第11話 ヤマダの過去
「社長、おはようございます」
「おはようございます、社長」
今日も住んでいる都内の億ションから、社用車でオフィスに向かった山田正則。彼はネット上のショッピングサイト『ふるさとスイーツ』と展開し、一躍、有名になった起業家である。
大手商社で係長をしていた時に、地方で出会った有名ではないが親しまれて美味しい和菓子の存在を知り、それを紹介して通販できるようにしたいと思ったところから、彼の人生が変化した。
大手商社でも20代で係長、課長までいけると言われた優秀な山田は、惜しげもなく商社を退社。それまで築き上げた人脈と持って生まれた粘り強さと交渉力で、次々と老舗和菓子店を口説き落として自分が立ち上げたサイトで独占販売することに成功した。
絶対売れると確信した和菓子だけを厳選して販売。その味の素晴らしさに、なんでも販売する他のネットサイトとは違うブランド力を確立。
和菓子を皮切りに洋菓子、漬物、果物と取扱商品を増やし、売上高を2倍、3倍と成長する企業へと育て上げた。
山田が立ち上げた会社。
『ジャッジメントスター』
取扱商品の品質と消費者への満足が評価されて、少々、割高でも飛ぶように売れていた。今は年商500億円にも届き、今年は1000億円を超えると言われていた。
「社長、本日の最高経営会議は10時から。その前に8時に北海道支社長の面会があります。9時にブライトンホテルにて、経団連理事の渡部様と面会となっております」
美人秘書がそうタブレットの画面を見ながら、山田に午前中の予定を確認する。山田は頷きながら、美人秘書から香る香水の匂いに気づく。これはS社の最新作の香水である。
「美帆くん、よく手に入れたね。これはニューヨークでしかまだ手に入らない香りだと思うが……」
「あら、さすが山田社長。よく気がつきましたわ」
(あ……ち、ちょっとまずかったか?)
朝からセクハラ発言だったかと思った。社長と言えど、女性社員に対する言動は細心の注意が必要なのだ。人によっては匂いを嗅いだだけで、セクハラとなる。セクハラの定義は、相手が不快に思った瞬間に成立する。特に年上の男は、よく理解しないと人生を棒に振ってしまうのだ。
基本、おじさんが若い女性に何かアクションを起こせば、ほぼセクハラとなる。おじさんはそういう時代になったことを自覚しないといけないのだ。
「ああ、この間、ニューヨークで試供品を試してね。その匂いと同じだったのでね」
山田はそうさり気なく会話を続けた。卑猥な響きは一切なかったはずだ。実際に先週はプライベートジェットでニューヨークへ出かけていたから、この話は嘘ではない。
「社長、鼻がいいですわ。それは私の匂いも嗅ぎ分けてくださるということですよね」
そう言って秘書は山田に体を預けてきた。日本でも有数の会社となった山田の会社の社長秘書だ。かなりの美人だし、頭も切れる。この美帆という秘書は26歳で英語とフランス語が堪能だということだ。
「いや、そういうわけでは……」
「社長、この前の約束、忘れていませんよね?」
「約束?」
「はい。赤坂の方で美味しいすっぽんを食べさせくれる割烹店に連れて行ってくれると約束してくれましたよ……」
「ああ……そうだったね」
山田はだいぶ前のパーティでこの秘書に話の流れでそんなことを喋ったことを思い出した。だが、それは話の流れである。確かに美人で聡明ではあるが、この秘書の積極的なアプローチは、社長夫人の座を狙っているということが透けて見えて、山田はうんざりしてしまうのだ。
「今週は忙しいので、次の機会にするよ」
「そんなことおっしゃって、また忙しくなってしまいますよ。お店の名前を教えてください。来週の金曜日はどうでしょう。私の方で予約しておきますわ。金曜日は福岡のクライアントのご不幸絡みで接待の予定がキャンセルされておりますので、お時間がありますから」
