第63話 掻き乱される俺たち。



 亜美姉ちゃんのせいで最初からドタバタしながらも、とりあえず電車に乗り隣町へ。隣町の遊園地が今日のデートの場所らしい。

 まあ、亜美姉ちゃんと行くならそういうところが合ってるだろうなと失礼なことを考えてしまう俺。美樹は亜美姉ちゃんに押されてなのか今は静かだ。ただ、しっかりと俺から離れないように腕を組んでいた。


「美樹大丈夫? 」


 俺は心配なので声をかけてみる。


「はい大丈夫です。あそこまで元気な方とお会いするのが珍しかったので驚いただけですよ」


 美樹はそう言ってにこりと微笑みを返す。


「とりあえずはやく遊園地に行こうか。亜美姉ちゃんの相手をしながらだと日が暮れてしまうから」


「え? 蒼汰くんそんなこと言っちゃうの? そんな事言うんだったら1日蒼汰くんの引っ付き虫になっちゃうぞ」


 美樹につぶやいていたのだがしっかりと聞いていた亜美姉ちゃん。


「亜美さん、大丈夫です。蒼汰くんの引っ付き虫は私ですから。亜美さんは斎藤さんにくっついていてくださいね」


 少し落ち着いたのか亜美姉ちゃんに言い返す美樹。


「亜美姉ちゃん、もうそろそろ落ち着いたら? 」


 圭佑がそう言うと


「さすが彼女さん。もう完全に取られちゃったね」


 舌を出してそんなことを言う亜美姉ちゃん。そんな亜美姉ちゃんを見て美樹はすこししてやったりと言う顔をした? ような気がした。



 

 遊園地に入場し何をするかと言うと……

 そりゃ亜美姉ちゃんにみんなが引っ張られるという状態になるわけで。絶叫系や激しい乗り物が好きな亜美姉ちゃん。乗り物へとひとり走っていく亜美姉ちゃんをまずは圭佑が追いかけ、俺と美樹がついていく……そんな感じで遊園地を回っていた。ほんと元気だし俺達より歳上なのに実際年下だろと思うような行動で俺達をかき乱していく。


「蒼汰はもうわかっているから良いとして相楽先輩申し訳ないです」


 圭佑は美樹に謝ってきた。


「いえいえ全く問題ないですよ。私としては蒼汰さんとお出かけできるだけで十分なんですから」


 そんな圭佑の言葉に美樹はそう言葉を返す。


「亜美姉ちゃんが慌ただしいのはあるけれど美樹とふたりで出掛けるのは初めてだし緊張も出来ないくらいな状況なのはある意味良かったんじゃないかな。緊張したかはわからないけれどね」


 俺はそう言いながらも苦笑する。緊張なんてする余裕の無いそんな亜美姉ちゃんの行動。こういうことも考えていたのかなと深読みしてしまうが、いやないなと思い返してしまう俺であった。




 さて、元々絶叫系とか高いところが苦手な俺。4つ5つ乗り終わったくらいだろうか、流石に気持ち悪くなってきた。


「みんなごめん。流石に気持ち悪い……俺こういうの苦手なんだよ」


 とりあえずみんなにギブアップと声をかける。


「確かに蒼汰は苦手だったよなあ。大丈夫か? 」


「いや大丈夫じゃない……亜美姉ちゃんも俺が苦手なこと知ってるだろうに。手加減ってものを知らないなぁ」


 圭佑が心配してくれるものの俺は亜美姉ちゃんにささやかながらも文句を言った。


「いやいや久々に来たから……調子に乗っちゃった。蒼汰くんごめんね」


 すると亜美姉ちゃんが素直に謝ってきた。流石に気持ち悪くなった俺に気を悪くしたのだろうか? 


「ちょっと俺、少しベンチで横になって休んでおくよ。みんなは遊んできて」


 俺がそう言うと


「私は蒼汰さんの側にいて見てますのでおふたりで行ってらしていいですよ」


 と美樹が俺の看病で残ると言ってくれる。


「わかったよ。亜美姉ちゃんをここにおいてたら蒼汰も休めないだろうしね」


 圭佑が苦笑しながらそう言うと


「みんなして私のこと馬鹿にしてない? これでも一応年上……いやいや今日は皆と同じ歳になってるんだった。危ない危ない」


 亜美姉ちゃんはひとりぶつぶつとなにか言い続けていたのだった。




 ふたりと別れ近くのベンチへと向かう。すると先に美樹がベンチの右端へと寄せて座り膝をポンポンと叩いて俺を呼ぶ。


「え? なにそれ? 」


 やばい、あれなにかする気だなと俺が美樹に確認すると


「決まってるじゃないですか。看病の時は膝枕で決まりです。男のロマンのひとつとか聞きましたけど? 」


 なんて言ってくる。いや嬉しいんだけどこんなみんなが見てる場所って恥ずかしくないかい? そう思っている俺に


「さっはやく来てくださいね」


 膝の上に頭を乗せるよう俺を急かしてくるのだった。

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