外伝 龍道川トオルの事件簿
EPISODE1 NewTuber連続殺人事件
2034年7月18日、T京都にあるマンションの一室にて。
「はい、どうも! TRIPLE・AXELのイーグルです!」
「TRIPLE・AXELのサルコウです」
室内の中心にビデオカメラが設置されており、二人はソファに座りながら、レンズに向かって声を発している。
「今日はね。あいつの誕生日だよ」
「ハイドロの誕生日か。そういえば、7月の18日ってプロフィールに書いてあったな」
「ほら、見てくれよ、これ」
イーグルと呼ばれた青年は、カメラを持って床一面を映す。
そこには、大量のプレゼント箱やイラストで埋まっていた。
「これ全部、視聴者からの誕生日プレゼント! すごいな、あの脳筋陽キャ」
「でも、肝心の本人がいない。ということは、つまり」
「そう! ドッキリよ! ドッキリといっても、サプライズよ」
「やると思ったよ。で、今回は何?」
「単純に、誕生日わすれてたことにして、向かいの部屋を開けたら! ってやつ」
「ドッキリにしては優しいな。それにしても忘れられるって、すごいショックだよ」
「ちゃんと、本人に届けないとな! じゃ、向かいの部屋にもっていこ」
「本人は、あと五分で来るみたいだ」
「はやくはやく」
それから数分後。
ドッキリを仕掛けられたハイドロは、笑い泣きしてしまった。
涙を誘うような声で、ポツポツと思い出話を語り合う。
三人はドッキリ大成功と言って、録画を終了した。
「よし、僕が後で編集するわ」
「サルコウ、任せた」
帽子を被り直したサルコウはビデオカメラを持って、隣の部屋に入っていった。
残った二人は、プレゼントの中身を雑に弄んでいる。
「てかさ、なに、このプレゼント。ゴミしかないじゃん」
「イラストとかいらねぇから、金目の物くれよな。結局、金なんだよ」
「おっ、これ。高そうなシャンパンじゃね。あとで、飲もうぜ」
「じゃ、ゴミはまとめて捨ててくるわ。ついでに、コンビニでつまみ買ってくる」
「おっけー」
ハイドロは”ゴミ”と称したプレゼントのほとんどを、ゴミ袋に突っ込んでいく。
二袋できあがると、それを持って外に出かけた。
「もう真夜中じゃねぇか。おぉ、真っ暗」
ハイドロは後ろを気にしつつ、早足でマンションの階段を駆け下りていく。
ゴミ捨て場にゴミ袋を投げつけると、近所のコンビニを目指して歩いた。
途中、公園に差し掛かったとき、いきなり振り向いた。
後ろに人がいる気配を感じたからだ。
街灯は少なく、光が点々とあるだけ。
誰もいないことを確認して、溜めた息を吐いて安堵した。
「なんだ、気のせいか」
呼吸を整え、前を見る。
その時、目と鼻の先に人の顔があった。
思わず、驚きの声を上げる。
「び、びっくりさせんじゃねぇよ! てめぇ!」
ハイドロの正面に立つ人影が歩き出す。
街灯の光が、人影に当たる。
黒のレインコートがちらりと見え、ハイドロは逃げようと後ろを向いた。
だが、肩を掴まれ、公園の方に押しやられる。
押されたことにより、尻餅をつかされた。
尻をさすりながら立ち上がると同時に、脅し文句を並べた。
「いってぇなぁ。俺を突き飛ばしやがって。殺されてぇのか! てめぇなんか、俺の拳で即死だ!」
酔っていたこともあって、言葉は荒れていた。
頭に血が上ったハイドロは拳を構えて、迫ってくる人影に殴りかかる。
鍛えられた筋肉で放つパンチに当たれば、ひとたまりもないだろう。
しかし、人影の頭に握り拳が届くことはなかった。
心臓を、包丁で刺されたからだ。
膝から崩れ落ち、刺されたハイドロは絶命した。
引き抜かれた包丁の刃に街灯の光が当たる。
赤黒い鮮血が刃先から滴り、光を鈍く反射していた。
何事もなかったかのように、人影が公園を離れていく。
人の輪郭が闇に飲まれて消えていく様子から、幽霊だと思ってもおかしくはない。