(ぐ……グイグイ来るな~)
少したじろぐ山田。だが、ここでニヤケたり、動揺してはただのおっさんに成り下がる。山田はできる、そしてセレブで社長。いろいろ持ってる男なのだ。
「あ、ああ……そうしてくれ」
努めて冷静に渋く応えてみた。うれしそうな秘書の顔を見ると、その努力は成功したようだ。
社長秘書が若い社長と結婚する例は結構あると、他の青年実業家でつくる会合で聞いたことがある。なんの根拠もない単なる冗談だと笑い飛ばしたが、スケジュール管理をされているならば、こういう強引に来られて仕留められる者もいるだろう。
(しかし、部下とすっぽんか……やっぱ、まずいだろう……)
美帆には悪いが、金曜日までに差し障りのない理由を作るしかないと山田は思った。
社長室へつながる専用エレベーターのドアが開く。社長室の前には部屋付きの秘書が2名立ち上がってゆっくりと頭を下げる。
その傍には見事な胡蝶蘭が飾られている。銀座の行きつけのクラブから今朝届けられたものらしい。そういえば、スマートフォンの方にそれ関係のママやホステスからお誘いのメールがいくつも入っていた。
「君、お返しの花を贈っておいてくれ」
「はい、社長」
山田は最近、よく取引先の経営者を連れていくクラブに花を贈るように秘書に命じた。こういう付き合いも面倒であるが無視はできない。
「社長、京都の風神堂のご主人が、是非ともと置いていかれました」
そう言って秘書から手渡されたのは、美しい着物を着た娘。最近、山田が直接足を運び、本店以外では出さないと言われた老舗和菓子店の娘のお見合い写真である。
「あのおやっさん……しつこいなあ……まあ、ありがたい話ではあるが」
娘は24歳。写真を見ても結構な美人である。日本舞踊やお花、お茶と古式ゆかしき習い事は全て習得したという手塩にかけた娘さんだ。それを是非と山田にもらってくれと父親が猛烈にアプローチをしてくるのだ。
(この娘さんもかわいそうに……俺は38歳だぞ。いくら父親の命令でも、こんなおっさんに嫁ぎたくはないだろう……)
今時の良家の子女というものは、付き合う相手と結婚相手は明確に分けるという。学生時代は散々遊んでおいて、結婚となると家柄が確かで大金持ちの男を選ぶのだ。そこははっきりしている。
(この娘も清楚な顔をしているが……中身はどうだが……)
はっきり言って、山田の中の女性観はかなりゆがんでいる。これまで38年間。仕事で成功し、一生で使いきれないほどの財産を作っても、女とまともに付き合ってきたことがない。
高校までは勉強に打ち込み、男の友人と遊んでばかりいたので、女には興味がなかったし、大学生で周りが彼女を作るようになり、山田も作ろうとした。そしてその努力が実り、大学1年生の秋に友人も羨む可愛い彼女ができた。
だが、その彼女との思い出は思い出したくない倉庫の奥底に厳重に封印されている。このことが原因で山田は恋愛に対して臆病になったのだ。おかげで大学を卒業するまで彼女はいなかった。
そして社会人になると猛烈に仕事をし過ぎて出会いがなかった。もしかすると、いくつもあったかと思うが、仕事優先で逃した。脱サラして会社経営に没頭し、軌道に乗ってきた頃、どんどんと女性の方から迫ってくることに気がついた。
金持ちになると何もアプローチしなくても女の方から寄ってくるのだ。山田は悟った。
(人間も所詮は動物である)
野生の動物は強いオスをメスは求める。それは自然界で生き抜くために絶対に必要なこと。力の弱いオスに自分の運命と子供を託すわけにはいかないのだ。
そして人間の場合は、地位やお金。本人が能力はないけど、財産はあるケースはともかく、基本的に金を稼げる男に女は群がる。
これは決して軽蔑されるものではない。自然の摂理なのだ。女だって、自分の人生を託すなら、少しでも稼いで豊かな生活をさせてくれる男がいい。人間だから、それプラス優しいとか子煩悩だとか、浮気しないとか人間性の部分も加味されるが、稼げるという点は重要なファクターだ。
