったぞ。義理だけどな。がはは」


 酒で上機嫌の父が豪快に笑う。酔っ払いたちの付き合いから逃れようと部屋に戻ろうとしたとき、叔母のナンシーが何か発見した。


「拳ちゃん、背中になんか書いてあるよ。どれどれ」


 ナンシーは安永の服を強引に脱がし、背中に書いてあるものを見た。


「なんか汗でにじんじゃって、ほとんど読めないよ。どれどれ……。

『るぎ は  さない  た  もの』?

 こりゃ、暗号だね」

「おい、拳。飯の前に風呂に入って背中の文字落としてこいよ」


 父に言われるまま、安永は急いで風呂場に向かった。

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