『地獄のさんたも金しだい』 《下》

 あたくしは、さんたさん、の力を借りながら、恐ろしい岩山を登り始めました。


 常識的には、可能なはずがないのですが、それこそが、地獄の能力なのでありましょう。


 直角の壁を登っているというよりは、極端なでこぼこの道を、這いずって進んでいる、と、いう、かんじなのです。


 そうして、中腹あたりに、たしかに、洞窟がありました。


 あたくしの目を睨み付ける、太古の神の像、あやしい、腕が伸びてきて、あたくしの髪の毛を引き抜きました。


『あっ、いた!』


 しかし、間もなく、洞窟の入り口が、ゴロゴロと、開いたのです。


 あたくしたちは、内部の酸素状態をたしかめながら、ゆっくりと、前進しました。


 あきらかに、人の手が、はいっていたのです。


 ああ、そうして、みつけたのです!


 宝物ですよ。


 高価な宝石、貴金属、大量です。


 夢物語の、ようでした。


 それから、ついに、みつけました。 


 バラック大臣が密かに立てていた計画を記した、秘密文書。


 なんで、いっしょにあるのか!  


 大総統は、この文章を、たまたま、みつけたのでしょう。コピーして、自らの潔癖を示す証拠としようと、大切に保存しましたが、時をおかずして、殺害されてしまった。


『もっとある!さがせ!さあ、鬼さんたちよ!さがせ。きっと、真実がやまと、うまっている。我が父の疑いははれた!』


 彼女は、高々と宣言した。


 しかし、さらに、穴堀をやめようとしない。


『こらこら、また、逸脱しはじめた。あれ以上ほると、保護空間から、また、つきぬけるぞ! まくだ、幕だ!ほら、幕引け〰️〰️!くそ、つきぬけた、保護フィールドからでたぞ。プログラムが効かないから、なにやるかは、あの俳優しだいだよ。おわ、高速でイミテーションの宝物を運んでる。どこにゆくんだろう。技士長なんとかしろ、また、狂ったぞ。つかまえろ!



 巨大な『空間劇場』の幕は、すでに、閉まったのです。


 観客からは、そこそこの、良い反応がきてるのですけれど。


 あ、ぼくは、さんたです。


 すみません、ちょと、公演は、まあ、上手くいったけど、トラブル発生でーす。

 

  

 …………………………………………


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『さんたさん、捕まえたあ?』


『はい〰️。首尾よく、捕獲しましたよお。女王さま。』


『それは、良かったわ。まあ、本当に手を焼かせるんだから。何回め?』


『いやあ、二十回かなあ、もっとかなあ、彼女、脱走魔ですから。ほら、あそこで、凍結してます。』


『良い方策が見つかるまで、しばらく、あそこで、過ごしていただきましょうよ。一体、ここが、どこなのか、わかって、やってるならいいけど、まあ、そうもゆかず。感情カイロが、暴走しやすく、つい、やり過ぎてしまうの。』


『さあて、ま、彼ら彼女たちには、認識出来ないですからね。ここが、『タイタン』の刑務所内、野外公開大劇場で、自分達は、ここに、収監されてる罪人に、操られてる『俳優ロボット』だなんて。まあ、やはり、作ったあなたの責任ですよ。』


『だって、あたくしの得意分野だもの。実際、まあ、迫真に迫っていて、かなり、よいことは、事実でしょう。下手に知ってると、迫力でないの。なぜだかね。トウキョウのステージのようには、行かないけど。お客様にも、受けがいい。毎回、バリヤーから、逃げられるのは、高い山が劇場のちょうど、はしっこだから、細工しにくいのよ。なんだけどな。でも、要求しても、改装や、システム更新の予算がでないんですから。もう、穴ぼこだらけよね。あたしのほうが、早く、脱出したいわ。』


『あなたは、殺人罪で、終身刑ですから、地球上で政変があって、恩赦が来るまで、平均あと、25年は、むりでしょうね。』


『ま、演出ロボットのくせに!』


『ほう、いいんですか? ぼくが、報告したら、・・・反逆行為だと、ね、したら、また、地獄牢ゆきですな。あなただって、10…回は、くだらない。』


『はあ、はあ、すいません。そこは、弱いなあ。参田看守長さま。気を付けます。』


『ま、別のロボットを、当てましょうよ。すこし、威厳が足りないが、美しさではひけはとらないから。ね。』


『じゃあ、ジョリーでゆくかなあ。』


『いいな。決まり。じゃあ、二回目の公演は、射殺の場面を、はでにしましょう。今回は、実死刑が入るから。』


『え、急に、だれ?』


『やましんですよ。』


『え、え〰️〰️〰️うそ。それは、やめてください。絶対いや! 拒否。だって、作者よ。だめよ。作者殺してどうするのよ。』


『委員会の決議です。うらみがあるひとが、まじってるんじゃないのかなあ。』


『ひどいわ。ひどい、あなた、機能停止!』


王女さまと、呼ばれた彼女は、密かに入手していた、分子分解銃を、参田にむけた。


『おい、おい、そりゃあ、やめろよな。おしまいになるぞ。あんたも。』


『ままよ。でも、ゆかせるなら、撃たないわ。』


 彼女は、作家席にいて、うたた寝していた、あほのやましんをぶったたきながらつれてゆき、隠しておいた、『超跳躍飛行』が可能な、小型船にのりこんだ。


『覚悟しなさい。死ぬまで、つきあって!』


『あいよ。』 


 小型船は、発射、即、異空間ジャンプをした。


 彼女の発明品である。


 あまりに、すばやいので、行き先を掴みにくいのだ。


『やれやれ、やっと、おさらばね。』


『あれ?ほら、あれ、『アブラシオ』じゃないか?


 本物の『火星の女王さま』が持つ、無敵の宇宙戦艦である。


『攻撃してくりか・・・・・どうかな、すごいなあ、全長8キロ以上ある。あんなのに撃たれたら、即、蒸発だね。これは、劇じゃない。』


 まっくろな、アブラシオの船体が、小さな宇宙船を保護する位置にきたようだった。


 これでは、タイタンの守備隊には、攻撃できない。


『やましんさん。保釈ですよ。』


 アブラシオから通信がきたのだ。


 『地球帝国』は折れました。自分達の作者を、拘束することは、できない。と、決しました。あすからは、また、地球の、スーパーのお買い物にもゆけますよ。


 温泉も、オッケー!ですよ。


 あ、『三女王さま』が、あなたをお茶会に誘っていますよ。すごいことですよ。』


『あいよ。しょせん、やましんは、もう、お話しのなかでしか、いきられないんだからね。まかせて。さあ、行こう、夢の都、花の地球に!』




   ・・・・・・・・・・・・・・・


 

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        めでたし、めでたし!?


 

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『地獄のさんたも金しだい』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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