第五話 生徒会役員になろう④ ~借り物競争~
俺達は生徒会室を離れ、何故か校庭に集められていた。
「の前に、二人共……生徒会役員として何が大事か知ってるかい?」
得意げな顔で腕を組み、会長がそんな事を聞いてくる。
そんな事言われても興味なんて全く無いので、一応辺りを見回して共通点を探ってみる。
「えーっと……なんだろ顔とか?」
全員顔は良いから多分あってるな。
「はいマリオン会長! やはり生徒の代表として尊敬される事が一番です! つまり今年度の入試で主席であり攻性科の私こそが相応しいのです!」
背筋と右手をぴんと伸ばし、張り上げた声でべらべら喋るローレシア。
頭良さそうだもんなこの人。
「ふっ、どちらも正解であり間違いだ。だが本当に大事なことは何か理解していないようだね」
悔しがるローレシアだったが、その辺の匙加減が全くわからない。
きっと俺とは感性が違うのだろう。
「心、技、体……そのどれもが求められる。何か一つ優れているだけでは生徒会役員として不適格と言わざるを得ないね」
絶対嘘だ、この人は遊びたいだけだ。いや正確には人で遊びたいだけだ。
「そこで君達が競うのは、心技体全ての要素が求められる……これだっ!」
と、いつの間にか用意していた移動式の黒板に大きく文字を書き始める会長。
「借り物競走!」
何この雑な選定方法、絶対ふざけてるでしょあの人。
「わかりましたマリオン会長……不肖ローレシア・フェニル、あなたの期待に必ず答えてみせます!」
涙を流しながら叫ぶ不肖ローレシアさん。ちょっと怖くなってきたぞ変な宗教みたいじゃないか。
「借り物競走かぁ」
なんて呟けば駆け寄ってくるビッチ先輩。そして俺の襟を掴んで耳打ち一つ。
「いいことアルフレッド・エバンス、どんな手段を使っても勝つのよ」
「借り物競走で?」
必死過ぎません?
レクリエーションですよねこれ?
「ええそうよ、どんな汚い手を使っても構わないわ」
「確認しますけど役員に心って必要なんですよね?」
「そんなもの選挙には糞の役にも立たないわ」
やだ何てこと言うのこの人、だから会長に選挙で負けるんだよ。
「それじゃあ位置について……」
「ほら馬鹿始まるわよ!」
尻を叩かれ、いつのまにか引かれていたスタートラインの前に立つ。
地面に両手をついて、片膝を軽く折る。
「用意!」
全くやる気が出ないが仕方ない。曲がりなりにもあの卑怯で狡いチョロチョロビッチ先輩に手伝うと言ってしまったのだ。
どうして暇な授業を抜け出してしまったのか、せめてエルの本でも借りれば良かった。
「ようアル! 何か面白い事してるな!」
――と思ったらアルが出てきた。
一番最初のあの小さなドラゴンの姿で、ローブの襟元から顔を出してきた。
「うわっ!?」
ので思い切り転んでしまう。
いや出てくるなら出てくるで一言ぐらいあってもいいと思うんだけど。
「ドンッ!」
無常にも鳴った始まりの合図。
土埃を上げて走っていくローレシアさんを見て、俺はため息しか出なかった。
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