第五話 生徒会役員になろう⑥ ~禁呪~

「おじゃましまーす……」


 恐る恐る生徒会室の扉を開く。


 よし中に誰もいないなと安堵するものの、すぐに緊張感が襲って来た。さっき来た時はまた別の種類の緊張感だ。


 手汗すごい。


「全員出払ってるみたいだな……お目当ての物を探しますか!」


 ローブのフードから飛び出したエルが、空中でぐるっと辺りを見回して一言。


「その姿で?」


 と、ここで一つの疑問が浮かぶ。


 人間の部屋を漁るなら人間の姿の方が適してるんじゃないかという素朴な疑問が。


「視点が高い方が色々都合良いんだよ。それに抱えきれないほどの金銀財宝運ぶって訳でもないしな」

「運んだことあるんだ」


 少しうらやましい経験だ。


 金と銀は一応見たことあるが、ついでに財宝も一纏めに置かれているなんて見たことはない。


「そうそう、あの時はお前が計画立てて部下に突入させてオレがごっそりかっぱらって……懐かしいな」


 部屋の中をぐるぐると飛び回りながら、感慨深そうに言葉を漏らすエル。


 へーそうなんだと部屋を物色する俺だったが、ふと気になってカーペットをめくる手を止めた。


「お前って、その……大賢者?」

「他に誰がいるんだよ」


 まぁそうですよねと納得しかけて、なんだよここの床変な模様だなと思ってやっぱりまた手が止まる。


「え、盗み?」


 なんとエルが言うには、大賢者アルフレッドは強盗の計画を立てた事があるらしい。


 いやそんな事流石に聞いたこと無いんですけど。


「なーに、ちょっと悪党を懲らしめてやっただけさ……まぁあの時のお前がすげー楽しそうな顔してたけど」

「イメージと違う」


 世間一般の大賢者のイメージは、いかにも真面目で誠実な好青年。


 実際彼の本の挿絵も大体そんな感じで、盗みを働くなんて吹聴すれば卒倒する人だっているだろう。


「そうか? 今のアルも楽しそうだけどな」


 そんなことないよ、と言いかける。


 言葉の代わりに口元に手をやれば、口角が少し上がっている事に気づいた。


 内心面倒くさいなと思いつつも、今の状況をどうやら楽しんでいる自分がいるらしい。


 ……実感はあまり無いけど。


 それからしばらく無言で手を動かす。


 この本棚の赤い本を動かせば地下室への扉が、なんて下手な冒険小説みたいな事は起きない。


 ただ地味に部屋の中をぐるぐる回って怪しい所を探すだけ。




「なぁエル……俺ってやっぱり大賢者アルフレッドなの?」


 ふと気づけば、そんな言葉が漏れていた。




 前に聞いたかどうかすら忘れた、ひどく単純で当然の疑問を投げかける。


 さっきの話も、エルはそんな風に話していたけど納得できない自分がいる。


「当然」


 間髪入れずに返ってきた言葉に、また新しい質問が頭に浮かぶ。


「常識的に考えれば生まれ変わりとか?」


 例えばエルが、歴史上の魔王だって事はまだ納得できる。


 けれど万が一俺が本当に大賢者だとして、年齢は何と600歳ちょっと。どう考えてもそんな年齢じゃないし、何より子供の頃から今日までの記憶はある。


 両親の顔だって、きちんと覚えている。


「さぁな、その辺は知らんぞ。何せお前はオレに一言も言わないで消えたからな」


 返事は肯定も否定もしない物だった。そうだと言ってくれたなら、少しは気楽になったのだろう。


「もう一個質問。俺のどの辺が大賢者なの?」

「そりゃお前、オレを召喚できるだろ」


 一番自信のある声で、エルがそう言い切った。


「他の人って召喚できないの?」

「お前が死んだら契約切れて、再契約したらそいつが出来るな……んだっけな。まぁ契約切れた事ないけど」


 なんだそれ、じゃあ冷静に考えて大賢者アルフレッドは生きてるって事?