そうして、殺人鬼は現場から去ったのだった。
今度は、車がやってきた。
五十代くらいの男性が車から降りる。
そして、辺りを見渡して、公園で倒れているハイドロを発見したのだった。
現場を封鎖する警察官に、左手首のブレスレット型デバイスを見せる。
昔は警察手帳だったが、今はこのブレスレットが警察手帳になっている。
手首を捻ると、顔写真と名前と階級が空中に投影された。
顔写真をパッと見て、特徴的なのは頭髪だろう。
癖のない黒髪の一部が赤く染められていた。
龍道川トオル、警視庁刑事部捜査第一課第七係巡査部長。
個人情報を付け加えるとすれば、大学卒業二年目の26歳。
警察官に敬礼して、テープの下を潜る。
潜り抜けた瞬間、起伏のない事務的な声が聞こえてきた。
「心臓を一突き、即死だな。刺し傷から見て、包丁のようなもので貫通させられている、か」
今年46歳になるスーツ姿の男は、鑑識課からの報告に目を通している。
皺や白髪は少し目立つが、スーツの上からでも筋力のある堂々とした肉体が分かる。
「それで若造、何か思うことはあるか? 龍道川トオル……」
部署で最年少だから、若造とよく呼ばれる。
だが、この刑事……二階堂ジュウイチの言う「若造」は嫌味も含まれている。
26の新米のくせに、巡査部長になりやがって、というような思いがあるのだ。
呼ばれた俺は遺体の側に立って、周辺に目を配った。
見るべきは、まず遺体の様子だ。
何か思うこと、か。
おもむろに屈んで、遺体の上半身を注視する。
「肋骨に邪魔されず、一発で心臓を突き刺した。被害者は加害者に殴りかかろうとしたようですね。つまり加害者は動いている相手の心臓を、狙いすまして刺した。このことから、加害者は相当な手練れではないでしょうか」
近くの監視カメラに、犯行の瞬間が映っていた。
映像を見る限り、被害者は加害者に殴りかかった時に、胸を刺されたようだ。
推理を聞いた二階堂警部補は鼻で笑って、馬鹿にしてきた。
「龍道川? まさか、日本に殺しのプロでもいるってことか? 偶然、そうなったんだろ。襲ってきた相手の胸辺りに狙いを定めて、切先で突き刺した。ただ、それだけのことだ。オレは通り魔の犯行だと考えてる。プロの殺し屋が、偶然通りかかるわけがねぇ」
「私は、計画的な犯行だと思っています」
「……明確な殺意を持った人間にやられた、と? ふっ」
鑑識の報告が記された紙に、視線を移す。
いくら上司でも、あまり二階堂の顔を見ていたくはない。
彼は同僚からも評判が悪く、威嚇する犬の顔に似ていると陰口が叩かれている。
俺も怒っているか、馬鹿にしているかの表情しか見たことがない。
嫌われている理由がよくわかる。
当の本人は噂を耳にしても気にするどころか、ニヤッと笑い流していた。
俺はその顔に嫌悪感はあったものの、尊敬もあった。
舐められることは少ないと思うからだ。
「防犯カメラの映像から、被害者の男性はコンビニに向かっていたと推測できます。コンビニに向かう道中で加害者に押され、公園で殺害された。確かに通り魔かもしれません。しかし、なぜわざわざで公園で殺害したのでしょうか。しかも、防犯カメラにしっかり映る位置だというのに」
公園の公衆便所に取り付けられている防犯カメラのため、公園の様子がまるわかりである。
映像の端に、歩道がギリギリ見える。
防犯カメラは黒のレインコートを着た加害者が、被害者を公園に押しやって、殺害するまでの一部始終を録画していた。
通り魔だというなら、歩道で刺せばいい。
街灯もあって、殺害しやすい。
なのに、暗い公園内に追いやって殺した。
どうも計画的な犯行のように思えてくる。
わざと、防犯カメラに写ろうとしているような。
「あっそ」
警部補はそう言って、そっぽ向く。
全く興味がない、というよりはお前の話に耳を貸したくないという感じだ。
