第72話 男3人飯を食べながら会話する。



 今日は雨。雨の日の昼食は美樹たちとは別に食事をすることにしている。どちらかの教室に集まろうものならみんなの視線が痛くて美味しく食事を取るもできなくて。美樹は残念がったけれど他に集まる場所がないので我慢してもらっていた。




 俺は教室だとひとりで食べているのでいつものように俺の机で弁当を食べようかとしていたところに


「蒼汰、一緒に食べようぜ」


 とめずらしく圭佑が声をかけてきた。


「別にいいっちゃいいけど他の友達は? 」


 俺がそう聞くと


「蒼汰と食べるからって断ってきたよ。あっそれと新見もいいか? 」


 ほう、新見もこっちで食べるのか。まあ別に構わないので


「いいよ。週イチで一緒に食べているわけだしね」


 そう伝えると圭佑は新見に合図をしてこちらへと呼び出した。




 男3人というまあ暑苦しい昼食と相成ったわけだが。


「悪いな山口」


「いや、ひとりで食べようと3人で食べようとそう変わりはないしね」


 新見の言葉に俺はそう返事した。


「まあまあ、あんまり気にせず食べようや」


 ひとり気楽な圭佑は間を取り持つように話を持っていく。


「それで圭佑。なにか話でもあったのか? 圭佑じゃなきゃ新見か? 」


「いや話というほどのことなんてないよ。ただ、新見が週イチだけど蒼汰たちと昼食を取るんで少しは仲良くなっておきたいって言っていたから連れてきたっていうのはあるかな? 」


 圭佑は新見を心配して俺に声をかけてきたってところか。ほんと優しいやつだ。


「確かにあのメンバーだと新見の知り合いって美優くらいだよな? 中学が一緒とか聞いたな」


 美優から新見とは中学が一緒と聞いていたので俺は思い出してその事を話した。


「相楽とはそうだな。でも、そこまで仲良くしていたわけでもないからなあ」


 そう新見は言うので


「なら結構馴染むのは時間かかるかもな」


 俺は素直に思ったことを言った。


「それでも……遅くなったけど、山口ありがとな。山口が口添えしてくれたから多分みんな受け入れてくれたんだと思ってるんだ」


 素直に謝る新見。そこまで気にしなくてもいいのにと思い


「まあ今回はちゃんと新見が自分で動いた結果だからな。俺はただみんなに参加可否を聞いただけだよ」


 と俺が言うけれど


「それでも山口、ありがとう」


 新見はお礼を言ってくるのだった。




「ただなあ……蒼汰。ほんとに良かったのか? 」


 圭佑が不安そうな顔で俺に聞いてくる。圭佑は新見の気持ちを知っているのだろうか?


「えーと圭佑は新見が昼食を一緒にって言ってきた理由は知ってるわけ? 」


 俺がそう聞くと


「ああ、圭佑には全部話しているよ」


 と新見は言った。ということは圭佑は千夏が俺に気があることも知っているわけで……そうか。そういう心配なわけか。


「んー。こればかりは俺の気持ちじゃないからどうしようもないんだよな。多分新見もそのうち気づくと思うけど……圭佑。話しておいたほうが良いと思うか? 」


 俺は圭佑に聞いてみた。


「知っておいたほうが良いとは思う。言っておかないと後から蒼汰が新見にぶん殴られるような未来しかない気がする」


 そこまで言うかと思ったが……まあそういう未来も否定できないか。


「今から話す話は新見にはきつい話かもしれないけれど話しておくことにするわ。本音を言えば自分からこんな話をするって嫌なんだけど…仕方ない」


 そう言って俺は千夏が恋なのかはわからないけれど俺に好意を抱いてくれていること、今度デートすることにもなってることを説明した。デートについては美樹も了承していることも伝えておく。浮気と言われちゃたまらないから。ただし美樹との仮恋人の話はしなかった。漏れたら大変だからね。


「はぁ……まじかよ。山口よ……地獄におちてしまえ! 」


 と新見から言われてしまったが……まあこう言われても仕方ないかと黙って聞いておくことにした。




 それでも


「でも、でもさ。遠藤先輩はまだ恋かどうかわかっていないんだよな? それならわずかでも希望があるかもしれない……よな? とりあえず頑張ってみよう、うん」


 新見は前向きな言葉を発していた。そんな新見を俺は眩しく感じてしまうのだった。


 ただ、当事者でない圭佑……は新見を見て横で笑っていたけどね。




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