 でも年寄じゃない俺をエルが本人だうんぬんって駄目だこんがらがってきた。


「やっぱり……今一釈然としない」

「どうしてだ?」

「どうしてって、自慢じゃないけど俺は田舎者でこの学園もギリギリ合格したFランクだよ? それが魔法の始祖の大賢者だーって、普通信じられないというか……」


 今度は俺が答える番だった。


 口から出てくる言葉の数々はどこか客観的な物だったけれど。




「別人ですって言われるのは、少し堪えるかな」


 最後の一言だけは、今日まで目を背けていた感情をようやく言葉にできたものだった。




 例えどれだけ立派な人だと言われても、どこか彼女の言葉や好意は自分を素通りしているような気がしていた。


「そっか、それは……悪かったな、謝るよ」

「あ、いやエルが悪い訳じゃないんだ。ただ身に覚えのない記憶があったり……ごめん、少し疲れてるかも」


 しゅんとする彼女に思わず雑な言い訳をする。


 謝罪の言葉が欲しかった訳じゃない事だけは理解して欲しかった。


「帰ったら膝枕してやろうか?」

「やめとく、癖になりそう」

「オレは構わないぞ?」

「俺は構うの」

「なんだとっ!? じゃあ今すぐやろうぜ!」


 エルと交わす冗談は少しだけ重くなった心を軽くしてくれた。


 いや、本人にとっては大真面目なんだろうけどさ、その証拠に思いっきりこっちに突撃してきてるよね。


 華麗に回避、しようにも机の脚に足を取られてすってんころりん転ぶ俺。


「あ」


 ドンッ、という背中を打つ音が生徒会室に響くが、今はそんな事は気にならない。


 偶然倒れた目線の先、山積みの書類の土台になっている簡素だが硬そうな金属製の箱っていうか金庫を発見した。


「金庫あったわ」


 指させば、エルが羽ばたき書類を吹き飛ばす。散乱する紙の山はどうみても泥棒が入った跡だがまぁ今更気にしない。


「よしっ、開けるか」

「でも鍵な」

「くらえドラゴンキィーーーーック!」


 さて次は鍵はどこかな、なんて常識的な考えはエルのドラゴンキックによって金庫の扉ごと吹き飛ばされた。


 ……何だよドラゴンキックって。


 というかそんな小さな体のキックでそんな破壊力あるのおかしくないかな、それより事後処理については。




「……後でビッチ先輩になんとかしてもらおう」


 ――お菓子とか差し入れしよ。




 ドラゴンキックでひしゃげた扉を何とかエルと協力して引っぺがし、ようやく中身を改める。


 だが都合がいいのはここまでで、そこに入っていたのは琥珀色のかけらではなく一枚の紙切れだけ。




「はずれ」


 手に取って読み上げる。




 はずれって、まぁここには無いよって事だろうけど。


「なんだこれ」


 エルが首を傾げるので、少しだけ頭を働かせる。


 要は叡智の欠片はここにはありませんという事実を知らせてくれているのはわかる。


 けど何故だろう、この筆跡に見覚えがある。一昨日とか昨日じゃない、本当についさっき目にしたような。




 ああ、思い出した。


「あーあ残念、アルフレッド君は生徒会役員に選ばれませんでしたとさ」




 いつの間にか生徒会室によく似合う声が響いていた。その声の主に顔を向けなくたってわかる。


「……会長」


 マリオン会長は生徒会室の扉に背中を預けながら、ニッコリと微笑んでいる。


「残念ながら時間切れだよ。いやぁ残念、第三関門の借り物は見つけられなかったようだね……またの挑戦をお待ちしているよ」


 わざとらしい喋り方に少しだけ苛立ち、気づけば小さく舌打ちをしていた。


 それに気づいた会長はやっぱりわざとらしく驚いてから、両手を広げて頭を振った。


「それにしても酷いじゃないか、いきなり備品を壊すだなんて」

「これにはその深い訳が」

「深い訳って何だい? この茶番が私の仕込みで、わざわざ君に因縁のあるローレシアに声をかけ、単純な副会長がキミを呼んでくるよう焚き付け、ついでにくじを操ってた事より深い訳があるのかい?」