その証拠に億単位でお金を稼げるプロのスポーツ選手の奥さんはみんな美人で頭がいい。頭いい美人な女は自分の価値をよく知っている。自分にふさわしい男を選ぶ能力があるのだ。
もちろん、みんながみんなそうではない。男女平等になりつつある時代だ。女が自立して金を稼ぐこともある。そういう場合は、金目当てという下衆な見方は返上するが、そういう女の場合は、他の能力を男に求めるものだ。
しかし人間は面白いもので、金も財産も、そして性格も悪いクズ男に寄り添う女もいる。それは自分がその程度の男としか合わないと諦めているか、男を見抜けない低脳か、男の強引さを断れない心の弱い女だろう。
いくら自分には優しいとか言っても、働きもしない、遊んでばかりいる男に貢ぐ馬鹿女には、山田は同情するつもりはない。そういった意味では、自分にアプローチをしてく女は馬鹿ではないと思うのはさすがに傲慢だろうが、真実でもある。
(だが、狙われた男もたまったものではない……)
つまり、山田は自分に好意を寄せてくる女はすべて、自分の金を狙っているという不信感をもっているのだ。もう一つの不信感は、大学1年生彼女に起因するのだが、それは思い出さないことにした。
「社長、これは人事課長からの報告ですが……」
深刻そうな表情で秘書の一人が山田に報告書を手渡す。この秘書は既婚者なので、山田としてはわだかまりなく接することができる。
「なに、行方不明だと……我が社の社員が……」
その報告書は看過できないものであった。開発部2課の新入社員がもう1週間も出社していないという報告だ。
急成長する山田の会社には、毎年100人規模で新卒生を雇用する。社員の待遇や残業をさせない勤務体系、福利厚生の充実で山田の会社は人気で、離職率も0%に近い。実にホワイト企業なのだ。
それでも入社して2,3ヶ月で精神に不具合を起こし、出社をしぶる社員もいないことはない。すぐに専門医にカウンセラーと連携して、そういう社員も復帰させてきた。
何よりも、優秀で精神的にもタフな学生を選抜してきた自信もある。山田の会社『ジャッジメントスター』は、最終面接は山田が行う。受験者一人一人とじっくりと話し、最終的に入社させるか決めるのだ。
だから、山田は今年入った新入社員の名前を全て言えるし、経歴もおおよそインプットしている。
その失踪したという社員の名前は『浅草千代子』。
出身は東京の下町。写真を見なくても容姿を思い出せる。ミディアムショートの黒い髪。黒い眼鏡をかけた少し地味な社員であった。名前も古風でキラキラネームが話題になる昨今、珍しいなと思ったくらいだ。それでも能力には申し分がなく、山田は太鼓判を押して合格させた。入社テストの順位は10番以内だったと思う。
どちらかといえば、期待の新人であり、成長しだいでは10年後の幹部候補生と印をつけた社員だ。それが入社3ヶ月で失踪なんてありえない。
ちなみに、山田の会社ではキラキラネームの入社希望者は書類審査で落とす。これはそんな名前を付ける親の能力を評価しないから。
無論、親は本人の能力とは関係ないというが、山田は名前には魂が込められていると考えている。そんな大事な名前にヘンテコな名前を付ける親の資質を考えれば、落としたほうが無難だと決めているからだ。
馬鹿な親をもったことが不幸ではあるが、それも運である。豊かな国に生まれるのも運、キラキラネームを付ける親の元に生まれるのも運。運がない者は自分の会社には必要ないのだ。
「1週間もか……」
「はい」
「親御さんはどうしている、警察には、捜索願いを出したのか?」
山田は人事課長に電話をつないで、報告書の詳細を確認する。浅草千代子は、1週間前に退社後、忽然と姿を消してしまったらしい。
東京都内のマンションには帰っておらず、友人の家にも寄っていない。実家の浅草にも連絡がないという。
