補遺

 調べもの好きな体質のため書くとくど過ぎて書かなかったことのまとめです。

 さらりと流しましたが、わかると世界が広がるような広がらないような事どもです。


■悪魔憑き事件


 1976年にドイツで発生したアンネリーゼ・ミシェル(1952 - 1976)の保護責任者遺棄致死事件の事です。

 教皇庁における「悪魔」の定義は生前に悪行を犯した人間が堕ちた存在らしいです。

 悪魔祓いはその儀式の過程で悪魔に名前を言わせるのが正当な手順なのですが、ヒットラーとかユダの名前が彼らが生前の悪行で地獄に堕ちたからなのでしょうね、キリスト教的な考えでは。

 なお、このアンネリーゼ事件を元に映画『エミリー・ローズ』(2005)が作られています。


■丑の刻参り

 丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を釘で打ち込むという、日本に古来より伝わる呪術の一種。

 七日目で満願になるが、人に見られると効果が失われると言われている。(呪いが跳ね返るとも)

 大まかな設定は『地獄先生ぬーべー』シリーズ+ネット情報+諸々のちゃんぽんなので正式作法ではありません。

 千鶴さんが唱えた呪い返しの呪文はネット発のもので出どころはわかりませんでした。


 なお、刑法上、丑の刻参りで呪殺に成功しても「偶然死んだ」と解釈されるだけなので犯罪になりません。

 ただし、

・深夜の神社に忍び込む=不法侵入罪

・ご神木に五寸釘を打ち付ける=器物損壊罪

・「呪ってやる」と脅す=脅迫罪

 にそれぞれ該当しますので、丑の刻参りは実行するだけで二つの軽犯罪に該当します。

 実際、丑の刻参りで逮捕された例があります。

 こちらをどうぞ

 https://tocana.jp/2014/08/post_4716_entry.html


■オカルトと科学


 金縛りは仏教用語の「金縛(きんばく)」を訓読みにしたもの。

 金縛は、悪霊などを身動きできないように抑えて鎮めることで、そこから転じて身動きが取れなくなる状態を金縛りと呼ぶようになった。

 科学的には「睡眠麻痺と入眠時幻覚」による現象。

 「体がほとんど動かない」(睡眠麻痺)、「幽霊のようなものが見える」(入眠時幻覚)は特殊なレム睡眠下で発生する現象。

 詳しくは超常現象の追及をライフワークとしているライター、本城達也さんの「超常現象の謎解き」をどうぞ。

 大変に面白いです。

 http://www.nazotoki.com/kanashibari.html


 また、「23人のうち1組の誕生日が一致する確率」ですが、これは正しく数学的な理論に基づいています。

 詳しくはサイモン・シン著『フェルマーの最終定理』をどうぞ。


 最後に、これは言うまでも無いと思いますがエピソードのタイトルは東野圭吾先生の「探偵ガリレオ」シリーズのもじりです。


■降霊術とハリー・フーディーニ


 降霊術とはその字面通り、霊を降ろす儀式の事です。

 特に19世紀のアメリカで流行しました。

 発明家として世界的に知られるトーマス・エジソンも降霊会のヘビーユーザーでした。

エジソンは神智学の大家ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー(エレナ・ブラヴァツキーとも)の降霊会にもよく出入りしていたらしいです。


 その19世紀のアメリカで活躍したのが奇術師(マジシャン)のハリー・フーディーニです。

 フーディーニはマジシャンとして活躍する傍ら多くの霊能力者のインチキを暴いていました。

 その動機はフーディーニが懐疑論者だったから……ではなく、最愛の母ともう一度会いたかったから。

 そう。彼は本物の霊能力者を探していたんです。

 (結局、見つからなかったようですが)


 アメリカの降霊術について詳しくはAmazonプライムで配信されている 「ロア~奇妙な伝説~シーズン1 Epsode4. 死者の音」(Amazonスタジオ制作)をどうぞ。


 ちなみに20-21世紀においてもマジシャンは霊能力者のトリックを暴く側に回ることが多いです。

 現代の代表例だと心理学者でマジシャンのリチャード・ワイズマン、懐疑論者の代表格であるジェームズ・ランディなどでしょうか。(日本でもナポレオンズがトリックを暴いてましたね)

 特にランディは超能力者・霊能力者のトリックを暴くのに積極的ですが、彼がそんなに熱心なのは最愛の母にもう一度会いたいから……ではなく、少年時代に宗教儀式のインチキを暴いたせいで拘置所に拘留された恨みらしいです。

 恨みの力、恐るべき。

 

■魔術都市プラハ


 創作ではなくマジ。

 魔術王ルドルフ二世は特に錬金術を奨励しており、プラハには錬金術博物館なんてものも存在します。

 藤田和日郎先生の大ヒットコミック『からくりサーカス』もこの時代背景を土台にしています。


 じつは去年、プラハに行ってきたんですが時間が足りなくて見たい博物館すべてを見ることができませんでした。


 プラハ城敷地内にある黄金小路が錬金術師の工房だったというのも本当。

 往時の錬金術師の工房を再現した建物まであります。

 また、黄金小路にはあのフランツ・カフカも執筆小屋を持っていたとか。


 ティコ・ブラーエ、アイザック・ニュートンが錬金術に傾倒していたのも本当。

 一般的にブラーエは「おしっこを我慢しすぎて死んじゃった笑うに笑えない人」として有名かと思いますが、錬金術による水銀中毒が死因と言う説もあるとか。

 

