第2話 友達
授業もなく、部活もない2年生初日もいつもと何も変わることなく始まっては終わりを告げた。
明日からは授業がある、海は午前中で学校が終わった貴重な午後を友達と過ごしていた。
先ずは腹ごしらえにファストフード店に入ると本当は大盛りやデザートまで選んで買ってしまいたい欲を羞恥と金銭的な問題から1つのセットに落ち着けた。
女子学生3人で座る4人がけテーブルには1つの椅子が3人分の荷物を持たされていた
「海、何にしたの?」
「ワンコインセットだよ、安いしね」
「たしかに!というより、ポテトさえ食べられれば満足よね」
「美月(みつき)はホントにココのポテト好きだね」
海が席につくとすぐに小春(こはる)が内容を聞き込みを開始した。優柔不断な小春は海のチョイスを参考にしようとしているらしい
美月と呼ばれた黒髪が美しい少女は、その顔には似合わずにLサイズのポテトを次々と口に運んでいるところだった。
「きめた!」
小春は小さく決意を固めると隣にある自分のかばんからお財布を取り出しレジへと歩いていった
その足取りは決意を決めたようにも、まだフラフラと注文を決めかねているようにも見える
海はそんな小春を可愛いなぁと思いながら見送った。
小春と美月は海にとっての親友だ。
二人は自分の事をどう思っているか分からないが、今朝のようなからかいを二人がしてきたことはない。それほどにはお互いの素がなんとなくわかっているのかもしれなかった。
美月は吹奏楽部に入っていて、真っ直ぐストレートな黒髪をキラキラとなびかせながら、堂々と演奏する姿に海と小春はいつも心奪われる
2人との出会いも、学校の発表会で美月を見た海と小春がいてもたってもいられずに声をかけたのがきっかけだった。
小春は小さい頃から海と友達でいわゆる幼馴染だ
小学生の頃は小春は今よりもっと小さくどこか守らなきゃいけないような雰囲気を漂わせているような少女だった。
海はそんな小春を放ってはおけず、常に手を引いて歩くような、そんな関係だった。
今でも身長は小さいものの、小春は3人の中で一番心が発達している。普段はフワフワと可愛らしい印象しかない小春も、いや、可愛らしい印象の小春だからか声を荒げることも無くまくしたてることもない淡々とした怒り方をする様子は恐怖を感じずにはいられない。
しかも、怒り終わると今度はいつもの笑みを浮かべ ちょっとキレちゃった などと可愛く言ってくるのだ。付き合いの長い海でさえその反応には未だに慣れない
見た目だけでは
長女美月、次女海、三女小春 なのだが
心の成長は
長女小春、次女美月、三女海 と順位が入れ替わる
見た目と心のバランスが、3人の中で1番安定しているのは美月だろう。
「ただいま〜♪みてー、ポテトとアイス!」
「おかえり、甘いのとしょっぱいのだね、完璧だ」
「うん!美月がポテト食べてるからいいなぁと思ってね、買っちゃった」
「わかるわ!やっぱりポテトよね!」
「あはは、美月はポテトのことばっかり」
「もー、いいでしょ海。ポテトが好きなのよ!」
3人の笑い声は話の内容を変えながらも食べ終えるまで尽きることはなく
各々食べ終わったトレイを片付けると、そのままショッピングへと続いた。
とある雑貨屋で、海は持ち手の部分に水の入っているシャープペンを見つけ手にとった。
水の部分には少し空気と飾りが入っていて、文字を書くとそれがフワフワと揺れキラキラと飾りが輝いた
海はそれを気に入るとレジに行き会計を済ませ2人と合流する。
3人は常に同じ行動をする時もあれば、お店の中では自由に行き来するような自然さも持ち合わせていた
その後も、服を見たり、ゲームセンターに行きプリクラを撮ったりと遊び尽くした3人は、明日から授業開始の学校生活に愚痴をこぼしながらも分かれ道で別れ各々の家に帰った。
海は今日買ったお気に入りのシャープペンを宝物のように筆箱へといれた。
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