第62話 ダブルデートの待ち合わせ場所にて。



 本日は日曜日なり。


 今日は圭佑から誘われたダブルデートの日。待ち合わせは駅前に9時ということで俺は8時半頃にやってきた。美樹には前回待ち合わせしたときのようにあまりにも早く来るなよと注意していたせいか俺より少し後に駅にやって来た。

 そして懐く猫のように俺の側に近寄ってくる美樹。

 圭佑たちは多分亜美姉ちゃんがいるから時間ギリギリだろうと俺と美樹はベンチに座りゆっくりと待つことにする。


「そういえばこうやってふたりでいるって初めてですね」


 確かに美樹の言うとおりふたりきりは初めてかもしれない。いつも俺と美樹、そして千夏3人でいることが当たり前だったから。


「そうだね。いつもは3人だからなあ」


 俺は思わず千夏は何をしているんだろうなんて考えてしまう。すると


「千夏ちゃんのこと考えてますね? 」


 美樹はそんな俺の考えを見通したように話しかけてくる。ごまかしてもしょうがないと俺は


「なんか当たり前にいつも3人でいたからね。だからかな? いないとすごく違和感を感じてね」


 素直にそう口にした。


「ちょっと妬けちゃいますね。私と居るんですから別の人のことを考えてほしくないって気持ちがありますけれど、私も千夏ちゃんのことを考えてしまいますからなんとも言えませんね」


 そう言って美樹は笑う。


「でも美樹のこともちゃんと考えてるんだけどな。そういえば……遅くなってごめん。美樹の服装似合ってるよ」


 こういうことに慣れていない俺は照れながらも美樹に伝える。


「ありがとうございます。蒼汰さんに褒めてもらえることが一番嬉しいですね」


 そう言って美樹はいつの間にか自分の手で俺の手を捕まえる。そう手を繋いできたってことだ。腕を組まれたことはあるが手をつなぐことはこれが初めて。ある意味腕組みより手を繋ぐ事のほうが照れる気がするのは俺の気の所為? そんな事を思ってしまう俺だったが、ニコニコと嬉しそうにしている美樹を見ていると照れもどうでもいいやと思えてしまうほど見惚れてしまうのだった。




 しばらくふたりで待っていると俺の後ろから抱きついてきた人物がいた。もうまるわかりなんだが亜美姉ちゃんだ。というか圭佑と付き合ってるんだから俺に抱きつくのはもう止めないか? と言いたい気分だ。


「はぁ……亜美姉ちゃん、圭佑もおはよう。亜美姉ちゃん、もうひとり身じゃないんだから俺に抱きつくの止めなよ。圭佑がいるんだから」


「おっひさしぶりー。蒼汰くん。ん? 蒼汰くんなら問題ないでしょ? だって私の可愛い弟だもん」


「もう亜美姉ちゃんは……。蒼汰、それと相楽先輩ごめんね。もう亜美姉ちゃんはこんなものだと思って下さい」


 俺はふたりに挨拶を交わす。亜美姉ちゃんはいつもどおり、圭佑はもう諦め気味だ。美樹は……ちょっと驚いてる感じで言葉が出ないって感じだ。


「あっあなたが相楽さんね。私のことは亜美って呼んでね。ふたりは私のこと亜美姉ちゃんって呼ぶけどね。ああ、歳のことは気にしないで呼び捨てでいいからというか歳なんて出さないで。歳思い出したくないから。私の歳はみんなと一緒ということで行きましょー」


 俺に抱きついたまま一方的に話す亜美姉ちゃんに美樹はちょっと唖然としている。普段の美樹なら他の女性が俺に抱きつけばきっと頬を膨らますはずなのだが今日はそんな余裕もないようで、それでも


「相楽 美樹です。よろしければ美樹と呼んで下さい。今日はよろしくお願いします。斎藤さんもよろしくお願いしますね」


 なんとかふたりへ挨拶をすることが出来たようだ。


「美樹、亜美姉ちゃんはこんな人だ。大変だろうけど相手頑張ってくれ」


 俺は美樹にそう言うと聞こえてしまったのか亜美姉ちゃんは


「冷たいなあ蒼汰くんは。昔は可愛かったのに。いや今でも可愛いぞ」


 なんて事を言っている。


「わかったから亜美姉ちゃん……そろそろ離れて」


「えーもう? 」


 離れて欲しいと願ってもすぐに受け入れない亜美姉ちゃん。




「圭佑……お前の恋人だよな? 」


 俺は圭佑にジト目でそういうが


「無理だ。諦めてくれ」


 どうも圭佑には止められないらしい。 

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