ツイート
「––弦。由弦。由弦」
香澄が呼んでいる。顔をあげると、心配そうな顔で、繁華街で買った飲み物を持ったまま僕を見つめている。
「どうしたの?顔色悪いよ」
「えっ」
「なんかあったの?」
「何にもないよ。ただ、妄想してただけ」
「どんな妄想?」
「う〜んとね、ミクちゃんとレ–––––」
いや、違う。そうじゃない。君から、男性用の高そうな香水の匂いとタバコの匂いがしたから、昔を思い出していたんだ。本当に仲の良かった時のことを。
僕等は、まだ未成年だ。だから、違う男性と会っていたことになる。ねぇ、なんで。なんで、そんな匂いが香澄からするの。言いたくても言えない言葉が渦をまく。
カシャ
カメラのシャッター音が鳴った。顔をあげると、さっきまで香澄がタピオカドリンクの写真を取っていた。
「よし、アップっと」
ツイッターにあげるのだ。その声を聞き、僕も何かツイートしようと、公園内を見回す。が、何も映えそうなものがなかった。仕方なく僕は、公園の風景をアップすることにした。
カシャ
公園の様子と、空が映るように写真を撮った。
ツイッターを開いて、ツイートボタンをタップする。
「か、の、じょ、と、デート、なう」
僕は、そう呟きながら打った。写真マークをタップして、さっき撮った写真を選択する。
そこで、僕は息を吸った。心臓が、ばくばくいっている。そんな中、ツイートボタンをタップする。僕は、この瞬間が好きだ。どんな反応をもらえるだろうとか、どんな人と出逢えるだろうとか、いろんなことを、妄想できる。
[ツイートを送信中]
という文字が表示された。そのことを確認し、顔をあげた。
「香澄。そろそろ、帰ろっか」
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