 種明かしをしてくれる会長。


 わかってる、自分が嵌められた事に気づかない程馬鹿じゃない。


「無いですね」

「素直でよろしい」


 だがその説明には、一番重要な事が伏せられている。


 それぐらいはわかる、ローレシアさんとこの人が通じているなら、狙いはさっきからそこに浮いている。




 ドラゴンの捕獲だ。




「何だお前、人の旦那に手を出そうと」

「エル、ここは」


 飛び出そうとするエルを手で制止すれば、会長がクスクスと笑い始める。


 この人の神経を逆撫でするような対応、ビッチ先輩と仲が悪い理由がよくわかる。


「ふふっ、思ったより聡明なんだねキミは」

「いくつか質問いいですか? そうですね、借り物競争の残念賞って事で」

「はいどうぞ」


 落ち着くために深呼吸をする。何でもいい、適当に話を伸ばさなければ。


「俺を普通に呼び出さなかった理由は何ですか? 生徒会長ならそれぐらい簡単でしょう」

「人目に付きたくなかったからさ。キミと秘密の逢引がしたくてね」


 今俺が取るべき行動は、正面突破か撤退の二つに一つ。


 冷静に考えればエルの火力をもってすれば前者は容易なはずだ。けれど会長のあの態度、それは下策だと教えてくれる。


 だから逃げる。


 動機なんてものは後から調べればいい。どこだ逃げ道は、三階だぞここは。


「もう一つ質問です。秘密の逢引だなんて、まさか愛の告白でもする訳じゃないですよね」

「その通り……あっ、ここは嘘でもそうだって言っておくべきだったかな?」

「結局ローレシアさんが生徒会役員になる」

「ねぇキミ、そろそろ本題に入らないかい?」


 駄目だ、逃げ道何て見つからない。


 横目でエルに視線を送れば、目と目が合って頷いた。正面突破しかないと、その目は確かに主張していた。


「本題って何ですか……ね!」


 適当な書類をつかみ、会長に向かって投げつける。エルはそのまま羽を広げ、炎の槍を呼び出した。


 狭すぎる生徒会室のせい、すぐに書類に引火する。


「何だ、よくわかってるじゃないか」


 けれど、よく響く会長の声に焦りの色なんて無かった。ただ冷静に一歩踏み出し、カーペットに足を乗せた。




 瞬間、床が光った。




 正確には、生徒会室の床に隠されていた魔法陣が発光した。


 炎が消え去る。まるで何事もなかったかのように、一瞬にしてエルの魔法はかき消された。




 いや違う、本当に何事もなくなったのだ。




 燃えたはずの本も、舞ったはずの書類も元の位置へと戻っている。


 ――だから今、何も起きなかったのだ。




「……おい」




 低くうなるような声をエルが発する。


「テメェ、自分が何をしたかわかってんのか?」


 隠そうともしない怒りと殺意に、俺の頭はついてけない。何が起こったかを考えようにも、何をされたか理解できない。


「禁呪を……どこで知った!」


 それでも会長は、マリオン・トルエンは小さく笑う。


「怖いなぁキミの召喚獣は……ふむ、わからないって顔をしてるね。そうだな折角だし少し話そうか。残念賞欲しいだろう?」


 今度は会長が話の腰を折る番だった。逃げ場もなく、エルの攻撃が封じられた今出来るのは頷く事ぐらい。


「本題は良いんですか?」


 それと精一杯皮肉を込めて、悪態をつくことぐらいか。


「これが本題さ……それにもう逃げる気は失せただろう?」


 逃げ道を封じておいてよく言うなこの人は。


「そもそもキミは、魔法って何か知ってるかい?」


 勿体ぶった態度でそう尋ねて来る会長。


 その余裕たっぷりの笑顔には苛立ちが募ってしまう。弄ばれているような感覚に腹が立たない筈もない。


「学科分けの分類の事ですかね」

