第2話 片山さんと椎奈

階段で噂を間に受けて本気で相談しているあの子がなんだかかわいそうになってくる。私には見えるからだ。だらけながら聴いている『階段の史奈さん』が。せっかく綺麗な顔をしているのにふてくされているからかなんだか情けない顔をしている。必死になって相談しているあの子は何も見えていないのだろう。……あれ?あの子って。

「……片山さん…?」

私の声で必死になって相談していた子がピタッと動きを止めた。振り返った時の彼女の表情はなんとも言えないくらい硬直している。人間ってこんなに綺麗に表情が硬直するものなんだ…。史奈さんは未だふてくされた感じの表情だが、「なんだ?」みたいな感じにもなっている。片山さんは学校一の美女である。そんな彼女は思いっきり顔を赤くしたかと思うと、いきなり叫ぶ。

「もしかして、聞いてたの?!」

うん、そりゃ丸聞こえですが…ここは

「何も見てないし何も聞いていないよ。うん、モテるけど未だ嘗て運命的な出会いがないから不安がってるなんて聞いてないよ」

「……そうかぁ、よかったぁぁ!っじゃないよ!がっつり聞いてるじゃない!」

片山さんは私の方に走ってきたかと思うと、私の腕を強引に掴み私を引っ張っていく。

「え、ちょっと待って。私次音楽だから…」

私の訴えは虚しく消えていく。史奈さんにまで訴えてみたものの相手は自分が見えていないと思っているからか、じっと見つめるだけで何もしない。

「どうか私の相談事を解決してください、史奈さん!」

史奈さんはプイッとそっぽを向いて「何も聞いてないよぉ〜」みたいな対応をとる。可愛い身なりしているくせに性格最悪!史奈さん!


どうもこうもできないまま連れてこられたのは誰もいない屋上である。秘密の話にはもってこいの場所だ。片山さんは息を整えて、私に向き直る。

「アンタ、1年B組の幽ヶ岡 椎奈ゆうがおか しいなでしょ!」

「そうだけど……なんで知ってるの?」

なんかこの人怖い。

「なんでってアンタ有名人なんだよ!影でモテるから…」

えー、初耳ぃ。


ここから私の平穏な日常はめちゃくちゃになっていく。

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