第15話 ぶちキレた!
「こんばんは~ッ♪」
「ちっ⁈ ふわふわっ! 何で、おまえがここにいるんだ? 前に言っただろ、戦争に関係のない奴は発言を禁ずるとっ!」
「おろッ?」
「おろッ、じゃないっ! 俺の言うことが分からないのかっ! 今、戦争で急報が入ったらどうしてくれるんだっ!」
「あの……。私、呼ばれたから来たんです。書簡で、茉莉様から至急来るように言われたんです~ッ(汗汗)」
「茉莉に? 俺はそんなことを聞いてないぞっ! おい、茉莉っ! 本当かっ⁈」
これはまた、間の悪いところに顔を出したな、ふわふわ。
先ほど、ココのところに総攻撃を仕掛けたんだが、ピンポイントで籠城されてロックはイライラしてるんだよ。
それにしても、茉莉がふわふわを呼び出したって?
珍しいな、それは。
戦争に参加しろとでも言うつもりかな?
「ロックさん、ふわふわさんの言う通りです。私が呼び出しました」
「ちっ! 戦争に関係の無い話はここではするなと言っただろう? おまえがそれを破ってどうする、補佐のくせに」
「ですが、これは私の担当する範疇のことですし、ふわふわさんは初心者ですからしっかり指導しないとまた同じようなことを起こす可能性がありますので」
「同じようなこと?」
「はい……。同盟の秩序に関わることでもありますから、厳重に注意したいと思います」
「そうか……。何のことか分らんが、手短にしろよ」
はあ?
ふわふわが何か問題でも起こしたのかよ?
ちょっと考えられない。
俺が思うに、幹部より皇軍のことを考えているとしか思えないのだが……。
「あの……、茉莉様。私が何かしたのでしょうか?(滝汗)」
「そうよ、あなたは重大なルール違反を犯したの。だから、来てもらったのよ」
「じゅ、重大なルール違反ですか?(驚)」
「そう、自覚がないのね。昨日のことなんだけど、覚えてないかしら?」
「き、昨日ですか? うーん、と。昨日やったことは、ロック様からの指示があったので、NPC砦を二つ包囲しました~ッ♪ でも、包囲したら名声が無くなってしまって、それ以上ほとんど動けないので、生産用の拠点の領地を取って内政に精を出していました~ッ♪ なので、ルール違反になるようなことは何もないです~ッ♪」
「嘘おっしゃいっ! 私のところに苦情の書簡が来たのよっ! 心当たりがあるでしょうっ!」
「えっ? 私、嘘なんて言ってません(涙) 本当にこれしかやってないです~ッ(涙)」
「では、その生産用の拠点はどうやって作ったの?」
「生産用の拠点ですか? 私が隣接していたNPC砦の側に仮拠点を作って、そこから攻撃して取得したんですけど」
「その拠点に使った星4の隣接に、皇軍の同盟員の領地があったのではない?」
「ああ、そう言えばありましたね~ッ♪ 私の隣接したNPC砦って、全然囲ってないので、どなたかが囲いに来てくれたのだろうと思っていたんです~ッ♪ 私、遠征中は独りぼっちで寂しかったので、どうせならもっと早く来てほしかったかなって思ってたんですよ~ッ♪」
「やはりそうだたったのね」
「ふぇ? それが何かいけなかったんですか?」
「当然でしょう⁈ その同盟員の領地は、これから隣接した領地を取得するために付けたものよ。だから、後から来たあなたにその星4の領地を取得する権利はないわっ!」
「ええっ? そうなんですか? 知らなかったです~ッ(滝汗)」
「そう、知らなかったの。なら、今回だけは許してあげるわ。その代わり、すぐにその星4の領地を破棄なさい。星4なら他にいくらでもあるのだから、即刻、コウタロウさんに返しなさいっ!」
そういうことか。
まあ、こういうトラブルはよくあるんだよな。
ブラ戦の慣例的には、たしかにコウタロウとか言う奴が主張する通り、同じ同盟に所属している者が先にマーキングした領地は奪ってはいけないことになっているな。
だけど、茉莉……。
それはあまりにも杓子定規に考え過ぎじゃないか?
