第1話 異世界転移ルルベルト

2500年‐冬‐

子供の頃からの夢に諦めがついてなく高校生の時進学に必要な成績がなく留年は親に負担をかけてしまうことが嫌なので中退し、夢にまだ向かいながらいくつかのアルバイトをしているフリーター、井上和彦。中退してから11年の月日がたち28歳になった。

現在は都内の家賃が安価の1LKの質素な建てづくりをしたアパートの一室にてテレビを見ながら缶ビールを飲んでいた。もうすでに3缶は空けていた。

口の中に疲れた体に響くほろ苦いようなホップの味が広がる。

つまみに焼き鳥を片手に持ち、頬張る。

「そろそろ行くか」

といつものVRMMORPGのワールドナイツという今では人気がなくなった一昔前のゲームをテレビの画面を消して起動させた。

ワールドナイツ、このゲームは現在二シリーズあるが二作目のワールドナイツでは運営の対応がプレイヤー達にそうとう気に食わなかったのか商品の評価は星五つある内1にも満たなかった。

そしてシリーズ一作目にして今もなおこのこともあってプレイヤーの数は劣ることを知らない。ただこのプレイヤーの数をはるかに上回るゲームが世に出て売れた。

そして今和彦はそのプレイヤー総勢数約1500万のワールドナイツのシリーズ1作目をプレイしようとダイブマシンのGARBU‐ガーブ‐を頭に覆いつくすようにすっぽりと被った。

視界には ようこそ という文字を浮かばせながらロードしていた。

この時点で彼の体には意識がなくなった。

視界が変わったらパスワードとダイブIDを打ち込んで決定ボタンを押した。

すると視界が眩しくなっていきピントがあうとそこは中世に出てきそうな城のロビーに赤絨毯を踏みつけて立っていた。

それと決定ボタンを押したと同時に規則通り五感の内、嗅覚、味覚、それと痛覚の機能を取り除かれた。規則とは以前この規則が法にできていなかった頃、ダイブした世界と現実世界の区別ができなくなっており次々とプレイヤーは錯覚をし現実の身に被害が多発した。場合によれば死者も出た。このことで一度は販売中止、政府が集め返金するといったことが起きようとしていたが、会社は潰し、この規則を法で新しく作る。この二つの引き換えで販売中止、返金といったことは免れた。

ただGARLUを開発した会社は引き換え通り潰れ、この機種をもとに現在沢山の作品が発売された。

はじめは皆、死者や重傷者が現れたゲームをプレイするのは若干抵抗があったがこのワールドナイツで完全に抵抗を打ち破ったのであった。

そんなゲームで和彦、ユーザーネーム:ルルベルト レベル:100MAXのかつてワールドクラスランキング7位だったギルド‐デール・クラフスト・エネミー‐現在28位に所属している創設者、ギルドの長を務めていた。

ちなみに公表されている限りのギルドのランキング評価は三つ。

・総勢数

・ギルド貯金量

・ギルド測定パワー

が現段階で公表されているが実際にはまだたくさんあるとプレイヤー達は悟っている。

ルルベルトは魔王のような黒と赤が主に染色された貴族風の衣装に耳に近い位置に太めの黒に近い紫の角が生えている。爪は尖っており、弱い魔物相手には爪で切りつけて数秒で片付けている。

種族はサラマンダーロードといったサラマンダーの進化系といったところの種族だ。

その男は今メニュー画面でギルドメンバーのログイン数の確認をしている

そんなルルベルトに背後からゴツゴツしたひづめが肩を数回軽くノックするようにルルベルトに応じる。

「おう、久しいなルルベルト!」

「来ていたのですね!もくもくミルクさん。お久しぶりですね2か月ぶりでしょうか」

この男もくもくミルク。種族はバッファローロード、この種族は珍しい存在である。過去にこのゲームの操作法やレベル上げなど手伝って持ったりした大きな借りがある。ギルドを創設した時も必要な金額も半分は負担してくれたり、ギルドメンバーを集める手助けもしてくれた。前になぜここまでしてくれるのか聞いたところ、初心者を育てるのが好きなことと弟のような感じがすることと過去に種族が魔物ということで幾度となくプレイヤーキルされて人間プレイヤーが嫌いだということがあって、ここまでしてくれるそうだ。

