第11話『籤引き師と余言者の死闘』
いまは五嘉が宣言した余命宣告の時、8月23日18:23分の10時間前まで、あと10時間。ヒデオは、ひとけのない閉鎖された廃墟を自分の決戦の舞台として選んだ。
「おい——小僧。見ているんだろ? とっとと姿を現せ。余命を前倒しててめぇに俺の命をくれてやる機会をくれてやる。——まぁ、小僧が俺を倒せればの話しだがな」
「まだ、約束の時間ではない。キミにとってこの世界で過ごせる時間はとても貴重な時間のはずだと思う。貴重な余命を前倒して、後悔はないのかい?」
「この世界でやるべきことは、全てやった、——やり切った。それはいらねぇ気遣いだ」
「そう。——なら、いいんだ」
「なぁ……。小僧。俺たちは、お互い命を奪い合う間柄ではあるがなぁ、ぶっちゃけ昨日、あのスクラップ場で、俺に千夏の家の地図をくれたことには、本当に感謝してるんだぜ?」
「なら、おとなしくボクに殺されて欲しいのだけど」
「んっ、——わりぃけど。それとこれは別だ……。簡単に死んでやる気ははねぇぜ! 俺の命を奪いたきゃあ、てめぇの死力をぶつけて奪い取りやがれっ!」
「もとからボクはそのつも、っ——爆はッ?!……!!」
五嘉の直下で小規模な爆発。ヒデオの仕掛けた、SRアイテム、
殺傷力は低いが、相手を手負いにするには十分な火薬量。——だが、そこにあったのは五嘉の残像。
「へっ! しくったか……。会話で気を引き付けて、注意をそらしてたところ、てめぇを爆死させる予定だったんだがな。まぁ、そう世の中簡単にはいかねぇよなぁ。今のはあいさつ代わりだっ。——釣りはいらねえ、もらっとけ」
五嘉は、
五嘉は
五嘉は、言葉や細かな所作、事前の準備によって、相手を自分のペースにのせることによって相手の本領を発揮させないようにして戦う。それが、五嘉の戦闘スタイルである。だが、油断のない、本気になったこの男——ヒデオにはそのような小手先の技術は通用しない。
「ミミ——座標送信。WGS8435749803214139.80488615——ブチ貫けっ!」
《了解。発砲許可受領なの。殲滅対象、
廃墟の建物の屋上から、メイド服の少女がアンチマテリアルライフルを構え、発砲する。戦車の装甲もぶち抜く威力の長距離狙撃用ライフルである。ミミの放った50BMG——通称、NATO弾は、ヒデオの胴体に直撃——、まるで水風船を銃弾で打ち抜いたかのように爆ぜる。ヒデオは肉塊になり爆散——。
《そんなっ……そんなっ……あ、あり得ない……なのっ!!》
——ミリアがつい先ほどブチ貫いた箇所を起点に、まるで映像を逆再生させたかのように、空中に爆発四散した肉片が、元の場所に戻り、復元される。—
—彼がクジ引きで引いたSSRアイテム『身代わりの護符』の能力の発動。
「……へっ! 危うく、死ぬところだったぜ。やるじゃねぇかっ! 自動蘇生アイテム、引いてなきゃあ……あの一撃でおしめぇだった。小僧には銀髪幼女ちゃんもいたんだっけな。だが二対一くらいは、俺にとってはいいハンデだ」
SSRアイテム。身代わりの護符の効果。一度きりしか使用できないが、この護符の所有者は、肉体を破壊されても自動的に元の形状を復元するという能力だ。
「分かってはいるけど。——異世界っていうのは、何でもありだね」
五嘉は、左右両手にダガーを構え、いつでも応戦できる構えを取る。
「そういや、今日はまだクジ引きを引いていなかったなぁ。さぁて……何が出るやら——」
七色のプリズムが空間を覆われ、ヒデオはその七色の光に包まれる。取得したアイテムは『
レアリティー表記はカーSEXR。SSRを遥かに凌ぐスーパー・エクストリーム・レア。アイテムの説明記述は以下の通りに書かれている。
『究極を超えた究極のレジェンダリーウェポン。24時間以内に行った愛のあるSEXの回数分だけ身体能力を向上させる。能力値は乗算的に付与される。この能力の有効時間はアイテム所有者の年齢×1秒』
「つまり、42秒間は俺の——無敵時間だ」
「ミミ——第二射、頼む。指示を出す余裕もなくなると思うので後は自由行動で」
《了解なの》
第二射がアンチマテリアルライフルの銃口から発射される。一度は完全に肉体を爆散させるほどの威力の一撃を、ヒデオは片手で軽く弾く。
「わりぃな。——止まって見えたわ」
全身に金色のオーラを纏うヒデオ。右上腕に刻まれた
「いくぜ小僧……。異世界の力を見せてやるぜっ!」
右の鞘からバスターソードを抜剣。何層かに重ね、自身の前に張り巡らせた五嘉の暗器『蜘蛛の糸』をまるで、本当の蜘蛛の糸を払うように、軽くいなし、切り払う。
「——ツっ!」
「へっ——、小僧。どうした。——随分と余裕がねぇみたいじゃねぇか」
