第48話 私は恋人です?



 やっと先生の話が終わりホームルームが終了した。やっと帰れると俺は鞄を持ち美樹と千夏の待つ校門へと向かおうとする。ふたりにはいつも待たせて悪いと思いつつ。そんな俺に


「最近話す機会がないなあ。もう帰りか? 」


 そう声をかけてきたのは圭佑だ。


「悪いな。いつも帰りは先輩たちを待たせてしまっているからな。慌ててしまうのは勘弁してくれ」


 俺は苦笑しつつ圭佑に答える。


「そんなこと言って昼休みもだろうが。まあ今度ゆっくり時間作ってくれよ。久々に話しようぜ」


「了解、俺も圭佑と亜美姉ちゃんのことも聞きたいしな。じゃ」


 俺はからかうようにそう言い教室を出ていった。




 校門まで着いたけれど……今日はあんまり雰囲気がよろしくない。どうしたんだろうと美樹と千夏に声をかける。


「おまたせ。美樹、千夏」


「美樹に千夏だと? ふたりを呼び捨てだと? なぜお前が。後輩だろうに」


 ふたりに声をかけたのになぜかクラスメイトだったか男子生徒が声を上げる。相手にすると疲れそうな気がしたので思わず無視して


「ふたりともどうした? なにか雰囲気悪いんだけど」


 そうふたりに問いかけた。


「おい無視するな! 」


 まだ男子生徒がなにか言っているけれど知らん。睨まれても知らん。


「蒼汰くんお待ちしてました。えっと蒼汰くんも以前お会いしたことあると思うんですがクラスメイトの佐伯くんなんですけどしつこくて困っています」


「流石に見ていられなくて私も間に入ろうとしたんだが……言うことを聞いてくれないんだ。佐伯くんは」


 ふむ。なにしてんだろ? えっと佐伯先輩でしたね。聞いてやっと名前を思い出したよ。ふたりの話を聞いたけどよくわからん。なにがしつこい? また告白してるとかか? 


「えっと美樹。なにがしつこいの? 佐伯先輩だっけ? 」


 俺は美樹に尋ねてみる。


「また相楽さんを呼び捨てにして。それより俺には話を聞かないのか? 」


 どうも俺が美樹と千夏を呼び捨てにしているせいかえらく興奮している佐伯先輩。無視したせいもあるか。それでも知らん。


「えっとですね。佐伯さんなんですけど以前から告白に関しては断っているんですが今日は一度でいいからデートして欲しいと言ってこられまして……断っているのですが聞き入れてくれません」


 美樹が理由を話してくれるが


「付き合ってほしいではなくせめて一度デートして欲しいと頼んでいるだけだ」


 佐伯先輩の答えの意味がわからない。美樹嫌がっているだろうに。なんなのこの人?


「美樹が断っているのに聞き入れてくれなくてね。一度だけだから良いだろと……それでも美樹は嫌だと言ってるのに聞きやしない」


 千夏がそういうものの


「いや相楽さんは嫌とは言ってないだろ? 断っているだけだ」


 佐伯先輩はそう答える。それって嫌だって言われているもんでしょうに。この人新見に似ているのかもな。猪突猛進ってやつか。


「いえ佐伯さん。申し訳ないですが私は嫌です。蒼汰さんとしかデートはしたくありません。それにまだちゃんとしたデートさえしたことがないのに佐伯さんと初デートなんてできるわけないじゃないですか? ふたりきりの初デートは蒼汰さんとするんです。そういえばこの前3人でスマホを買いにいった時のことはデートに入るんでしょうか? ちょっと疑問ですね」


 最後の方の言葉はなぜ今話したのかよくわからないが美樹としても嫌だとはっきり言ってくれた。これなら佐伯先輩も納得してくれない……かなあと願いを込めて佐伯先輩を見てみると


「だったらそこの後輩と初デートしたらその後デート出来るよね? 初デートじゃないなら問題ないだろ? 」


 だから嫌だって、俺以外とデートしたくないって最初に美樹は言っているでしょうに。いやさっきから佐伯先輩はわざと大事なところはスルーして誤魔化そうとしているのかもしれないな。はぁ面倒くさいなあこの人。


「えーとどうしたら諦めてくれるんでしょう? 」


 美樹は困惑した顔をして佐伯先輩に尋ねてみるが


「ん? 諦める? そんなことできるわけないよ。そう簡単に相楽さんを諦められない。好きな人を諦められないよ」


 いや気持ちはわかるんだが相手の気持ちも考えろよと。嫌がってるのにこれはないわ。仕方ないか。俺は間に入り


「悪いけどさ。美樹は俺のだから手を出さないでほしいんだけど。流石に佐伯先輩も人の相手に手を出したりはしないでしょ? 」


 そう言うと佐伯先輩は顔色を真っ青にして


「う……嘘だ。相楽さんは今まで一言もそういう事を言わなかったぞ。急にお前から言われても信用なんてできるわけ無いだろ」


 佐伯先輩は俺にそう言い返してくる。まあそんな反応にはなるだろうなあ。美樹は俺とまだデートしていないって言っちゃったし。でもこれしかうまい方法が思い浮かばなかったんだよなあ。俺が少し悩んでいると


「そうです。私は蒼汰さんの恋人です。なので絶対無理ですから諦めて下さい」


 そう言いながら美樹は顔を真赤にしながらも満面の笑みを浮かべ俺の腕に抱きついてきた。うわっはっきり恋人って言っちゃったよ……俺わざと濁して話していたんだけどなあ。そういえばまだ手をつないだりとかもしたことなかったんだよな。いきなり抱きつきかよ。そんな事を思いながら千夏を見てみるととても不満そうな顔をしていた。だけど仕方ないでしょ、佐伯先輩をどうにかしないと。だから千夏我慢して。


 それを見た佐伯先輩は悔しい顔をしながらも


「くそっ仕方ないか。今日は引き下がるよ。じゃ」


 そう捨て台詞を残して帰っていった。




 えっ今日は?ってことは……これからも佐伯先輩を相手にしないといけないのか。それを考えると嫌な気分になったが、それよりもニコニコして腕に抱きついてきている美樹ととても不満顔な千夏を見てさてこの後どうするかと悩むことを優先するのだった。

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