第87話 3人の世界を作るには。



 放課後、校門にてふたりと待ち合わせをしていた俺。

 やはり遅れてきた俺に


「蒼汰さん、お待ちしておりました」


「蒼汰くん待ってたよ」


 とふたりは声をかけてきた。


 そしてふたりは美樹が右、左が千夏と決められているかのように俺と腕を組んできた。今までの俺なら照れもあり醜聞もあるので断りを入れていたはずだけれど、もうそんな事はしなかった。ただ、俺は交互に2人を見て微笑みかけるだけだった。


 周囲の皆は「なにあれ? 」「相楽先輩と付き合ってたんじゃ? 」「二股なの? 」等様々なことを言われていたようだけどもうきにしない。気にしていてはふたりと共にいることは出来ないと思っているのだから。ふたりの望むものを与えられないのだから。

 今日の帰りには佐伯先輩は現れなかった。こんな状態見られれば現れるかなあと思っていたんだけどね。


 そんな事を考えているのに気付いたのか美樹が


「もしかして佐伯さんを気にしていますか? 」


 と聞いてきた。なので俺は


「ああ、こんな状態を見れば現れるだろうって思ってた」


 と答えると


「あの……今日ですね。佐伯さんに私の思いぶつけちゃいました」


 そう美樹が少し困った顔で俺に言った。美樹が話しづらそうなことが分かったのか千夏が


「美樹がね「佐伯さんもう話しかけないで下さい。あなたと関わることはもうしません。あなたの影響で私と千夏ちゃんそして蒼汰くんに悪影響がでています。そんな方と私は関わりたくありません」ってクラスで思いっきり言っちゃったんだよね。美樹がこんなこと言うことって無かったからクラスの皆も唖然としていたよ。佐伯もクラスでまさかそこまで言われるとは思っていなかったんだろう。黙って離れていったよ」


 と苦笑しながらそう言った。


「それって美樹の立場大丈夫? 」


 と俺が聞くと


「私も3人で過ごしていくには周りになんと思われても良いんですから。それに蒼汰さんが頑張っているのに私達がのほほんとしているわけには行きませんよ」


 と美樹は言ってくれた。そして千夏は


「まあ、今後もいろいろとあるかもしれない。けれど3人で立ち向かえば大丈夫だろう? だからさ、蒼汰くんだけで突っ走らないでくれよ。ちゃんと私達にも話をしてくれ」


 と俺に優しく言ってくれた。


 そうやって話しながら帰る3人。今までと違い周りに見られようと気にもせず3人の世界を作ったまま帰っていったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る