「そんな単純な……いや違うな、むしろこれからするのは、もっと単純な話なんだ。まずはどうだな……私達が使ってる魔法そのものって何だろうってって話さ」


 言葉を続ける会長。


 どうやら自分のご高説を披露したいらしい。


「魔法ってのはね、ただ再現をしているんだ。かつて大賢者アルフレッドが使った魔法の後塵をただなぞっているだけの話……ようは600年前に彼が作った一つのやり方」

「それがどうしたんですかね」

「さてここで問題だ。大賢者が現れる前に似たようなものは無かったと思うかな? 小麦畑もないのにピザが沸いてくるような事が……本当にあるかな?」

「それが今会長が使った奴ですか?」

「そう、これが禁呪。便利だろう? 魔法よりもずっとさ」


 便利かどうかの判断は俺にはできない。何せ何が起こったのか、理解すらできないのだ。


「だからどこで知ったかって聞いてんだよ」


 今度はエルが悪態をつく番だった。


 ああ今この部屋で使われたのは、大賢者によって封印された禁呪とやらなのだろう。


 エルはそれを知っているからこんなにも感情を剥き出しにしていると。


「決まってるだろう、本人に聞いたのさ……正確に言えば本人の記憶にね」


 ローブの裾から琥珀色の塊を取り出して、会長はニッコリ笑う。それは俺達が泥棒まがいの事までして探していた物だった。


「叡智の欠片」


 欠片、という言葉は似つかわしくない。


 赤子の頭ほどある、岩石のようなそれは淡い光を放っている。叡智の原石、とでも言うのが正しそうだ。


「こいつはね、膨大な魔力を秘めているけど……それはあくまで副作用みたいなものかな。実際は大賢者アルフレッドの記憶の結晶で、それを読み取れる人がただいたってだけの話さ」


 もしかすると俺のように、叡智の欠片に触れたら消滅する人間が他にいるのか。


「そいつを出せ」

「心配しなくても、キミは呼んでくるよう頼まれていてね。けれどそっちのFランクは……邪魔なんだよなぁっ!」


 殺気。


 ようやく目の前にいる人間の、本当の感情を垣間見たような気がした。


「アル!」


 再び炎の槍を呼び出すある、だがそれは一瞬でかき消される。


「残念! キミの弱点ぐらい……わかっているさ!」


 さらに紋章が光り、今度はエルの体が静止した。宙に浮いた彫刻のように彼女はピクリとも動かない。


「そんな」


 切れ切れの声を発しても、もう会長は目前まで迫っていた。


 伸びて来た右手が勢いよく俺の首を掴む。異常なまでの力の強さに呼吸が一気に苦しくなる。


「じゃあねアルフレッド君。キミのことは自主退学にでもしておくよ」


 一気に意識が遠のき始める。


 こんな目にあってようやく、自分がロクでもない事態に巻き込まれていたと実感する。


 ドラゴンという存在は、いや魔王エルゼクスとはそういう存在だったのだと。




 けれど何かを考える前に、思考が薄れていくのがわかる。



 

 景気よく走馬燈でも時系列順に回ってくれれば、死ぬ間際に自分の正体について思い出せるかもしれないが、そんな都合の良い事は起きない。


 思い出すのは、ただ故郷の風景だけ。


 草原にある木の下で、昼寝をしていた時の記憶。


 つい寝過ごしてしまう俺を、起こすのはいつもの声。




 ――ワンッ。




 少し高い相棒の鳴き声はいつも、目覚ましに丁度良かった。


「何でここにっ!?」


 力が緩まる。


 ぼけた視界が捉えるのは、会長に食らいつく白い子犬。


 ……ああ、なんだ学園長か。


「くそ、お飾りの犬の分際で!」


 思い切り学園長を蹴飛ばす会長。ああ良かった、犬だと思っているのは俺だけじゃなかったんだな。


 けれどその行動は最悪だ。


 愛犬家って訳でもないが、どうやら犬を飼っていたらしい俺には腹立たしい光景でしかない。




 いや……俺犬なんて飼ってたか?




