第六話 林間学校≒ダンジョン⑦ ~未定! 猫の名前はまだない~

 降りた先に待っていたのは、つまらなさそうな顔をしたエミリーと俺が突き落とした事などみじんも覚えてなさそうなどや顔をしたヴェルナスだった。


 良かった犯罪者にならないで済んだ。


 で、第二階層。さっきと造りは殆ど変わらないが、大きな違いが一つある。


 出口へと続く先にあるのは、ただ真っ暗な空間だった。


「フッよくぞダンジョンマスターの作った第一階層を破ったようだな……だがどうだ、あくまで今のは小手調べよぉっ! さぁ次の第二階層は暗闇の道だどうだ床が見えまいこのように不用意に足を突き出せばああああああああああぁぁぁ……」


 そのまま奈落の底へと落ちていくヴェルナス。


 ――なるほど今度は見えない道ね。


「どうファリン、こっちも匂いで何とかなりそう?」


 本質的にはさっきと変わらないのだろう、ようは正しい道を選んでくださいというだけの話。


 天才の割には手抜き感が否めないな。


「無理。何か知らないけどきつい臭いが充満してるらしい」

「そうなの? わからないけど」

「若干アンモニア臭い」

「えっ」


 思わずエミリーを見る。あれかなうん、急に穴に落ちてるからね。


「……違うし」


 なんだヴェルナスの方か仕方ないな。


「見えない床かぁ……こう暗いと判別できないよね」

「手探りで行けば何とか?」

「んーでも道が続いてるって保証はないんじゃない?」


 ファリンの案は一見理に適っているが、飛び越えなければ進めない道というのがあっても不思議じゃない。


 それぐらいの脳みそは流石にあの天才も持っているだろう。


「クックック……どうやら我の力が必要なようだな」

「まさか」


 右手で顔を覆いながらいきなり自己主張してくるエミリー。


 何の役にと思ったが、そうだ彼女にはまだ隠されていた力があったじゃないか。


「その眼帯の封印が!?」

「ぃゃこれはお洒落だから今ちょっと関係ないし……」

「何かごめん」


 口をモニョモニョさせて言い訳するエミリー。


 そっかお洒落なんだそれ、後で他の人にも教えてあげようっと。


「我が同胞よ……よもやこの我の眷属たる召喚獣を忘れたのではあるまいな?」

「猫だっけ」


 シバは鳥でディアナは馬、ファリンは蛇でエミリーは猫っと。


 覚えやすいんだか覚え辛いんだか微妙なところである。


「来たれ眷属よ! 召喚……眷属十三号(仮)!」


 そして叫んで召喚される黒猫が一匹。


 だが出て来たは良いものの、あくびをして耳の裏を掻いている。どうやら仮の名前はお気に召さないらしい。


「まだ名前決まってないんだ」

「候補は大分絞れたし」

「へぇー」


 どうだろうか、エミリーの場合は何か考えれば考えるほどドツボに嵌っているような気がするんだけどな。


「これがその……証拠だあっ!」


 と、ここでエミリーがローブの内ポケットからメモ帳を取り出し俺に突き付けてきた。


 とりあえずそれを受け取ってパラパラとめくってみれば、なるほどアイゼンブロイカラミティゼロエクゼエクセレントイヴワールドエンドクロスシュツルム等々横文字がずらずらと並んでいる。


「うわー先が長そう」


 適当にめくれば何ページにもわたって文字列が羅列されていた。


 決まるのは卒業後って言われても納得できそうだ。


「アルフレッド、ぼさっとしてたら置いていく」


 なんてメモ帳を眺めていれば、眷属何号だかの案内に従っておっかなびっくり進む二人に促された。


 俺はそいつをポケットにしまって、やっぱりおっかなびっくり進んでいった。

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