土を踏みしめる足音が聞こえ、刑事が情報を持ってきてくれた。
二階堂の態度に呆れながら、今入った報告を告げる。
「警部補、被害者の身元が判明しました。水樹イチロウ、二十一歳。職業……NewTuberですね。近所のマンションに住んでいるそうです」
「ふーん、NewTuberね」
被害者の職業を軽蔑する呟きだ。
NewTuberといっても、今や立派な職になっている。
これが、世代の差から生じた価値観の違いだ。
「三人グループの『TRIPLE・AXEL』。その中の一人、ハイドロという名前で活動しているようです」
手持ちのスマホで、動画を確認する。
再生回数がそこそこあり、登録者も多い。
その内容は……。
「どれもこれも過激な内容ばかりですね。検索候補にも、トリプルアクセル炎上と出てきます。炎上商法で日の目を浴びているようです」
「過激は面白い、と思ってる馬鹿な奴らだ。殺されて当然かもな」
「声がでかいですよ」
他の警官が、横目で警部補を見ている。
侮辱する理由も分からないわけではないが、冷静さを保ってほしい。
「トリプルアクセルの二人を、重要参考人として協力してもらいましょう」
「そうだな。その前に、被害者の家を訪ねるぞ」
現場を離れ、俺の運転で被害者の住むマンションに向かった。
道すがら、今回の事件について脳内でまとめる。
T京郊外の公園で、心臓を刺された水樹イチロウの遺体が発見された。
凶器は、刺し傷から包丁と推定。
被害者の職業は、NewTuberと判明している。
NewTuberとは「NewTube」と呼ばれる世界最大規模の動画共有サービスにて、動画を公開する者をいう。
世間では、”NewTubeで得られる広告収入によって生活している者”と捉えられている。
2032年日本の小学生がなりたい職業ランキング堂々の一位となり、社会にも広く浸透してきた。
社会に浸透した理由として、第一に「遊んで、大金を得られる」というのが魅力的に映ったからだろう。
二つ目の理由は、過激な動画がマスメディアで取り上げられるからだ。
社会問題になるほど、過激な動画が投稿されており、逮捕者も続出している。
これはいわゆる炎上商法と呼称される広報宣伝で、無名な者でも宣伝費をかけずに知名度を上げられるのだ。
被害者が属しているグループ、TRIPLE・AXELは炎上商法で名を挙げた者達だ。
というわけで、彼らに会う前から印象は最悪だった。
特に、二階堂警部補の抱いている印象が。
「いいマンションに住んでるじゃねぇか」
「炎上商法の連続で、かなりの額を稼いでいるみたいですよ」
目の前にそびえ立つ建物は、白を基調とした高級マンションだ。
NewTuberとして有名になれば、まあまあな額が手に入り、企業からも仕事を依頼される。
二階堂は嫌味ったらしく呟いた。
「だから、殺されるんだろ」
「はぁ……警部補、管理人室に向かいましょう」
「真面目だな。お前は」
二階堂が車から出ると同時にそう言い放ち、俺を見ながら言葉を続けた。
「いつか、その性格が災いを招くぞ」
「その時は、この性格で乗り越えてみせますよ。では、向かいましょうか」
言い返すと、彼はあからさまに気に食わなさそうな態度を示した。
警部補は出会った時から、面倒くさがりだった。
だけど、面倒見は良い……とは思っている。
人の名前をすぐに覚え、なんだかんだ言いながらも部下を気にかけていた。
それゆえに、こんな質問をぶつけてきたんだろう。
警察官なんて、気楽にやってる方が過ごしやすい。
俺みたいに適当な性格のほうが、警察官は続けられるぞ、とでも言いたいのだろう。
生憎、俺に真面目なんて自覚はない。
さっさと終わらせたいから、テキパキと行動しているのだ。
備え付けのエレベーターを使って、六階まで移動する。
頭を掻きながらぼんやりと付いてくる二階堂を置いて、自分は被害者の部屋に急ぐ。