「おいおい、そいつは聞き捨てならないな」


 けれど宙を舞った学園長が、地面に激突する事はない。


 聞こえてきたその声は、俺に安堵のため息をつかせるには十分すぎた。


「生徒会長なら形だけでも学園長を敬ったらどうだ?」

「ライラ先生」


 俺の顔を見れば、ため息の代わりに思い切り咥えていた煙草から煙を吐き出す先生の姿。


 けれど流石に今回は、生徒指導室に連れていかれるのは俺じゃないだろう。


「あら先生、それを言うならここは禁煙ですけど?」


 けれど一人と一匹の闖入者に彼女は動じたりしない。


 結局エルを封じられるほどの魔法を彼女は使えるのだから。


「ああ、そうか」


 だが先生は冷静で余裕だった。少し口をすぼめて、会長めがけて煙を吹きかける。


 わざとらしく咳き込む会長を見て、先生は顔色一つ変えやしない。




「お前にはこれが、ただの煙に見えるんだな」




「何を」


 瞬間、煙が光った。


 不規則に見えた煙の方々が紋章として浮かび上がる。そこから延びる魔力の鎖が会長に巻き付いて動きを封じた。


 なんだこの人、煙で紋章作るとか化け物かな。


「お前のその便利そうな奴の弱点は……本人が弱すぎるって所だな」

「くそっ!」


 いや先生が強すぎるんじゃないですかね、という言葉は飲み込む。


 不意打ちであったにせよ、どちらが勝ったかなんて誰が見てもわかる状況。


「ははっ、いつもみたいに笑えよ面白いだろ?」


 先生が煽れば、歯ぎしりをかます会長。


 それを見て楽しそうに笑う先生、拘束が解けたエル。形勢逆転という言葉がよく似合う状況で、彼女は叡智の欠片を握りしめる。


「くそっ……次は必ず!」


 閃光が視界を奪った。


 光ったのはあの手に持っていた物で間違いないだろう。


 無理やり魔力を注ぎ込んだような不格好な物だったが、少なくとも俺達全員に一瞬の隙を生ませるには十分すぎる者だった。




 徐々に戻っていく視界からは、もう会長の姿は消えていた。


 さっきの気の利かない言葉は捨て台詞だったのだろう。




「逃げた」

「逃げた、じゃないだろアルフレッド。自習の時間に教室出るなよ」

「ライラ先生、すいません」


 素直に頭を下げれば、それ以上追及される事はなかった。


 それから下げた視線が捉えたのは、嬉しそうに尻尾を振る学園長の姿。


「学園長もありがとうございます」


 嬉しそうに吠える学園長。犬だけど助かりました。


「しかし不味いことになったな……もう少し泳がせたかったんだが」

「なあ、事情を説明してもらえるか?」


 首を傾げる先生にエルが生徒らしく説明を求める。


 けれど返ってきたのはいつものように気だるそうな返答だ。


「事情より結果だけ教えようか」


 煙草を一口吸い込んでから言葉を続けるライラ先生。


 勿体ぶってるなこの人、会長の真似でもしたくなったのだろうか。


「明日から召喚科は」


 また言葉を止める先生。


 けれど頭を駆け巡った言葉は決して嬉しいものではない。


 無くなるとか、生徒指導室で授業だとか、それとも全員退学とか?


 駄目だネガティブな事を連想させる根拠があまりにも多すぎる。ついでに俺自身の身に覚えも。




「林間学校に行く!」




 思わず崩れ落ちる俺。


 え、林間学校? 


 まだ入学したばっかりですよね?


「……何で?」


 あのですねライラ先生俺殺されそうだったんですよ見てましたよねとか会長追わなくていいんですかとかそんな当然の疑問が次々浮かぶ。


 けれど先生は何も答えず、生徒会室を後にするだけだった。




 ――どうしよう林間学校、寝袋とか持ってないんだけど。

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