番外編-04 温かな家族。
山口くんの胸を借りて泣いていた私、美優でしたが、落ち着いてくると私はなにをしているんだろう……なんて今更だけど思ってしまい、
「馬鹿山口くん。なんで圭佑くんに幼馴染がいるって教えてくれなかったのよ? 」
と思わず文句を言って山口くんから離れました。
「あー。もしかして亜美姉ちゃんと会ったのか。んー、相楽って圭佑のこと聞きに来る割に何もしないから……亜美姉ちゃんと学校生活で会うこともないし今は必要ないかなって思ってた。伝えないことで何かあったのならごめんな」
「そういうことですか。確かに奥手だったものね、私。でも今日いろいろとあってね。ふたりが一緒にいるところを見たのよ。そうしたら……見てわかっちゃったのよ。無理だってね。学校と全然違うんだもの、圭佑くん」
「……」
「それに言われたしね。亜美さんに」
「ん? なんて? 」
「私は圭佑くんが好きだって」
「は? そうだったの? 」
山口くんは驚いている。山口くんも知らなかったのでしょうね。
「まあね。ふたりの気持ちがわかってしまったのもねぇ……さすがにね。まあそんなわけでこんな状態なわけよ」
「そっか……」
「はぁごめんね。でも思いっきり泣かせてもらって山口くんに話を聞いてもらったからかしら。少しスッキリしたわ」
「少しでも役に立ったならよかったよ。こういうの俺には何も出来ないからな」
ちょっと苦笑いな山口くん。
「女性に慣れてないのもあるしね」
私はそう冗談を言って笑います。
「まあ否定はしないし、いや出来ないが正しいか? 」
そう言って山口くんも笑ってくれました。
「送っていこうか? 」
いつもと違い気を使ってくれる山口くん。
「いえいいわ。一緒にいるところを見られると姉さんに睨まれて、根掘り葉掘り聞かれそうだし……」
山口くんはそんな姉さんを想像したのかぞっとしたような顔になったような気がする。
「うん、止めといたほうが良いな。うん」
すんなり受け入れた山口くん。そんなことじゃあっという間に姉さんのお尻に敷かれそうですね。
さて、別れて家の方角へ向かおうとしたところ、山口くんに「待って」と呼び止められました。
「そうだ。これやるよ」
そう言って渡されたのは飴玉でした。
「元気の素、飴ちゃん舐めて元気出せよ」
と一言残し、山口くんは家へと帰っていくのでした。
山口くんと別れ家に帰ると玄関前でお母様と姉さんが待っていました。
「お帰り、美優」
「お帰りなさい、美優ちゃん」
「ただいまです。でもなんでふたり揃ってここに? 」
私は驚いてそう尋ねます。
「蒼汰くんから連絡があってね。家族ふたりで美優の帰宅を迎えてあげて下さいですって」
山口くんが? そういう気配りまでしてくれたの? と驚いてしまいました。
「というより、お母様。山口くんを蒼汰くんって……そんなに仲良くなられたのですか? 」
「うん、いい子だったわよ、蒼汰くん」
お母様はウインクをしながら私にそう言います。
「でも蒼汰くんって呼んだら美樹に睨まれてね。怖かったわ」
「お母様、止めて下さい。恥ずかしいじゃないですか」
姉さんは顔を真赤にしてお母様に文句を言っています。
「美優、とりあえず近くにおいでなさい」
そう言ってお母様は私を呼びます。私が近づくとお母様は手を広げて私を抱きしめました。そして、その横から姉さんも抱きしめてきました。
「理由は聞かないわ。聞かないでやってほしいって蒼汰くんにも言われたしね。とりあえずお疲れ様。私の可愛い娘、美優」
「おかえり、私の可愛い妹の美優ちゃん。お疲れ様です」
そんな優しい言葉をくれたふたりに抱きしめられて私は思わず泣いてしまうのでした。
温かい家族ふたりに包まれて。
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