「若い女の子の場合、男絡みじゃないのか?」
「それが彼女の同期や友人に調査したのですが、付き合っている男はいないみたいで」
「それだと考えたくはないが……犯罪に巻き込まれた可能性も否定できないな」
「はい、最悪のケースも想定されます」
「危機管理室と連携を取り、対処してくれ」
山田はそう人事課長に指示した。こういうことも一流となる会社は、気を許せない。まだ、規模が小さいから社長の山田も関われるが、大きくなるとこういう出来事も社長まで上がってこなくなるだろう。
(株式上場して、我が社はさらに拡大する……そうなれば、社員とはさらに距離が離れるのだろうなあ……)
これは日々、山田の感じていることだ。直属の部下の役員たちとでさえ、じっくりと語る機会も少なくなってきていると感じていた。
(この会社も最初は3人で始めたからなあ)
今、副社長と専務をしている森田と畑田は山田が起業した時に、一緒について来てくれた戦友だ。森田は山田と一緒に勤めていた商社の先輩。畑田は大学生の同期だ。
ただ、森田と畑田とは、最近、関係がギクシャクしている。会社が小さい時には山田の方針に従ってがむしゃらにやって来れた。しかし、会社が成長し、拡大路線の歯車が止まらなくなるといろんな考え方が出てくる。
最近、彼らは山田と会社の経営方針を巡って対立気味なのだ。
(そうだな……ここらで彼らと腹を割って話すか……)
山田は今日の経営会議を終えた後、この二人と話を持とうと考えた。
(そうだな……赤坂のすっぽん料理で金曜日の夜だな)
美帆には悪いが、山田はそう決めた。
10時になった。
失踪した社員のことは気にはなったが、最高経営会議が行われる。出席者は会社の代表権をもつ幹部10名。これにメインバンクの代表者がオブザーバーで参加する。
一番の議題は東証1部に株式を上場する件だ。今は新興市場に上場しているが、会社の成長と規模拡大。日本の企業として世界に羽ばたくために、1部上場という信用の看板は手にしたい。これにより、株価は急上昇するだろう。
「それでは議題を進めます……」
上場の件の前に、いくつかの議題が審議される。
(おや?)
山田はレジュメを見て不審に思った。この会では議題にしないとしていた案件が上がっていたのだ。それは大手メーカーの製造する食品の販売である。
「この件に関しては、却下したはずだが……」
山田はそう発言した。ジャッジメントスターの根本は、世の中に認識されていないものに脚光を当てて、それを広く販売する事業スタイルである。いわば稀少性なのだ。
それは稀少なだけに、広く需要に答えられず、商売のチャンスを失ってしまうリスクもあるが、その分、ブランドを守れる。
この大手メーカーの売れ筋商品の販売は、それを覆すものであった。断固として許せない方針である。
「山田社長はそう言いますが、消費者は我が社が選んだ確かな品質のものを求めているのです。それが大手メーカーの製造するものであっても変わらないはず……」
そう意見を述べたのは副社長の森田であった。森田とはこの件について、十分に話し合いをしてきたから、この場で公然と対立してくるとは思っていなかった。
「それは違うぞ……。消費者は老舗の稀少な商品を求めて、我が社の目利きを選んでいるのだ。大手メーカーの品物を取り扱うなら、他のネットショップで十分ではないか。それでは我が社の強みが生かせない……」
山田は力説する。だが、ここで役員会の雰囲気が微妙に違うことを感じた。山田に対する視線が冷たいのだ。特にオブザーバーで参加しているメインバンクの副頭取は不気味なほどの笑みを浮かべている。
「強みと言いますが、そのせいで十分な供給ができず、消費者は不満を抱いております。取引先も空前の注文に対して、それに答えようとする動きもあるにも関わらず、稀少性を求め、手作りにこだわる社長のせいで商機を逃しています。これは今後の我が社の成長にとって害であると言ってよいでしょう」
