第2話
ーー今年もやります。乞うご期待!ーー
3つのスーパーの合同企画、『秋の食パンまつり』が、今年も開催されることが決まったのだ。俺たちは色めき立った!
「これで、0.40%まで、一気に上昇だ!」
そして、俺たち調べのその数値をさらに高めるべく、俺たちの企画会議はヒートアップした。俺たちが入学式で出会ったのが4ヶ月前。ただのクラスメイトだった俺たちが大親友になるのに時間はかからなかった。俺の趣味を、彰が支持してくれたからだ。もう1人のクラスメイト、奈江と出会ったのもこの頃だった。そのときの衝撃を俺は決して忘れない。
(あぁ! 奈江は、何て食パンをくわえていれば出会い頭にぶつかりたくなるような美少女なのだろう! 1度で良いからぶつかりたい!)
俺がそう思った感想を彰に話したそのとき以来、俺たちがずっと夢見て計画してきたその日が、もう直ぐ訪れるかもしれない! なんて幸せなんだろう。だが、それは束の間だった。
深夜のファミレス。彰は俺に悲しそうな目を向けた。
「俺たちは、大きな思い違いをしていたのかもしれない」
「何をいうんだ。通常の13倍だぞ! 運さえ良ければ、何とかなる数値だ!」
俺は悪い胸騒ぎがするのを振り払おうと、大声で叫んだ。その叫びに呼応するようにして、彰も大声を出した。
「たしかに、食パンを食べる確率は上がった!」
俺も負けずに熱り立った。
「そうさ。『秋の食パンまつり』は偉大だ」
少し溶けたコップの中の氷が、カランという音をたてた。いつの間にか、コップの外周は水浸しになっていた。
「だが良く考えろ……。」
彰は、今度は俺を見つめながら静かに言った。美しい目をしている。俺がそう思っていると、彰が続けて言った。
「家で食べ終わってしまったのでは、どうにもならんだろ……。」
「なっ、なにぃー!」
青天の霹靂だった。彰の言う通りだ。奈江が、家で食べ終わってしまったら、くわえたまま走ってくることはない。食パンを食べ終えた美少女と出会い頭にぶつかる趣味は俺にはない。食パンを食べ終えてしまえば、あとのまつりだ。もう、諦めるしかない。俺はそう思った。外には、夜だというのに鬱陶しい蝉の声。このまま夏が続けば良いのに。だがしかし、そんな俺たちに、次の日、またも朗報がもたらされた。
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