第46話 勉強会に誘われます。



 俺と美優は先輩ふたりを待たせているため、駆け足で校門まで向かった。


「ふたりとも待たせてごめん」


「姉さん、千夏先輩お待たせしてごめんなさい」


 到着してすぐに俺らは揃って美樹と千夏にお詫びした。


「そんなに慌てなくても大丈夫です。別に気にしていませんから」


「私も特に気にしてないよ。ただいつもより時間がかかったようだが、もしかして何かあったのかい? 」


 待つことについては気にしていないものの千夏は時間がかかった理由が気にかかったらしい。


「別に大した事はなかったよ」


 俺はそう言うけれど、揉めた理由を知らない美優は


「蒼汰くん、クラスの人とちょっと揉めましてね。それで時間掛かっちゃいまして」


 遅れた理由を話してしまった美優を俺はジト目で見てしまう。黙っておこうと思ったのになあ。


「もしかして新見くん? 私のことでかな? 」


 千夏は不安そうに俺に尋ねる。


「美優……理由を知らないから仕方ないか。新見が俺に頼み事をしてきたんだけど、納得できないこと言ってきたからちょっと揉めただけ。大した事無いから千夏は気にしなくていいよ」


 俺がそう言うものの


「蒼汰くん、なにかあったらちゃんと言ってくれよ。蒼汰くんに迷惑はかけたくないからね」


 やはり気になってしまうのだろう。千夏はきちんと伝えて欲しいと言ってきた。


「別に千夏のことでなにかあったとしても迷惑じゃないから。気にしないで」


 そう伝えるが、ちょっと落ち込んだ感じの千夏。いつもきりっとした感じの千夏がなにか弱々しく見えるのが気に入らない。だから俺は千夏に近づいて


「千夏、元気の出ない時は飴ちゃんでも舐めて」


 そう言って飴玉を渡す。飴玉を受け取り口に入れた千夏を確認すると俺は


「弱々しい千夏を見るのは初めてだよなあ。こんなんで元気になるとは思わないけど」


 そう言いながら千夏の頭を撫でてやった。頭を撫でられた千夏は顔を真赤にして無言になってしまう。


「どちらが先輩だかわからない構図ですね。すごく羨ましいですが……今日は千夏ちゃんのためにおとなしくしておきます」


 美樹は我慢するような素振りをしてそう言った。


「はぁ……私が何も考えず話してしまったのが悪いわけだけど……蒼汰くんやっぱり大変だわね」


 美優は呆れたように俺達を見ているのだった。




 しばらくしてやっとみんなで帰りだす。今日は帰りに新見の件でいろいろあったせいか気が紛れているようで美優も落ち着いているようだった。


「そういえば2週間後にはテストがありますね。蒼汰さんは勉強進んでいますか? 」


 美樹が俺に尋ねてくる。


「まあ、毎日少しずつだけど勉強はしているよ。ただ、成績が良いかと言われると……」


 俺は苦笑しながら美樹に言った。


「でしたら週末私の家で勉強会をしませんか? 蒼汰さんはもう私の家族と顔見知りですし緊張しないと思いますから」


「それは良いかもな。私も美樹も居るわけだしわからない所があれば聞いてくれたら良いし。それによかったら美優ちゃんも一緒にしたら良いと思うぞ」


 ふたりは勉強会に誘ってきた。


「私は普段から姉さんとよく一緒に勉強をしているから問題ないですよ? 」


 美優は参加するようだ。ちなみに先輩ふたりは頭が良いとのこと。ふたりで学年順位1位と2位を独占らしい。ただ、驚いたのが1位は美樹ではなく千夏ということだった。それが不満だったのか千夏に「なぜそんなに驚く? 」と突っ込まれたりしてしまった。

 まあ、実際はほんの少しの差ではあるらしい。だから、ふたりに教えてもらう時間は確かに有意義かもしれないと


「わかったよ。折角の機会だしお邪魔させてもらうから」


 俺は了承を伝えると、そんな俺を見て美樹は


「休日も蒼汰さんと一緒に居られるのですね。幸せです」


 そんな事を呟くのであった。




 

 ちなみに美優はそんな姉さんを見て


「ほんとに蒼汰くんのことになるとポンコツですね」


 とみんなに聞こえない声で呟いていたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る