第77話 お弁当を食べながら。
人が少なく見晴らしの良い場所。ちょっと高台になっているのも見晴らしが良い要因になっているのかもしれない。こんな場所なら人が結構居ても良さそうな気がするが子供連れが多いこの公園。景色は良くても高台ということと遊ぶスペースを考えるとあまり広くない場所なので子供にはあまり良い場所ではなく人が集まらないのかもしれない。ただ俺達のようにカップルは来そうであるが。まあ、こういう静かなところよりもっと賑やかなところに行きたがる人が多いということかな。
鞄からビニールシートを取り出して敷き始めた千夏。そしてビニールシートに荷物を置き、俺にこっちへおいでと手で招く。俺はそれに誘われるがまま千夏の隣に座り込んだ。
「この公園、あまり来なかったけれどこういうところもあったんだなあ」
と俺は景色を眺めながらそんな事を言った。
「今年は紅葉の時期が遅いみたいだからいつもよりはまだまだなんだけどね。秋頃になると美樹とここにはよく来ていたんだ。休みにお弁当を持ってふたりで1日話し込んでたな」
となにかを思い出しているような表情をしながら千夏はそう言った。
「そういえば美樹との付き合いは長いのかい? 」
そういえば聞いたことなかったなと千夏に尋ねてみた。
「中学からかな? 同じクラスになってきっかけはなんだろう。とりあえず美樹がなにかしら声をかけてきてくれていつのまにかって感じかな」
それを聞いて、俺に対して積極的な美樹を思い出し、同じ様に千夏に近づいたのかなあと考えてしまい思わず笑ってしまう。
「なんだか美樹の様子が思い浮かんでしまって。思わず笑ってしまったよ」
「多分想像通りだと思うよ。美樹は変わらない。なんていうか天然で純粋で……さてとお弁当も作ってきてるし先に食べる? 一応私の手作りなんだけど」
千夏が昼食を勧めてくれたので
「千夏の手料理美味しかったもんな。千穂さん達の前で「あーん」されなければ言うことなかったんだがな……うん、ありがたく頂くよ」
あの「あーん」はとてもきつかったなと思い出しながら返事をすると
「逃げても駄目だよ。今日もしてあげるから」
千夏は笑いながらそういうのだった。
さすがにおにぎりまで「あーん」をしようとしなかったが、おかずについては自分の手で食べることが出来なかった。「私が食べさせるから取っちゃ駄目だよ」と念押しまではいる始末。でも、甲斐甲斐しく俺に食べさせようとする千夏はとても嬉しそうだったのでまあいいかと俺は全て受け入れるのだった。
「そんなに俺に食べさせるのが楽しい? 」
そう聞いてみると
「楽しいというか嬉しいかな? 尽くすって言ったら良いのかな? なにかしてあげられるっていうのが嬉しくて幸せ……って感じかな」
と微笑みながらそうつぶやく千夏。
「そう聞くと千夏はきっと良い嫁さんになるんだろうなあって思うな」
と思わず俺が呟いた言葉に千夏は
「誰にでもそう思っているわけじゃないんだから変な勘違いしないでね」
赤くなって俺にそう告げるのだった。
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