第三章七節 個室

 神殿の探索を終え、ベルリール城に戻ったシュランメルト達4人は、それぞれの部屋に向かっていた。

 シュランメルトはグロスレーベから貸与された部屋までの道を、シャインハイルに案内されていた。


「ここが貴方の泊まる事になる部屋ですわ」

「承知した。ところで、そろそろ水を浴びたい頃だな」

「浴場は地下にありますの。ついてらっしゃいませ」


 シャインハイルが先導し、部屋から浴場まで向かう。

 途中でふと、シュランメルトが呟いた。


「それにしても、だ。最初に夢で逢ったのは、いつなのだろうな」

「さあ、すっかり忘れてしまいましたわね。何しろ、10年……いえ、15年以上は昔の事ですから」


 シャインハイルは頭に手を当てながら、思い出すように言った。


「それにしても、シュランメルト。貴方、すっかり成長しましたわね」

「そうなのだろう。まさかいきなり今の姿で産まれたとも考えられん。もっとも、幼少期の記憶すらも消えているが……。そういうお前も成長しているだろう、シャインハイル?」

「そうですわね。今やすっかり、背丈や胸が大きくなりました」


 右腕で自らの豊満な胸を支えながら、シャインハイルは感慨深げに話す。

 と、2人は階段を降りた。


あかりは点いておりますが、足元には気を付けて。ここは視界が今一つ悪く……キャッ!?」

「……ぐあっ!」


 シャインハイルが転倒したのを阻止せんと、シュランメルトがシャインハイルの左腕を掴む。

 しかし巻き添えを食い、シュランメルトもまとめて階段から転げ落ちてしまったのだ。


「大丈夫ですか、シュランメルト!?」

「ああ……何とか、な。お前こそ、無事か?」


 空中で体を捻り、自らが先んじて床に叩きつけられたシュランメルト。

 細身の見た目に反し、鍛えられていた肉体は、シャインハイルを無事に守り抜いた。


「ええ、無事ですわ」

「そうか……って、何だこれは?」

「きゃぁっ!?」


 突如として悲鳴を上げるシャインハイル。


「ちょっ、シュランメルト、それはぁ……!」

「何だと聞いている。おれの胸にはついていないものだからな、どうにも気になったのだ」

「そ、それ、は……ッ!」


 なおも抵抗し、顔を真っ赤に染めるシャインハイル。

 その原因は、シュランメルトの手が“掴んでいるもの”にあった。


「じょ、女性のみが持つ、大事なもの、ですわっ……!」


 震える声で叫ぶシャインハイル。




 そう、シュランメルトはあろうことか、シャインハイルの豊かな胸を揉みしだいていたのである。




「ふむ、なるほど。実に柔らかいものだな。それに程よく張りもある。いったいどうしたらこういう素晴らしいものが付くのか、謎だな」

「んんっ……」


 胸を揉む感覚をこらえるように、シャインハイルは手を口元に当てる。

 その時、一人のメイドが近くを通りがかった。


「姫様、どうされたのですか!?」


 声が聞こえるや否や、シュランメルトは手を止め、引っ込める。

 それを見たシャインハイルは、ゆっくりと立ち上がった。


「少々、階段から落ちてしまいました……。幸い、この方が守ってくださったのですが、少々ぼうっとしておりました」

「お怪我はございませんか!? 治療室はすぐそこに……」

「いえ、遠慮させていただきますわ。お心遣い、感謝いたします」


 一礼してメイドを立ち去らせたシャインハイル。

 ゆっくりと、シュランメルトの元へ歩む。そしてシュランメルトの頬に自身の右手を添えると、こう言った。


「シュランメルト。わたくしが相手だから良かったようなものの、もしフィーレに同じ事をしていたら、どうなっていたかは存じませんわ」


 それだけ言い終えると、シャインハイルはシュランメルトの手を引き、浴場への案内を続けた。


     *


「着きましたわ、シュランメルト。ここが浴場でございます」


 その後は大した事故も起こらず、2人は浴場に到着した。


「青い扉が男性用、赤い扉が女性用、紫の扉が混浴となっておりますわ。シュランメルトは……青か、紫ですわね」

「把握した。では、入るとしようか。着替えはどこにある?」

「貴方の部屋に……あっ」


 シュランメルトは着替えの場所を聞きだすと、シャインハイルが止めるのにも構わず言ってしまった。

 残されたシャインハイルは、手袋ごと自らの右手の人差し指をぺろりと舐め、恍惚の感情に浸っていた。


「もう、シュランメルトったら……。ふふっ、うふふふふっ❤」


 空いた左手を自らの胸に当て、添えながら、シャインハイルは快楽に浸る。


「貴方のお陰で、目覚めてしまったではありませんか……❤ ずっと、我慢していたのに。幼い頃から、ずっと!❤」


 左手の指を内側に曲げ、自らの胸を揉み始める。


「あぁ、貴方が優しく、執拗に、ねっとりと、私をけがそうとするさま……。見ていて、たまらなく愛おしくなりますわ。うふふっ、うふふふふふ……❤」




 シャインハイルはその場にしゃがみ込み、シュランメルトが戻ってくるのも気づかず、ひたすら自分自身を弄んでいたのであった……。

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