森田は怒鳴り気味に山田に向けて意見をぶつけた。完全に山田に対する反逆である。山田は怒りがこみ上げ、髪の毛が逆立つ感覚に囚われた。
「森田……それは許さんぞ……」
「許さない、許さないと山田社長はいいますが、会社は社長個人のものではない。我々は株主のために会社を善き方向に導いていかないといけないのです。私たち、取締役はその点を忘れてはいけません」
「忘れてなどいない!」
「水掛け論ですな……」
森田は専務の畑田に目配せをした。本日の司会をしていた畑田専務は、兼ねてからの計画通り、用意していたメモを読み上げる。
「緊急の動議を提案します。山田正則CEOの解任を求めます」
「な、なんだと、畑田!」
山田は怒鳴った、だが、畑田は冷静である。山田の声は聞こうとしない。
「賛成の方はご起立ください」
取締役が全員起立した。
全員一致で山田は会社から追放されたのであった。
放心状態の山田。何が起こったのか分からない。
15分以内に立ち退きを命ぜられ、山田はオフィスビルの1階出口まで警備員に連れ出された。黒塗りの社用車は迎えに来ない。
部屋を出たときに秘書の美帆は目も合わせなかった。社長じゃない山田には興味がないのであろう。夕方のニュースには、山田の電撃追放のニュースが飛び交った。そのせいか、行きつけのクラブやホステスからのメールも途絶えた。
(結局……女は金だ。地位を失えば、寄ってこないのだ……これだから、女は嫌いなんだ)
山田は一人、公園のブランコに腰掛け、ゆらゆらと体を揺らしている。伸ばした足が砂地を削り取る。
(反撃だ……俺は反撃する。地位は失ったが、俺には人脈がある。金もキャッシュでまだ2,3億はある。ジャッジメントスターの持ち株を売れば、40億以上はある。それで会社を作る。ジャッジメントスターを潰してやる!)
山田の瞳には復讐の火が燃えていた。自分を裏切った友人たちへの復讐。手のひらを返したような女どもへの復讐だ。
「おじさん……おじさんの顔はコワイでモグ……」
不意に話しかけられて、山田はビクッと体を震わせた。街の中でよく聞く女子高生のトーンだと直感で思った。こんな人気のない夜の公園では、異質な声である。そして、その異質な声は足先から放たれていた。山田は恐る恐る声のする方へ視線を向けた。
「な、なんだ、お前は?」
自分の伸ばした両足の先に穴が空いており、そこにちょこんと顔を出した女の子に気がついた。もう夜の8時。闇に包まれた公園は、ぼうっと白く光る電灯によって、辺りが照らされている。
穴の中から頭だけ出した女の子の顔は、影になってよくは見えないがモグラの帽子を被って、手もモグラのような長い爪と明らかに常軌を逸していた。
(おいおい、コスプレイベントが近くで開催されていたのか……いや、それにしては、なんでコイツは穴から顔を出している?)
山田の思考は若干の混乱を来たしている。どう考えても想定外の状況である。
「うちは改造人間だモグ……魔王様の命令で、心の暗い別世界の人間を拉致するでモグ」
「ら、拉致だと?」
「拉致でモグ。天界の奴らは優秀な人間を転移させているから、魔界はそれに対抗する話でモグ」
「な、何を言っているのか、俺にはさっぱり分からん」
「おじさんに適応力を求めるつもりはないでモグ」
山田は変な女の子に両足を掴まれた。女子高生のような華奢な体型なのに、その握力はとんでもなく強い。山田の足は自分の意思では1ミリも動かせない。
「な、何をするのだ!」
「文句を言わないでこっちへ来るでモグ」
「うああああああっ……」
こうして山田は抵抗する間もなく、一気に穴へと引きずり込まれたのであった。
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