幕間 ~過ぎ去りし昨日~

 ―夢を見た。けれどそれは楽しい物じゃない。


 うず高く積まれた屍、傷ついた仲間達。




 敗北した。


 ソレとの戦いは、大敗の二文字でしか表現できない。




「エル、すまない……俺が判断を誤った」

「お前のせいじゃねぇよ、こんなの」


 謝罪の言葉を彼女は受け入れない。


 いや彼女だけじゃない、最早あの戦いは、正誤で語れる範疇にない。




 ――ソレ。


 まさしく地獄の窯と呼ぶにふさわしい世界の終焉。


 五万の魔王軍を一薙ぎで半壊させた人智を超えた破滅の化身。




「帰ろうか、アル。今日の所は……さ」


 ゆっくりと立ち上がった彼女が、俺に手を差し伸べてくれる。


「今日の所はって、日を改めて挑むつもりかな」

「当然だろ」


 心強い言葉に、思わず頬が少し緩む。差し出された手に縋り付いて、いつまでも涙を流したくなる。




 ――だけど。




「ま、それは人類との戦いに決着ついてからにしようか。禁呪を使える人間も、ほとんど残ってないからね」


 手を取らずに立ち上がる。




 ――その手を掴むことはできない。


 巻き込めない、これ以上。だから、やるべき事なんてもう。




 ――夢が終わる。誰かと肩を並べて歩いた、昨日が過ぎ去っていく。


 その重い足取りが向かう先は、いつだって。

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