第2話狂いし者はどちらなのか
・・・・・・目が覚める、明るい、青い、青い?
いや、そんなはずはない。あの神国は空が赤っぽかったはずだ、確かに他の国では空は青いと聞いたことがあるが。
「まっ、どうでもいいか。」
今の俺には空の色など、どうでもいい事なのだ
いや、待てよ?それよりも何故今…両・足・で立っているんだ?あの時確かに足は噛み切られ、食われたはずだ。
それだけじゃない、左手だって普通に動く。
「ハハッ、神ってのか?俺も狂っちまったのかもな。」
それよりも喉が乾いた、腹が減った、何か殺・し・た・い・。
あれ?極自然に、殺したいと考えていたのか?
あぁそうか、別に普・通・の事だったな。
「ここでずっと考え事してたって、意味ねぇし歩くか。」
しばらく歩いてみたが、川はおろか木の実のなっている木すら無い。
もうしばらく歩いてみたが、一向に見つからない。視界の端にE-クラスの魔獣スライムが映る。
「殺す、どうでもいいか?いや殺す。」
最下級の魔獣なので足で核を踏みつければ簡単に倒すことが出来る。
「あれ?今、なんで、俺はあんな無駄なことをしたんだ?」
魔獣は殺・す・。そうだった、この世界は魔獣を見つけ次第殺さなければいけないんだったな。
もうしばらく歩いていると、3びきほどスライムを見つけたが、全て殺した。
ザーッ
水の音がする。運良く川を見つけることが出来たようだ。試しに1口飲む。
「うまい。」
少なくとも、人生で1番美味しい水だった。
美味しい水?ここはどこだ?少なくともアラミウスでは、川の水は飲めなかった。
ふと水面に映る自分の目を見ると。
「赤い?」
アラミウスでの、赤い目というのは悪魔を表しており、赤子の時点で即刻殺される。
自分の目は・・・思い出せない。他にも何か大切なものを忘れている気がする。
考えていた途中に空腹を感じた。
「腹減ったな、まぁラビーでも狩・れ・ば・いいか」
ラビーとは、白い毛皮のしている獣で、肉は焼くだけでもかなり美味しかったはずだ。
「こんな草原なら、1匹くらいいるだろ。」
まぁ、当然見つかる。けれど、見つかったからといって仕留められる訳では無い。
「はぁ、はぁ、逃げ足が、想像、以上だッ。」
ラビーは足の速さで有名だったのだ。
「あれ?そもそもなんで俺は、石を投げたり、木の棒を使おうとすらしなかったんだ?以前の俺なら絶対に考えついたはずだ。」
やはり何かが、欠けている。
だが、1度思いつきさえすれば後は実行するだけだけである。
石を持つ、投げる、当たる、血が弾ける。愉快だ。
「あれ?俺何を考えて・・・」
そんな考えも横目に一目散に獲物に駆け寄る。瀕死の状態だ。石が当たった場所は右足。なんの皮肉だろうか。
「とりあえず、血抜きでもするか。」
そう思いナイフを取り出す。
「とっとと調理するか。」
火がない。自分の無計画さを知って無性に腹が立った。
グシャッ
近くにいたスライムを踏みつぶす。随分気持ちが落ち着いた。
「やっぱり、俺は、何かがおかしい。」
適当に枯葉を集めて、小枝を集める。
「確か石と石をぶつけるんだよな。」
そこでふと思い出す。別にわざわざそんな事をしなくても良いのだ。
“ファイア”
右手に魔力が集まり、小さな火が生まれる。
枯葉や小枝は勢いよく燃え出し、メラメラと美しく光っている。
肌寒かった自分には、この炎はまるで自分の体を温めてくれているようだった。
さっき血抜きをしておいたラビーを適当に切り、毛皮を剥ぐ。
そして適当な木の枝に刺し焼く。ジューという、生き物が焼ける心・地・の・い・い・音がする。
15分程焼き、1口食べてみる。そうすると、味はしないはずなのに、何故かとても美味しかった。
手のひらに水が落ちる。雨?ではない。視界が歪んでいる。
「泣いていたのか。」
その涙の理由は分からない、けれどとても大切なものな気がした。
空がアラミウスの紅とは違う、美しい赤だった。
その事に気がつくと俺は視界と寝心地を確認するために、木に登ろうとする。
少し前の俺なら登れなかったはずだ。しかし、魔獣の核を潰し、少し身体能力が上がっていたので、少し厳しかったが登ることは出来た。
太い幹の上に立つ。ただひたすらに森と、所々に平地が見えるだけである。
「街は無いか。」
とりあえず木から降り焼いていた残りのラビーを食べる。まだ焼いていない残りを捨てるか、持っていくかの2択を迫られる。
「持っていて魔獣に襲われでもしたら意味無いもんな。」
結論は出た。できるだけ遠くに投げる。
日の赤はかなり濃くなっていた。
「寝るか。」
さっきの木に登り、太い幹の上で仰向けになる。
ここはどこなんだ?
その事について色々考えている間に、次第に瞼が重くなっていく。
神よ僕を殺してくれ @sunltu
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