俺はふわふわが悪いとはとても思えない。
むしろ、そのコウタロウって奴がよくも図々しくそんなことを言いだしたと呆れるくらいなんだが……?
「そういうことか。だったら、ふわふわが悪い。茉莉の言う通り、即刻、破棄しろっ! 今回は初めてだから大目に見てやる。二度とするなよ」
「うーん……? ロック様、どうして私が破棄しなくてはいけないのですか?」
「今、茉莉が言っただろうがっ! 先に領地に隣接した者が優先なんだっ!」
「でも、私、もう拠点で衝車を作り出してしまったんです~ッ(汗汗)。あと、剣兵を雇う施設ももうすぐ完成します。ですので、出来ればコウタロウ様に他の領地を取得して頂くようにお願い出来ないでしょうか?」
「それはダメだっ! ルールはルールだっ!」
「ひぃッ(汗汗)」
「一人でもルールを破る者がいれば、同盟の秩序が乱れるっ! それがどんなに重要なことか、いくら初心者のおまえでも分かるだろうっ!」
「で、でも……(涙)」
「でももへったくれも無いっ!」
「それだったら、コウタロウ様の方が先にルール違反をしていると思います」
「はあっ⁈ どういうことだっ?」
「だって、北ルートには皇軍内では私の領地しかなかったんですよ? その領地の隣接に無断で飛んできたと言うことは、私が先に印をつけておいたところを後から取得したのと同じことですよね?」
「コウタロウが飛んできたのは星1の領地だろう? だったら、隣接もクソもあるかっ!」
「ひぃッ(涙)」
「とにかく、資源地や拠点用地は先に隣接して領地を残した者が優先権を得るんだっ! 初心者がわがままを言うんじゃないっ!」
「……、……」
「分かったなっ! 即刻、破棄しろよっ! 破棄しなかったら除名だからなっ!」
「私……。破棄するの嫌です~ッ! 絶対に破棄しないです~ッ!」
「なっ、何ぃっ?」
「だって、北ルートは私が1人で走って隣接を取ったところですから。佐助さんが遠征の仕方を教えて下さった以外には、誰の手も借りていません」
「こっ、こいつっ⁈」
「それに、コウタロウさんって、今まで何をしていたんですか? 遠征か包囲か、それとも戦争か攻略で大活躍していたのですか?」
「何をしていたかだと? ちゃんとココの周りに飛んで、戦争に参加しているぞっ!」
「ええっ? そうなんですか? 私、毎日、戦闘報告をチェックしていますけど、コウタロウ様が攻撃したりされたりするの、一度も見たことがありませんけど?」
「そ、それは……。おまえが見逃しただけだろっ! ちゃんと戦争に参加していることは間違いないっ!」
「見逃してませんよ~ッ! 私、ちゃんとメモってあるんですから~ッ! 今まで、誰が何回攻撃したか、集計を書いてあるんです~ッ!」
「な、何ぃっ?」
「茉莉様が一番多くて、領地に43回、拠点や本拠に6回です。次に多いのが、サンジ様で領地に28回、拠点や本拠に7回です。その次がココイチ様で領地は4回、本拠に5回です。あと、領地、拠点、本拠、合わせて3回以下なのが、フレッド様、勝頼様、GAP様、食い倒れ様、傭兵様の5人です。他の方もいっぱいココさんの周りにはいますけど、全然、戦闘はしてませんよ。あ、ちなみに、ロック様は、拠点に一回だけ衝車を撃っています。私、ちゃんとチェックしていたのですから、間違いないです(きっぱり!)」
ま、マジかっ?
戦闘報告をふわふわが見ていたのは知っていたけど、戦闘の内容を記録していたとはな。
……と言うか、今までそんなことをした奴もいなければ、しようと思った奴もいないだろ。
それにしても、ロック。
いくらなんでも、それはふわふわが可哀想だ。
俺はふわふわみたいに記録していた訳では無いが、明らかにココ周りに飛んでる奴はサボり目的だろ。
おまえだってそんなことは分かっていることだろうが。
いや、それを一番分かっているのはロック、おまえ自身だろ。
いくらたぬ無双が巧みに守っているからと言って、30もの拠点が真面目に攻めれば落ちない訳がないんだからな。
それが、現状でも援軍の入ってないココの本拠が落ちていないってのが、奴等がサボっている何よりの証拠だろうが。
さっき、おまえがイライラしていたのも、実はそれが原因だろ?