事前に管理人からロック解除キーを入手しており、玄関ドアに手を押し当てれば勝手に開く。
綺麗に清掃されている白い廊下を通って、奥の住居にたどり着いた。
そして、チャイムを鳴らす。
誰か同棲している可能性もある。
すると、静かにドアが動いた。
隙間から、若い男がジト目で問いかけてくる。
「あの……誰っすか」
この男、TRIPLE・AXELのイーグルと呼ばれている人物だな。
ワックスで、ガチガチに固めた髪。
ジャラジャラしたネックレスが日光を反射している。
左手のブレスレット型デバイスを起動させ、手のひらに警察手帳を表示させる。
手のひらを男の目の前に持っていき、司法警察職員だと身分を証明した。
「おはようございます、警察です。あなたが鷲森ユウトクさんですね。少々、お伺いしたいことがあります」
「伺うだって?」
警戒して全開にしないドアを握り、強引に開ける。
鷲森は気迫に押され、後ずさりしていた。
「ちなみに、サルコウと呼ばれている猿見コウタロウさんはいらっしゃいますか?」
「え、あ……おい、サルコウ! サルコウ!」
仲間を呼ぶような声で、奥に向かって声を飛ばした。
高級マンションらしい部屋の廊下に、ガタイのいい男が現れた。
帽子を反対向きに被り、顎にピアスを埋め込んでいる。
顔色は少し悪そうで、どうやら俺が警察だと聞こえていたようだ。
屈強そうな図体とは裏腹に不安そうな挙動をしながら、足先をこちらに向ける。
「ぼ、僕が猿見コウタロウですが……」
二人が聴く態勢になったところで、事件のあらましを伝えた。
ハイドロの水樹イチロウが殺害されたこと、死因、殺害現場。
聞いた二人は驚愕して、顔を下に向けた。
「あいつが殺された……アンチの仕業じゃねぇか?」
「そ、そうだ。刑事さん、アンチだよアンチ! はやく奴らを捕まえてくれ」
こいつらの言うアンチとは、嫌がらせや攻撃をする者を意味する。
アンチは動画のコメント欄等で、彼らを攻撃しているのだ。
つまり、TRIPLE・AXELの敵というわけだ。
必死に訴えかけてくる猿見と、唇を噛む鷲森。
その二人に向かって、俺の後ろから愉快な声音をぶつけた人がいる。
「容疑者はてめぇらだよ、若造ども」
「なに?」
鷲森は声がした方向を睨んだ。
二階堂は玄関ドアにもたれかかって、疑った二人を横目にタバコをふかしていた。
黒く細い筒状の電子タバコを味わっている。
あんたは自由か。
なんで、こんな人の配下になってしまったんだ俺は。
殺害の容疑をかけられた猿見は、むきになって言い返す。
「う、疑ってんのかよ、おっさん。僕たちがハイドロを殺すわけねぇだろ」
「よくあるよなぁ。金で揉めて殺したってやつ。お前らもそうだろ」
「ふざけんな。金で揉めたことなんて一度もねぇ。それよりも、アンチだ。サイバー犯罪対策課とかあるんだろ? 殺害予告する連中を特定して、早く逮捕しろ!」
俺に詰め寄りながら、猿見が言葉を吐く。
二階堂は呆れた様子で、電子タバコの先端を鷲森と猿見に向けた。
「アンチ、アンチって……疑いを逸らそうって魂胆だろ」
「違う。NewTubeのコメント欄に毎回、殺害予告を書く奴がいるんだよ。それに、アンチが特定しているのはハイドロの家だけだ。殺せるとしたら、住所が特定されているハイドロだけなんだよ」
「すみません。特定されているのは、水樹さんの家だけと言いましたか?」
割り込んで、話を聞いた。
こういうところから、犯人が割り出せる可能性は大いにある。
強気になった猿見が説明を始める。
「動画を撮るときは、部屋が広いハイドロの家でやるんだ。僕ら二人は別の場所に住んでるよ」
「ということは昨夜、撮影をしていたんですね」
「そうだ。俺とサルコウは奥の部屋で動画編集。ハイドロはゴミ出しと、コンビニ行くつって出て行ったんだ」