現実では一人で生活をしているらしいがいつも現実でのことを聞くと話してはくれるがどこか悲しげな表情をいつも浮かべて話をしてくれる。

見た目は筋肉が磨き上げられた姿にオリハルコンでできたシルバーの鎧を下だけ装備した見た目になっているのにもかかわらず攻撃力と防御力は劣っていない。

「あーちょっと現実で仕事が埋まってばかりでやっとしばらく休みをもらえたってとこだ」

「それはお疲れ様です」

ともくもくミルクは話をしながらメニュー画面のギルドメンバーの一覧を見ながら

「お、ロロア姉とハンズのおっさんもログインしてるのか」

「そうですね、ほかにはツクツクボウシさんにぽろぽろさん、楓馬さん、ワクシスさんが今ログインしてますね。そろそろ集合かけましょうか?」

「そうだな、頼んだよ弟」

了解を得た後にログインしているギルドメンバーに向けてNPCのメイド、執事に伝言をメッセージ機能のように言い残し先にもくもくミルクとギルド、デール・クラフスト・エネミーの拠点。全15階といった要塞に近い黒曜石と大理石で強固な拠点を重視せず見た目にこだわった城拠点の内、7階に属する会議室に二人はテレポートした。

視界が青白く眩くなり、辺りを確認できるようになると数秒で会議室に移動した。本来そのまま足で向かっていたら30分か40分という時間がかかる。

だがこの便利なテレポートだが魔法の一部でMPといった魔力が消費される。

またこのテレポートはつい最近まではこのゲームに実装されていなく、最近のアップデートで追加されプレイヤー達はようやく追加されたかといった言葉がよく見るほどだ。

会議室に着くとそこはよく社会人なら目にするであろう縦長の大きい樹齢500年を超えるであろう黒木といったこの世界では価値の高い強固な木の机に玉座に近い作りをした魔物の骨で作られた椅子が100に近い数が綺麗に揃えられてあるが大半はあまり活用されてもいなく毎回人数が少ないので会議室が異様なまでに広々と感じる。

もくもくミルクとルルベルトは拠点の7階廊下につながる扉の対局側の大きなギルドマークが刺繍されているタペストリの架かった壁に近い順に椅子に二人が座る。

この会議室はデザイナーのわさ壺という種族ダークエルフのギルドメンバーが設計した部屋だ。天井からは綺麗な黄金のシャンデリアが幾多もの数がつるされており窓がない会議室で昼間と変わらない明るさを保っている。廊下につながる扉は今は存在しないが、どろっちというツクツクボウシの兄である研究好きのプログラマーが設計したのだが、その扉が細かいところまで人の苦しむ顔や魔の存在が天使を足踏みしている彫刻が施されており技術は凄いが少し扉を触るのには個人的には抵抗がある。たしか扉の彫刻の題名は『天地に打ち勝つ魔』という少し厨二病心をくすぶられるようなタイトルだ。

そんな会議室の椅子に腰を掛けようとした時、青白い光が扉の前で発光し中に人影が三つ見える。光がおさまるとそこにはロロアとぽろぽろ、楓馬が姿を現した。

ロロアは種族サキュバスの真面目な性格の持ち主であり一部のプレイヤーのファンがいる種族と性格のギャップの差が激しいぽろぽろの双子の姉だ。魔法特化したプレイヤーでありその結果露出の多いウィッチに似たローブを羽織っている。

続いてぽろぽろは種族スライムのエロゲーの開発チームに現実では所属している見た目は普段装備をしていないが装備をすると限りなく強い。ギルド内ではパワーで右に出る者はいない。

そして楓馬は種族ヒューマンドラゴンというなんと自作の魔物でこのゲームの企業に申請をわざわざ送ったそうだ。自分と同じで毎日ログインしており人生を捧げているほどだとか。

見た目は普段人に近い姿らしいがいつもフルプレートで顔を見たことがない。本腰入れる戦いではドラゴンに変身するようだがあまり見たことがない。

性格は人懐っこくいつも悩みを聞いてくれたり笑顔が似合う人だ。いや魔物か。

その三人が来てほかにログインしてるメンバーは一向に来なかった。

「あれ?ハンズさんとツクツクボウシさんとワクシスさんはどうしたのでしょうかね?」

とみんなに聞いてみたところぽろぽろが口のないアバターでどこから声が出ているのか不思議だが答えてくれた。

「あーそのことなんスけど。いつもはすぐに顔を出すメンツたちなんスが、なんか今回の集まりは参加できないようっス。理由までは教えてくれなかったスけど」

「とりあえずお御身よ、今日収集をかけたのは何用だ?」

と楓馬が何も今回のことで言っていなかったがある程度察しはついているようだ。

「今回お集めになった訳は皆さんもお分かりのように昨日のアップデートで追加された樹海に向かいたいと思います」

そういうだろうなとみんなはやはり分かっていたようで皆もちょうど気にもなっていたらししく参加してくれた。

昨日は向かおうと思っていたのだがギルド同士のギルドマッチをいきなり仕掛けられ行けずにその日は終えた。

そしてみんなで樹海近くの村、オルガスく村に距離があるのでゴールデンウィークのレアアイテムでテレポートした。なぜ魔力のテレポートで行かないのかは距離によってMPが消費されるからだ。