いつまでも戦争が長引いたら、本気で何処かの同盟に攻められそうだと思っているから、尚更、イライラしていたんじゃないのか?
それに、ロックも茉莉も、二言目には秩序秩序って言うけど、この皇軍の何処に秩序らしきものがあるんだよ?
除名するすると言って、今まで1人も除名をしたこともないし、こんなにサボり野郎が横行していて何が秩序だよ。
それなのに、一番、指示をちゃんと聞いているふわふわを責めるなんて、筋が違いすぎだろっ!
「ちょ、ちょっと待ってくれ、ロックさん。茉莉さんも……」
「佐助さんっ! 口出ししないでくれっ! これは同盟秩序の問題だから、茉莉の管轄だっ!」
「いや……。俺は参謀として今回遠征全般を指揮してきたから言わせてもらうよ。遠征先の資源地や拠点用地にマーキングすることは、遠征をする者の権利だ。だけど、ふわふわさんはそういうのを一切しないで、皇軍のためにひたすら速度優先で隣接していたんだ。それなのに、後から無断で残した隣接に飛ぶなんて、それこそマナー違反だろう?」
「そ、それは……」
「普通、優秀な同盟であればあるほど、遠征をちゃんとした者には気を遣うものだ。名声だって残るように、包囲を極力させないのも当然でしょう? それなのに、あなたはふわふわさんに包囲まで命じ、彼女はちゃんとそれをやったでしょう? どう考えたって、一番、指示を聞いて秩序を守っているのはふわふわさんではないですか。それはロックさんだって分かっているでしょう? 茉莉さん、NPC砦の隣接数の半分以上は、ふわふわさんだってことくらいあなたにも分かっているでしょうよ」
「……、……」
ちっ……。
つい、強く言い過ぎちまった。
だが、これくらいは言って当然だ。
俺は寝ないで遠征したふわふわを知っている。
そして、攻められて自力で撃退したことも。
皇軍が攻めあぐねていると思えば、自分で事細かに調べて献策するし、自身のことより同盟のことを考えて攻略しようとしているのも知っている。
なあ、ふわふわ……。
おまえだって、もっと皇軍に余裕があれば、そんな星4の拠点やその隣の星9なんかに拘らないよな。
どうしても早く攻略しないといけないと思うからこそ、破棄も拒んだんだろう?
俺は忘れてないぞ。
『それって同盟があってのことですよね?』
と言った、おまえの言葉を……。
「佐助さん……。随分と、ふわふわに肩入れするなあ」
「肩入れ?」
「それは、ふわふわを佐助さんが教えたからか? それとも、佐助さん自身が皇軍を乗っ取る目的でもあって、ふわふわを抱き込みたいからか?」
「な、何っ? ロックさん、いくら総大将でも、言って良いことと悪いことがあるぞっ!」
「だが、領地には先にマーキングした者が優先なのは、佐助さんも知ってるだろう? それを曲げると、様々なトラブルが起こることだって分かってるはずだ」
「ですが、遠征をした者に配慮するのもルールでしょ。それを徹底していない同盟としての手抜かりはどうしてくれるんです?」
「うるさいっ! 黙れっ! 俺が総大将だっ! 口答えするなっ!」
「くっ!」
ふんっ!
俺には分かってるんだぞっ!
おまえ自身が東ルートで資源地を漁っていたことをな。
だから、ふわふわの言い分が認められると自分が困るんで、どうしてもふわふわを悪いことにしたいんだろう?
武士の情けだと思って、そこには敢えて触れないでやっていたけど、ここで全部ぶちまけても良いんだぞっ!
