第4話 交渉1

「やっぱり見えるんだ」

階段の史奈さんがゆっくりと唇を釣り上げる。私は冷や汗をかく。どうして立ち止まってしまったのだろうか。死んだ人と関わると面倒なことになるのは目に見えてわかる。見える人は数少ない。幽霊達は見える人に助けを求める。だけど、私たちは見えるだけで何かが出来るわけではないのだ。幽霊達はそれを許してはくれない。だから、極力関わりを避ける。それなのに、バレていないと思っていたのに、まさかバレてしまっていたとは。驚きで足が止まってしまった。あぁ、私のバカ!反応しなかったらよかったのに!どうして反応してしまったのさ!

「私は『階段の史奈さん』って言われている。知ってるでしょ?」

「……知ってる」

私は小さな声で答える。他人から何を思われるか分からないからだ。私だけ見えていて周りの人間は見えないのだから、私の今の状況は〈一人で喋っている変なやつ〉なのだ。

「…なら話が早い」

『階段の史奈さん』は私の目の前まで躍り出た。



「私の代わりに相談事を解決してくれ」



「……断る!!!!!」


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