第81話 悩む蒼汰。



 俺は帰ってきてすぐにすることを済ませた。親父が帰ってきても問題ないように食事の準備をし風呂もお湯を入れるだけ。あとはどうにでもなるだろう。ただ俺は食事が喉を通らないそんな感じなので部屋のベッドに寝転び物思いにふけっていた。


 考えることは美樹と千夏のこと。


 出会った当初に俺は美樹に告白され断った。それは期間限定と許嫁の問題があったからだったな。

 それにその頃の俺はどちらかというと人が苦手だった。俺を見ずに話す人ばかりだったから。俺を通して圭佑の話をするにしても俺自身は意味のない存在として扱われることが多かった。

 そして、美樹に友達になってと告白されて……俺は美樹と友達なら千夏とも友達になってほしいと伝えてそこで3人の繋がりを作ったんだ。


 それから美樹の許嫁問題が解決したら美樹が攻勢に出てきてその後に千夏が告白してきて……今に至るか。

 

 ふたりにも選ぶことができるまで待ってくれと伝えている。けれど、ふたりは待つとは言ったがなにもしないわけではなくキスまでしてきて攻勢をかけてきた。その行為は確かに浮気ではない。ふたりとも教えあっているくらいなわけで。


 でもそれは俺にとって言い訳にしかならないわけで。俺としては納得できるはずもない。こんな俺は最低だなんて昔なら毛嫌いしていただろう。だけど昔ならきっと断れただろうことが美樹と千夏にできなくなっている。許してしまっている。


 それになぜ俺がこんな状態なのを彼女たちは許す? 普通なら独り占めにしたいんじゃないか? ふたりで俺にキスしたことを伝え合うなんて普通しないことだよな……


 なぜ? なぜ? 


 美樹も千夏も失いたくないというのはわかる。そう思っている俺がいるのだから。でも拒否ができないのは? 悲しい顔をさせたくないから? それとも本当は俺が望んでいるから? 


 考えれば考えるほどわけがわからない。昔の俺とはかわってしまっている今の俺が。


 今まで俺には親父に圭佑、亜美姉ちゃんぐらいしかいなかった世界。

 それが今は美優とも繋がりができ千穂さんという困った人とも繋がった。また今では新見とも話すようになったんだなあと不思議に思う。


 そして俺の側には必ず美樹と千夏が居る。ふたりが必ず側に居る世界へと変わったんだ。そう、ふたりといることが当たり前になってしまった日々。それを考えると幸せな気持ちになる。なるんだよ。


 どうしたらいいんだよ。何を覚悟したら良いんだ! まだ俺は選べないんだよ。ふたりとも好きなんだから!

 

 こうなったらふたりから俺が離れればなんて思ってしまう。でもそれは逃げであって望んでいることでもないと思い直す。


 悩んでも悩んでも出口が見えてこない。考えれば考えるほどわからなくなっていく。




 そんなひとり悩む中ドアの方からノックの音が聞こえた後に


「蒼汰? いるか? 帰ったぞ」


 親父が俺を呼んでいた。

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