「あ、あの……(汗汗)。すいません、佐助さん。お気を遣わせてしまって……」
「いや……。俺は遠征を仕切っていたからさ。これは遠征をした者の正当な権利だし、ふわふわさんじゃなくても同じことを言うから」
「で、でも……(涙)。私のために立場が悪くなったら申し訳がありませんから……」
「ふ、ふわふわさん?」
「良いです、分かりました……」
「な、何を?」
「私、同盟を辞めます。これ以上、同盟内が荒れるのは本意ではありませんから……」
「それはダメだよっ! ふわふわさんは悪くないっ!」
「でも、私もこれ以上価値観の違う幹部様の下でゲームを続けていくのは辛いです(涙)。私なりに一生懸命やったつもりですけど、お気に召さないようですし……」
「だけどっ! これからプランAをやるんじゃなかったのか? 迅速にいっぱい攻略したいと話していたじゃないかっ!」
「ですね(涙)。でも、もう良いです。元々、カワイイカードが集めたくてゲームを始めただけですから」
「こんなにブラ戦にハマっていたじゃないかっ! 遠征だって、鯖内で間違いなく一番早かったんだぞっ! それなのに、同盟を辞めたら、今までやってきたことが全部パーになっちまう。それでも良いのか?」
「はい、仕方がないです。ブラ戦とは縁が無かったと思って諦めます(涙)」
「な、なんてことを……」
まさか、ゲームごと辞める気か?
俺が今まで見た中で、一番成長の早いおまえが辞める?
嫌なら皇軍なんて辞めればいいさ。
だけど、せめてゲームくらいは辞めるなっ!
俺はまだおまえの成長を見ていたいんだからさ……。
「そうですか、分かりました。お辞めになって結構です。遠征、お疲れ様でした」
「はい、茉莉様……」
「ですが、皇軍を辞めるのでしたら、キチンと引継ぎをなさって下さいね」
「引継ぎ……? ですか」
「ええ……。あなたは皇軍の同盟員として遠征したのですから当然ですね。それに、あなたには勝手に同盟を辞める権利もありませんから」
「えっ? どういうことです?」
「ブラ戦は、総大将か補佐の許可がなければ同盟に入ることも辞めることも出来ないのですよ。ですから、あなたが隣接したNPC砦の引継ぎが終わるまでは、ふわふわさんは勝手に辞めることは出来ませんよ。それと、同盟を辞めたらNPC砦の隣接は破棄して下さいね」
「……、……」
よ、よせっ、茉莉っ!
ふわふわはブラ戦ごと辞めるつもりだっ!
そんな、同盟を出てからもゲームを続けるつもりの奴にしか効かないことを言っても意味が無い。
こ、こいつは、離反しちまうぞっ!
初心者だから知らないと思っているのかもしれないが、ふわふわはヘルプを熟読してるんだ。
離反のことも当然知っているんだぞっ!
離反したら武将カード以外は、本拠も拠点数も名声も、全部初期値に戻ってしまうのを承知の上で言っているんだぞっ!
「ですか~ッ♪ でも、私は辞めます~ッ♪」
「ふんっ! 勝手にしろっ! 引継ぎが終わればすぐに辞めさせてやるっ!」
「エヘヘ(笑)。私、知ってるんですよ~ッ♪ ラピュタで言うところの、バルスみたいな辞め方が出来るのを~ッ♪」
「ば、バルス? ま、まさか……」
「皆様、お世話になりました~ッ♪ 短い間でしたが楽しかったです~ッ♪ これからも頑張って下さいませ~ッ(涙)」
「や、止めろっ! り、隣接がっ⁈」
やはりそのつもりだったか。
まあ、仕方がない。
辞めるか辞めないかはおまえの自由だ、ふわふわ……。
だけど、俺も悲しいよ。
たかだか1週間ちょっとの付き合いだったのにさ。
何だか、会社で長く一緒に仕事をした同僚が辞めるみたいな気分だよ。
「あ、それと、最後に一言だけ良いですか?」
「ふわふわさんっ! バカなことは止めてっ! わ、分かったわ、コウタロウさんは私が説得しますからっ! だから、離反だけは……」
「こんな内部がスカスカな同盟、すぐにどっキングに落とされますから~ッ♪ ではでは~ッ♪」
「えっ?」
行っちまった。
言うことを言ったら、すかさずチャットルームから出て行ったよ。
きっと、今頃、離反のボタンを押しているに違いない。
なあ、ふわふわ……。
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