第三章:魔道学院サクラメメント

第12話『魔道学院サクラメメント』

「それでは、魔道学院サクラメメントに入学した新たな転校生を紹介しよう。それでは、まずはその黒いローブをきた少年から、自己紹介をお願いするよ」


 初老のモノグラスをかけた紳士が教壇の前に立つ雫月の方を向きながら、自己紹介を催促する。ここは魔道養成機関、魔道学園サクラメメントの校内である。


「はじめまして。ボクは雫月 五嘉といいます。趣味はセガ全般です。魔法の心得はありませんが、どうぞよろしくお願いいたします」


「はい。雫月くん自己紹介ありがとう。ところで、雫月くんの隣に立っている、そこの小さくてかわいいおじょうちゃんは、雫月くんの妹さんかい?」


「いえ、違います。彼女は、ボクの幼馴染です。ミミ、自己紹介して」


「みなさま初めましてナノ。私の名前は深月ミリア。特技は逆立ちナノ」


 教壇の前で、バッと勢いよく逆立ちをする。鮮やかなフォームでその場で倒立するミリア。体操選手なみの鮮やかなフォームである。クラスメイトはその鮮やかなミリアのフォームに固唾をのむ。——否


「——ミミ、自己紹介と言っても、パンツの色まで紹介する必要はないよ」


 クラスメイトが飲んでいたのは、固唾ではなく生唾のほうであった。鮮やかな倒立によって、ミリアのふりふりなメイド服の下に隠されたパンツがあらわになる。ミリアのパンツは、往年の初音ミクリスペクトを感じるエメラルドグリーンと白の縞パンであった。特に多感な時期の男子学生にとっては貴重な記憶となったことであろう。


「///——っ、というわけで、……みなさん、よろしく、ナノ」


 男子生徒たちを中心に、教室中がガヤガヤと賑やかになる。——教員が小さく咳ばらいをして、言葉を続ける。なお、この咳払いをしている紳士風の教員がモノグラスの下の目から、尋常ならざる視線をミリアのパンツに向けて居た事実は、彼の名誉のために伏しておこう。


「というわけで、今日から雫月くんと、深月くんが我らが魔道学院サクラメメントに転校することになりました。魔法などにも不慣れということなので、クラスのみなさんも親切にするように」


 ここは、静岡県の元富士山——、現在は局所的地殻変動により、狂気山脈と呼ばれるようになった、山林の中に位置している。魔道養成機関、魔道学院サクラメメント。魔道エリートを育成するための養成機関である。


 とは言っても、この学園がこの世界に転移してきたのは、つい先日の事である。魔道学院サクラメメントは、学校と言っても全校生徒わずか32名の学園である。


 この学校の生徒たちは、3年前に突如出現した巨大な魔法陣にクラスごと飲み込まれ、この世界とはことなる異世界、魔法世界グリモワールにクラスごと転移したのである。


 ——つまりこの学校の生徒たちは、異世界の人間では無く、元はクラス転移によって飛ばされた静岡県の学生たちである。


 そして、五嘉とミリアはこの狂気山脈の八合目に位置する森林の中にある、魔道学院サクラメメントで3日間を過ごすこととなるのであった。

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