十二.決戦!

「なんだ、こい!」

「これも人型でねが!」

 周りのナジャンタ兵が慌てて、魔よけの印を切っている。

「さにあらず!」

 デヘイヤ隊長の大音声が響く。

「これは人型ではなか! 神装鳥と神装馬、地の民と空の民の合力したる姿でありもす! 空島の天の神々も祝福された、聖なる雄姿でごわんど!」

 その言葉にナジャンタ兵達は

「「「おお」」」

 と納得した。隊長、酔ってない時の信頼度と説得力はすごいな。


「「来る!」」

 最前線から声が上がり、人型が槍を構えて突っ込んでくる。

(ジーナ、いくぞ!)(おう!)

 声を掛け合い、意識を戦いに集中させる。

 合体機の動きをイメージし、ジーナに見せる。言葉はなかったが、肯定的な雰囲気が伝わってきた。即座に下半身の動きに反映させる。

 逃げるのは駄目だ。兵や衛士たちの防衛線が崩れる。

 真正面からぶつかるのも駄目だ。いきなりの実戦で真っ向勝負は危険すぎる。

 だから。


「開けてくれ!」

 叫んで前進。兵や衛士たちが左右に分かれた隙間を通って人型に突進した。

 それ駄目じゃないかって? もちろん分かってる。だからぶつかる直前で左斜めに向きを変えて相手をかわしたんだ。

 すれ違いざまに、ジーナが槍で敵の背を叩く。こちらがイメージした通りだ。相手は向きを変え、こちらに向かってきた。そりゃあそうだ。こっちに背中は見せられないだろう。


 今度は相手が槍を振り回してきた。俺が後ろ向きにダッシュすると、ジーナはイメージ通りに機体を少し浮かせてくれた。槍の穂先は俺たちの前を掠める。

 それから二度、三度と打ち合う内、ピンときた。

「ジーナ、こいつはパワーがある。けど遅い!」「分かってる!」


 それと、もう一つ分かった事がある。アルスの記憶の中では、恐ろしさの象徴だった、人型がまとう白と黒の煙。だが、人型の体内から洩れてくる、繰り返しの摺動音で察しが付いた。

 黒は煤煙、白は蒸気。

 こいつは、蒸気機関で動いてる!

(ジョウキキカン?)

 しまった。まただだ洩れになった。

(後で説明する。今は!)(もちろん!)

 浮かべた動きのイメージに、ジーナのイメージが重ね合わされる。それは完全に一致していた。

 突っ込んでくる人型。かわしながら足を引っかける。

 轟音を立ててうつ伏せに倒れる人型の背に、槍を打ち込んだ。

 ブシュー!

 人型の全身から蒸気が噴き出す。ボイラーをうまいこと貫いたようだ。

「あっち!」

 俺は慌てて飛び下がる。そして気付いた。

「しまった! これじゃ中にいる奴が!」

「死んだっちゃろう」

 ジーナが冷たい声でいった。そしてその声と同じくらい冷たい感情が流れ込んできて、俺の神経を逆撫でした。

「まだ、間に合うかもしれない!」

 俺が突っ込もうとした時。

 人型は大爆発した。

 衝撃で合体機は吹き飛び、あおむけに転倒した。破片が機体にガンガン当たり、後方では多くの叫びや悲鳴が重なっっている。

「救助! 急げ!」

 隊長の大音声も、震えていた。

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