第75話 蒼汰と新見。
今日は水曜日なので昼食に新見が参加。最初の頃は緊張しているのか力が入っていたようで会話もあまり参加できずただ千夏を見つめていたという印象しかなかったけれど、なぜか今日は力が抜けているようで俺と美優をメインに会話に参加してきた。まあ、美樹と千夏にはまだまだ遠慮がちだったが。
それでも美優との関係は良好のようであり、最近は教室でたまに俺にも話しかけてくるようになったためか知り合いが増えて楽になったのかもしれない。
新見は当初から千夏にあまり話をかけない。どちらかというと千夏を観察しているような感じだ。新見としてはまずしつこくせず千夏をしっかりと見ているのかなあと俺は思った。
その新見、今日は俺と千夏をさっきからちらちらと見ていた。千夏を見ているのはわかるんだが俺が見られるのはいまいち落ち着かないわけで。俺は昼食が終わったら新見に聞いてみようかとそう考えたのだった。
先輩たちと別れ俺と新見、そして美優の3人で教室へと向かっている時に
「なあ、新見。今日はなんで俺をちらちら見ていたんだ? すごく居心地が悪かったんだが」
と俺は聞いてみた。
「あーあーバレてたのか。んー遠藤先輩が山口のことをすごく気にして見てたからな。なにかあったのかと思って……な」
千夏……日曜が気になって俺を見ていたのかなとそう考えていたところ
「蒼汰くん、はっきり言っちゃったら? どうせわかることなんだし」
と美優に言われてしまう。とりあえず千夏とデートすることは新見に伝えているんだけど……
「えーとな。今週の日曜に千夏とデートする予定なんだよ。多分それで俺を気にしているんだと思う」
と新見に伝えると
「あーこないだ話していたな……そうか、そうか。まあ仕方ない。最初のデートは譲ってやるが今後はわからない、次は俺かもしれない。そうだそう言うことだ。そう思っておこう。うん」
とぶつぶつ唱えはじめた。
新見は諦めない。俺を敵視しない。周りを気にしないと言って良いのか。
美樹と付き合っているということになっているはずなのに千夏とデートをするなんて普通ならおかしいのに俺を卑下しないのも不思議で。理由があると気付いてくれているのかそんなこと関係ないと思っているのかただ単にそこまで考えていないのかはわからないけれど。
「新見って思ってたより良いやつだよな。最初は何だこいつって思ったけど」
と俺は素直な気持ちを伝えると
「ああ……最初は俺も遠藤先輩のことでテンパってたからな。悪かったと思ってるよ。にしても山口は羨ましいよな。あの先輩ふたりから思われているんだろ? 美樹先輩と付き合ってるって聞いているけどさ。山口達3人の関係を見てるとただそれだけじゃないって感じもするし……それに遠藤先輩とのデートも先輩ふたりが認めていることだから俺がいちいちなにか言うわけにもいかないしな。まあそこは山口が話してくれるまで待っておくよ」
新見はなにかあるんじゃないかとは勘付いていたようだ。そりゃそうだよな。見るからにおかしい関係なのだから。
「今は事情があって言えないけれど、今後新見にも話すことが出来るようになるかもしれないな。俺と新見との関係が良い感じに続いていけばさ」
俺がそう言うと
「まあ、これからもよろしくお願いするよ、山口」
と新見が返してくれた。そんな会話をふたりでしていると
「なにかいつの間にか結構親しくなってない? なにかあったの? 」
と美優が気になったのか聞いてくるが、俺は逃げるように
「さてと早く戻ろうか。そろそろ昼休み終わるよ? 」
そう言って早足で教室へと向かっていった。
それは新見との関係を聞かれるのが恥ずかしかったというのがあるのかもしれない。圭佑以外で親しくする男性なんて今まで考えたことがなかったのだから。
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