第64話 美樹さん、してしまいました。



 俺は照れながらも美樹の膝?いや太ももに頭を乗せてベンチへと横になる。スカート越しに感じる柔らかさに俺は安心した気持ちになる。いや初めて膝枕なんてされたけれどこれは病みつきになる心地よさだねと横になりながらそんな事を思ってしまう。

 そして俺は横になりながらも上を見上げ美樹の顔を見ていた。美樹は心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。


「私の膝枕はいかがですか? 」


 と俺に聞いてくる美樹。


「天国にいるような心地よさだね、気持ちいいよ」


 俺は照れながらも美樹にそう返事をしていた。


「私も幸せですよ。膝枕が男のロマンと聞きていましたけれど、これは女性にとっても至福の時ですね。こうやって好きな人の頭を乗せて触れ合うことができて。そしてその方の顔を見ていられるなんて。なんで女性のロマンにはならないのでしょう? 不思議です」


 美樹は不思議そうにそんな事を言いながら俺の顔を見続けていた。

 





 心地よさそうにいつのまにか眠ってしまった蒼汰さん。亜美さんに付き合って相当疲れたんでしょう。絶叫系が苦手だと言っていましたから。

 その疲れでいつの間にか眠ってしまった蒼汰さんの顔を私、美樹は幸せな気持ちで見続けていました。

 蒼汰さんとのふたりでの初デート。亜美さんのおかげでてんてこ舞いですが私は別に何がしたいというわけでもありませんですし問題は無いですね。私としてはただ蒼汰さんと一緒に時間を過ごせることで幸せなんですから。

 ああ、蒼汰さんの顔をこうやって見ているだけでなんでこんなに幸せになれるんでしょうね。不思議です。


 私は蒼汰さんを起こさないようなるべく動かずただ蒼汰さんを見つめていました。今思えば告白して断られた時に比べ蒼汰さんのことをもっと好きになっているようです。あの時の気持ちが好きという気持ちだと思っていたのですが、もっとすごい好きがあるのですねと実感しています。それも一緒に過ごすことが出来るようになったからでしょうか? 欲っていうのもあるのかもしれませんね。腕を組んだり、手を繋いだり……今考えれば恥ずかしいことを積極的に出来たものです。でももっといろんなことを一緒にしていきたいです。これからも。


 そんな事を考えていた私。ずっと見つめていた蒼汰さんのある部分に目が行く。そしていつの間にか私はそれに見入ってしまう。出来たら良いなと。出来たら良いなと。

 吸い寄せられるように蒼汰さんの顔に近づいてしまう。そして多分無意識のうちに……


 私はキスをしていました。


 私は慌てて顔を離します。そして蒼汰さんが起きてないか確認してしまいます。あぅ、思わずしてしまいました。ですが無意識にしてしまった私を責められません。だって目の前に蒼汰さんの顔があるんですよ? と言い訳を心の中でしてしまう私。




 とりあえず蒼汰さんが起きていないとわかり少し安心しました。それでも蒼汰さんが起きた時にキスしたことを伝えないとやっぱりいけないのでしょうか……勝手にしてしまった私を怒らないでしょうか? と私は蒼汰さんが起きるまでその事でずっと悩み続けたのでした。


 

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