第83話 家に呼ぶ。
親父からあの後言われたことがある。
親父がふたりに会いたいから土日のどちらかに家に呼んでほしいということ
それまでにふたりを大切にするという決意を固めておけということ
家に招くことについては特に問題なかった。美樹と千夏に話をし、土曜日にふたりを家に招くことがあっさりと決定した。
決意については一週間ずっと悩んだままだった。わかってはいるんだけれど今まで悩んでいたのだからあっさり受け入れたとはいかないわけで。それでも親父の言うとおりではあるんだよな。今の俺ではどっちつかずで不誠実だからとひとり困惑しているだけなのだから。ふたりのほうが覚悟を持って俺と向き合っているんだよなって。キスまでしてくるのだから。
俺を選ぶかふたりを選ぶかなんて俺には決まりきったことでふたりを選ぶしか選択する気はないわけで。
俺が悩んでいる事をふたりは多分分かっていたと思う。親父と会うことと俺がおかしいことに不安を感じていることがさすがに俺にもわかるわけで「問題ないから」と伝えても俺自身がおかしいのにふたりに上手く伝わるわけもない。
ふたりにとっては嫌な一週間だったと思う。それでも時はすぎていくわけで約束の土曜日になる。
ふたりは場所はわかるから迎えに来なくて良いと不安定な俺を気にしてか迎えを断った。仕方なく俺は家の台所でぼーっとふたりが来るのを待っていた。とりあえずふたりもお昼は食べるだろうし四人分の食事の下準備だけはしておいた。大したものは作れないので女性だしスパゲティくらいでいいかとベーコンとキノコ系で作ろうかと思っている。
そんなぼーっとした俺に声がかかる。その主は親父。
「おいおい、蒼汰。もしかして学校でもそんな感じだったんじゃないだろうな? 」
「ああ、多分そうだったんじゃないかと思う。ふたりにも心配されっぱなしだったから。本当に情けないなあと思ったよ」
「何を悩んでいる? 」
親父が心配そうに聞いてきた。
「なんなんだろうね。ふたりを考えたら親父の言うとおりだと思うし。俺にとってふたりが一番だから。でも何が邪魔しているのかいまいちわかんなくてね。なにか宙ぶらりんという感じがずっと続いてて。決意するだけだとわかってても……できないんだよなあ」
俺がそう言うと
「そうか。まあとりあえず俺はふたりと話があるからそれを横で聞いとけ。蒼汰自身もふたりの気持ちをしっかりと分かっていないといけないだろうしな」
親父はそう言って俺の向かいに座ってふたりが来るまで待つのだった。
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