行けないことはないが着いた頃にはMPが空っぽになる。

アイテムを掲げ使用すると一瞬でオルガス村の中央にテレポートした。

そこからは身に覚えのない大きな森が近くに見える。それが今回追加された樹海、ロードスター樹海といったものだから身に覚えのないのも当たり前だ。

そして今回向かっている樹海は推定レベル100であり、何も知らない初心者が入ったりすると普段の魔物の進化系が容赦なく襲ってきて即死だろう。推定レベルが100であってもレベル100のプレイヤーが向かっても即死することもあるだろうとまで言えるほど困難なダンジョンが追加されたのである。

あとはテレポートで入り口まで行きたいところだがテレポートは一度行ったことのある場所にしか行けないのである。

なので残り数キロは徒歩で向かうしかなかったが興味津々の我らは苦難せず近道を教えてくれるマッピングスキルを極めたNPCを先頭に後方に念のために数体のNPCも連れてきた。

森の中に入れば向かい先は大半バラバラだった。

ルルベルトは2体のNPCをつけ、森の奥に足を止めることを忘れたかのように入っていく。

進んでいる途中、一瞬視界が揺れた。

そして異変は起きた。空気に匂いを感じる。空気がおいしい。

変に思ったので不意に腕の皮をつまんだ。

痛かった。

ここで声をあげた。

「なぜだ!何が起きている!」

おかしいことは他にも起きていた

背後から声が聞こえた

「どういたしましたか御身よ」

御身?この話し方はメンバー内に楓馬しかいないが聞いたことはある声だが彼本人の声ではない。

「私でよろしければ相談に乗りましょうか?」

今度は女性が話しかけている途中に視線を後ろに向けた。

そこには今回後方に連れたNPCたちが不安げな表情で話しかけていた。

おかしい。

混乱している思考でこの言葉だけ頭に浮かぶ。

「冷静さを失えば敗因の一つになる。深呼吸。深呼吸」

と自分に言い聞かせ無理だとわかっているがとりあえず少しでも冷静に物事を考えられるように深呼吸と繰り返す。

そして少し震え声で

「だ、大丈夫だ」

とメンバーには向けない強気な言葉で話す。なんせNPCからすると我々は支配者なのだから仲間と同じ対応をしていては社会でいうところ部下が慕ってくれないかもしれないということもある。支配者なんてなったことないけど。

で、支配者たる言動と言ったらこの話し方だろうという考えで話した

いろいろ疑問はあるがとりあえず皆と会うようにしばらく樹海を探索する。

なぜかわからないけど嗅覚、痛覚は機能している。味覚は機能しているとは今は断言できないけど恐らく考えたくもないが別の場所に転移し謎の効果が出ているのかもしれない。

と考えて樹海を進むが日が沈んできたのを確認する。

「とりあえず樹海から出てセーブして終わるか・・・」

と光がまだ届く場所にいたので樹海を出る、そこは来た時とは違う場所で出てしまったのか近くに村があるはずなのだが一切村が見当たらなかった。野原なので見つかるとは思っていたが気づかなかっただけで村からかなり離れていたのかもしれないと思いログアウトする前にいつも声はかけているのでメッセージを飛ばしてみるがここでまた異変が起きていた。

メッセージは空中に表示するキーボードで打って送るものだ。なので午前中はめんどくささもあったので伝言で済ませていたがメンバーが樹海にいるとしたらNPCも迷うときは迷うので迷子になるケースもあるのと、NPCが各メンバーに伝言を伝えるとしたら人数分は必要だが今は2体しかいないこともあるのでめんどくささはあるが仕方なさで書こうとしたが、キーボードと書き込み欄がいくら待っても表示しなかった。

そして今度はお問合せにメッセージ送るというか電話を掛けように耳に人差し指と中指の二本であてて掛けようと試みるがこれは運営に直接繋げる行為なので繋がる訳がないのは重々承知だができることは残りはこの行為だけである。

・・・が予想通り連絡を送ることもできなかった。

とりあえず明日伝えようと思いログアウトしようとメニュー画面を開けるが項目がなかった。

「どういうことだ・・・」

とつい言葉をこぼした

樹海で気づいたことといい、今気づいたことのHPバーとMPバーが消失していることとメッセージのことといい、ログアウトができないことから考えたくもないことの可能性は高まった。

俗にいう”異世界転移”が起きたのではということだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る