鷲森はさっさと終わらせたいのか、少し投げやりな口調に変化していた。
ブレスレットデバイスに触れ、彼らの会話を録音する。
彼らに手首を傾け、デバイスを怪しまれない範囲で近づけた。
口を滑らせることを期待して、質問をぶつける。
「動画編集の後は、いつもゴミ出しに?」
「ああ、ハイドロがいつもな」
「ゴミ、というとその中身は?」
「え、そりゃ……ここで食べたものとか」
左手のブレスレットを掲げて、左に捻る。
すると、空中に映像が浮かび上がった。
マンションのゴミ捨て場付近にある防犯カメラ映像だ。
真夜中、エレベーターから水樹が出てくる。
両手に持つゴミ袋は、パンパンに膨れていた。
「管理人に許可を得て確認させてもらいました。70Lの袋を二つ抱えている水樹さんが、ゴミステーションに捨てていますね。いつも、こんな量のゴミを?」
「ま、まあな」
「中身も確認させてもらいましたよ。どうやら、視聴者からもらったプレゼントを捨てていたようですね」
「ちっ……だから、なんだってんだよ。器物損壊罪とかいうんじゃないだろうな」
「いえ、器物損壊罪は親告罪ですから告訴がなければ罪に問われません。それよりも動画編集の後は、いつもこの量のゴミを出しに行っていたのですか? コンビニにも毎回?」
「いつも、この量ってわけじゃないが。撮影で出たゴミは、すぐ片付けるようにしてんだよ。部屋を綺麗にしておかねぇと、評価が悪くなったりするからな。コンビニは毎回だな。撮影の後は、ちょっとしたパーティをやるんだよ」
ゴミの内容や量は関係ない。
犯人の立場で考えるなら、動画撮影の後はいつもゴミ捨て場に来るという情報。
そして、コンビニにも行くという情報。
この習慣があるという事実が大切だ。
犯人はこの習慣を知って、慎重に行動に移した。
黒ずくめの恰好で、心臓を一突き。
公園内の防犯カメラに映ってもいいように、準備も万端のようだ。
証拠も徹底的に残さないようにしている。
改めて思うが、厄介な犯人だ。
「ちなみに、ゴミ出しに行くことを知っている人物に心当たりはありますか?」
「分かるかよ。まあ、俺たちとコラボしたNewTuberなら知ってんじゃねぇか」
「だが、若造らが怪しいってのは変わってねぇ」
くゆらすタバコの先を鷲森に突き付けて、二階堂は睨みつけた。
一貫して犯人扱いすることで、自白を促すのが二階堂の方法だ。
だが、本当に犯人ではない者からすれば堪ったものではない。
怒りで眉が痙攣し、拳を固く握り締めている。
「おっさん、一発殴らせろ」
「いいぜ、かかってきな。返り討ちにしてやる」
「警部補、やめてください。今日は、ここらで引き揚げましょう。最後に、皆さんの住所も教えていただけませんか」
やる気満々な二階堂の肩を掴んで、強引に廊下へ押しやる。
二人の住所をスマホでメモしてから、自分も廊下に出る。
それから玄関に向かって「ありがとうございました」と叫んで、エレベータまで歩いた。
車に乗り込んでも、警部補の不機嫌は止まなかった。
現に、不機嫌だと伝える舌打ちが執拗に聞こえてくるのだ。
そして、翌日。
都内のショッピングモールに、大量のパトカーが駆け付けていた。
駐車場で、地面に叩きつけられた鷲森ユウトクの死体が発見されたからだ。
三階の立体駐車場から突き落とされ、踏みつけられたトマトのように肉が潰されていた。
その次の日には人気のない路地で、絞殺された猿見コウタロウの死体が発見された。
前日に鷲森が殺されたのを知ったのだろう。
片手に新品の金属バットを持って、護身していたようだ。
しかし、その金属バットは使われることなく、猿見はこの世を去っていった。
報道機関は一連の事件を「NewTuber連続殺人事件」と呼び、大々的に知れ渡っていくことになる。
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