 知ってる人は知ってると思いますが、旧初台駅は実在します。

 テレビでも時々取り上げられてますが、取材記事があったのでこちらをどうぞ。

 https://www.huffingtonpost.jp/2017/11/24/old-hatsudai_a_23287153/


■リャナンシー


 アイルランドの伝承に出てくる妖精。

 男性に憑りつき、精気を吸い取る代わりに芸術の才能を与える。

 アイルランドの詩人が短命なのはリャナンシーに憑りつかれているからだという伝承があるそうです。


 日本人でリャナンシー知っている方は少数派だと思いますが、ヤマザキコレ先生の『魔法使いの嫁』に出てきたので知名度も少し上がったかもしれません。

 ちなみに『美しい人 優しい人』は思い切り『魔法使いの嫁』から影響を受けています。


■百物語


 集まった一人一人が怪談を披露し、一話語り終えるたびに蝋燭を一本ずつ消していくという「百物語」

 これは永い太平の世となった江戸時代に特に流行ったものです。

 もっとも手軽に雰囲気を味わえるのが杉浦日向子先生の『百物語』でしょう。

 杉浦先生の『百物語』が何を参考に書かれたのかは不明ですが、延宝5年(1677年)の『諸国百物語』、宝永3年(1706年)の『御伽百物語』、享保17年(1732年)の『太平百物語』など江戸時代には多くの百物語が編纂されています。

 杉浦先生は江戸風俗の研究家として知られた人物なのでこのうちのどれかかあるいは全部を参考にしているのでしょう。たぶん。


■トリックスター


 神話や伝承などに登場するいたずら好きの妖精や神霊。

 北欧神話のロキ(MCUの『マイティ・ソー』シリーズに出てきたロキの原型)、シェイクスピアの古典喜劇『真夏の夜の夢』に出てくるパックなど西洋の有名な例でしょうか。

 吉四六さんは一休さんと並ぶ頓智ものの代表的主人公で、豊後国野津院(現在の大分県)の庄屋であった初代廣田吉右衛門がモデルと言われています。

 

■お寺の副業


 多くのお寺は檀家さんを頼りにするだけでは存続できないらしいです。

 調べてみたのですが、お寺でヨガも写経体験もお寺コンも私の創作ではなく実際に行われているイベントです。

 その他、駐車場経営や、こちらは結構有名ですがお寺が経営してるカフェもあります。

 ちなみに東京のど真ん中にはこんな店があります。

 https://www.enjoytokyo.jp/solo/detail/1000/?__ngt__=TT0f9b0bc7e002ac1e4ae8d3YvWWahvqpfJAli3RnZPXy4


■付喪神


 九十九神とも書く。

 劇中で書いた通り、物が長年使われて魂が宿った存在。

 様々な伝承や創作に登場するからかさ小僧(からかさお化け)はその特に有名な例。


■日本の男色


 ぼかして書きましたが、男色、直接的な言い方をするとホモです。

 日本は伝統的に男色に対しては結構おおらかで、例えば十三世紀に成立した「宇治拾遺物語」の一編「児のそら寝」は微妙に男色をにおわせる表現があります。

 これは僧院という男だらけでコミュニティで稚児を対象とした男色(稚児愛)が流行していた社会状況が反映されています。

 

■祈りと科学


 「祈りに医学的効果はあるのか?」という実験は実際に何度か行われています。

 例えば2001年にアメリカで行われた実験。

 研究対象になったのはアメリカで冠疾患集中治療室に収容されている799人。

 研究者は799人の半数を当人の知らないまま(ここがポイント。盲検しないと結果にバイアスがかかってしまうため)ヒーラーのグループによる祈りを26週間にわたって受けさせ、残りの半分には祈りを受けさせませんでした。

 結果はどうなったかというと、どちらのグループも結果に顕著な差は認められませんでした。


 逆に患者本人が本人も知ったうえで祈ってもらった場合は、わずかに回復率が高いことが知られています。

 これは祈りの効果がプラセボ効果(本人が効果的な治療を受けたと思い込むことで起きる心理的作用)であることを示唆しています。

 病は気からと言いますが、治療にも気が多少の効果がもたらすということですね。

 (詳しくはサイモン・シン、エツァート・エルンスト著『代替医療解剖』をどうぞ)


■生霊(いきりょう)


 生霊(いきすだま)、生きす霊(いきすだま)とも。

 生きている人間の霊魂が体外に出て自由に動き回るといわれている伝承。

 病気の一種として「離魂病」と同一視されることもあり、また、西洋のドッペルゲンガーとも同一視される。

 (少年漫画『地獄先生ぬーべー』ではドッペルゲンガー=幽体剥離とされていました)

 創作世界でもよく見かける設定で、劇中でとりあげた「源氏物語」のほか、それを翻案した能楽『葵上』もその例。

 夢枕獏の『陰陽師』でも出てきてます。

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