今の最高潮のヒデオの前では詐術で自分の領域にもっていく事もできない。単純な戦闘能力での勝負。だが、五嘉の戦いはツーマンセル。
《
メイドの銀髪少女の瞳が深紅に煌めき、深月ミリアが構える機関銃はギャリリとけたたましい音を立てて機関銃のローターが回転する。ミリアの足元には夥しい数の空薬莢が積みあがる。
ミリアの放った機関銃の39mmダムダム弾は、その一発一発がアンチマテリアルライフルと同等の威力。つまり、当たりさえすれば数百回も破壊することができるだけの威力である。
これをヒデオは肉眼で捉え、最小限の動きでこれを回避する。
ヒデオは、両手に無限ダガーを構え、五嘉のインファイトの領域に入る。五嘉も応戦するために、黒ローブに隠したダガーを両手に構え応戦するも、ヒデオの加速に対応仕切れていない。
外から見れば両者が対等に打ち合っているように見える。だが、実際は五嘉は、ヒデオの無数の襲い掛かる刃をダガーで受けるだけの完全に守りの戦いになっている。
性痕——ふざけた名前のアイテムだが、その威力は本物である。
「ぬらぁ——っ!!」
ヒデオの足刀が、五嘉の腹部を捉える。五嘉は、自ら後ろに倒れることで、衝撃を殺そうと試みるも、相殺しきれなかった分の衝撃が全身を駆け巡り、後方に吹き飛ばされる。
後方に吹き飛ばされる際に、左右の袖の内側から投擲した隠し投擲小刀も——空しく、横を通り過ぎるのみ。
残り時間はあと1秒——。だが、1秒もあれば五嘉を殺すには十分の時間である。ヒデオは、地面を蹴り、自分の身体を弾丸のな速度に加速させ、襲いかかる。
「——彼岸花」
その言葉が耳に入るや否や、ヒデオの世界がまるで逆様になったように反転する。ヒデオは、胴体から真っ二つに両断され、地面に伏した。
——ヒデオの肉体は、今度は元に戻ることなく、淡い光の粒子となり消えた
「ミミ、今回も際どい戦いだったよ——。
《しー君、今回もお疲れ様なの》
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「ヒデオさん。起きてくださいっ! あさですよーっ」
ヒデオは、宿屋のベットで目を覚ます。隣には奴隷幼女のリデル。床には、ケモミミ幼女のテトがいる。ケモミミ幼女のテトを床に寝かしているのは、ヒデオの趣味ではなく、獣人の習性でテトは床じゃないと眠れないからである。
「……おお、おはよう。今日も、良い朝だなぁ」
「寝ぼけているんですか。ヒデオさんはかわいい人ですねっ!」
「寝ぼけついでに、もう一つ質問だ。リデル。お前、何歳だっけ?」
「わたしは18歳ですよー。もちろん。ヒデオさん、大丈夫ですか?」
「いや、すまん。ちょっと変な夢を見ていたみたいでな」
「それと、右肩の辺りにあるタトゥーはいついれたですか?」
「ん……タトゥーなんていれたことなかったけど……、——っ!」
自分の腕の右上腕の上部に、時計のような形状のタトゥーが刻まれていた。——
「
「ヒデオさんは、イケおじですっ! そのタトゥーもとってもくーるですっ!」
「照れるぜっ。そんな事を言うと襲っちゃうぞー」
「もーっ。ヒデオさん、昨日も野獣のようにわたしに襲ってきたじゃないですか。でもヒデオさんは、わたしが18歳になるまで我慢してくれたのはとっても偉いのです。そこまで遵法精神の高い殿方は、この世界広しといえどヒデオさんくらいですっ!」
奴隷幼女のリデルは、まるでヒーローでも視るかのようなキラキラした瞳でヒデオを見る。そして、ベットの中のヒデオの頭をなで、ほっぺたに軽くキスをする。
「えっ。そういや、そうだったっけかな……?」
「——
「がおーっ。ヒデオー。今日は朝から独り言がうるさいですーっ! そんなことよりも、今日は約束通り僕とえちえちなことをするですー! 僕も今日18歳になったのですー」
「テト、わーっかった! わーかったっ! その前にギルドからの依頼を受けていた、荒れ地の開拓ミッションをこなすぞー! 顔洗って歯を磨いたら、着替えて仕事いくぞーっ!」
「はいでーす!」
「がおーっ!」
アラフォーの勇者パーティーを追放されたヒデオは、ヒデオを追放した勇者パーティーメンバー、テトを追放した賢者パーティー、そして新たなに判明した、リデルを18歳まで石像にした謎の組織(仮)を巡る冒険は今装いも新たに——18禁仕様で、新たな幕を開ける。
そして、ヒデオがすべてを成し遂げ天寿を全うし、世界に平和と安寧をもたらしたその千年後に再び復活した悪の組織と、
ヒデオの血と
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