十一.ジーナと合体!
官房長に会ってから三日後、ナジャンタ国のパラールという街に到着したマロック島は、再び市を開いた。
今度は衛士隊が、隊長も含めた総出で市を守っている上に、ナジャンタの兵士も警備に加わっている。
だが俺とジーナは島で待機。今朝、俺たちの神装馬スタンと神装鳥キュリアは改造が終わったばかりだ。工房前に引き出された機体を、ミーナがを点検している。
俺たちは島の縁から突き出した見張り台で、市場を見下ろしていた。
「来るやろうか?」
「わからん。来ないといいが」
「来んかったらうちら失業や」
「そうだけどさあ」
そんな事を話しながらグダグダと時を過ごす。
日が真上に来た頃、ミーナが声を掛けてきた。
「点検完了や。試してや」
「よしきた!」
俺が立ち上がった時、見張りのラッパが鳴り響いた。
見回すと、雲の間から大きな影が現れた所だった。俺の記憶にある、空賊の空飛ぶ魚だ。あの人型ゴーレムを吊り下げている。
俺は立ち上がった。
「来た! ジーナ、い……」
「行くばい!」
ジーナが先に飛び出すのを慌てて追う。俺が『行くぜ!』って言って先に飛び出すはずだったんだがなあ。
「準備は?」
「万全や!」
ミーナがキュリアから飛び降りながら答える。
「よっし!」
俺は愛機に跨り、手元の神術輪を回した。読経針が蓄音管を滑り、詠唱に三分は掛かる呪文が五秒で済む。俺の意識がスタンと繋がり、一つになって二本足で立ち上がった。
「しっかり掴まっといて!」
浮遊したジーナの神装鳥が、俺の上に来る。
「それじゃ、行くばい!」「おう!」
俺たちは、発動の為の呪文を唱和する。
「「ブリデゲージ!」」
神装馬と神装鳥から、歌うような音が上がる。
俺の神装馬が胴を直立させ、俺の魔が足る先端は水平に折れ曲がった。
ジーナの神装鳥は鞍のある前半部を水平に保ちながら逆立ちする。俺の機体の上にジーナの機体が重なり、双方から伸びた鍵がかみ合い、引きつけ合った。
神装鳥の脚が左右に広がり、二機の神装機は一つの人型になった(腹の辺りに操縦席が上下に並んでて、頭が無いけど)。
何かが俺の頭に流れ込んできた。
(これ、本当に人の形になっとる?/思ったよりエイチとちかかよ!/空賊の人型、こっちに気付いとっと?/これ、ちゃんと戦えっとか?)
ジーナの心の声が、怒涛のように流れ込んでくる。そしてその感情も。興奮だったり、羞恥だったり、好意だったり。と思ったのも相手に通じたようで、
(うわ! エイチ!)「聞こえとう?」
後半は、心の声と本当の声が同時に来た。
(お、おう)
意識して答える。自分の背中の上にジーナがいるって言うのは、二人乗りとは違った意味でドキドキする。
(こ、こら! こげな時になんば考えよっと!)
やばい、心の声が洩れちまった。
「二人とも、しっかりしてんか!」
「わ、悪い!」
ミーナに叱られた。意識を集中する為に、言葉で通じる事は声に出す事にする。
「下してくれ」「分っとっと! あ、その前に槍と盾!」
ジーナの声にせかされて、足を背後の台車に向ける。こちらが屈むとジーナが腕を伸ばし、盾と槍を取った。
「したら、降りるばい」
彼女の声と共に、合体機は浮かび上がった。そのまま島の縁から空へと滑り出る。足元には二百メートルくらい下の大地。
(うわ)
パニックにはならないが、じんわり冷や汗をかく。
人型ゴーレムは既に地上に降り、白と黒の煙を吐きながら市場に近づいている。人々が退避し、兵や衛士隊がすれ違うようにして防戦に走っている。
機体が下降し始めた。俺は、アソコのアレがひゅんとなる嫌な感覚に耐える。それがまた彼女に伝わってしまい、
「なんか、これ! 股が気持ち悪か!」
「すまん、俺も我慢するから、耐えてくれ! 落ちたら死ぬ! あと女の子が人前で股とか言うな」
「し、しぇからしか!」
大騒ぎしながら、合体機は防衛線の後ろに下りた。
緊張してない訳じゃない。ジーナも同じだ。むしろだからこそ、軽口を叩かずにはいられない。
人型が、こちらを見た、と思った。
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