番外編-03 わかっちゃいました。



 圭佑くんが来るまでの間、私、美優と亜美さんはそれ以上の会話はなく、そして私はただ混乱しているだけでした。


 そうしているうちに圭佑くんが戻ってきて


「オレンジジュースしか無かったけどどうぞ」


 圭佑くんはオレンジジュースの入ったコップを私に渡してくれました。


「ありがとう」


 私はそうお礼を返すしか出来ません。


 亜美さんは圭佑くんが持つお盆からコップを取り「いただき~」と叫んでいます。それを見ている圭佑くん、優しそうな眼をして仕方ないなと言っているようなそんな顔でした。


 ここに来た理由、こんな理由で良いのかと思うけれどもうお邪魔しちゃったのでこれを言うしかなくて。山口くんのことを色々聞きたいと説明したところ、圭佑くんと亜美さんふたりで一緒に山口くんのことを話してくれました。


 そんなふたりを見て……わかってしまいました。私じゃ無理なんだって。


 私は悲しい気持ちを我慢するので精一杯になってしまい、次第にふたりが話す山口くんの話題が耳に聞こえてこなくなりました。

 涙が溢れそうになってきます。告白さえしていないのに終わってしまうなんて。


 でも、無理だとわかってしまいました。


 もう我慢できなくなった私は、熱心に話してくれるふたりに


「ごめん。用事を思い出したので帰ります。本当にごめんなさい」


 そう言って玄関のほうへ駆けていくのでした。






「圭ちゃんはここに居て、私が行ってくる」


 急に飛び出していった相楽さん。私、亜美がなにか嫌な思いをさせたのではと思い圭ちゃんには待っててもらい相楽さんを追いかけた。


「待って、相楽さん」


 私は相楽さんを呼び止める。振り向いた相楽さんは涙を流していた。私にはわからなかった。そんな涙を流す話題をした覚えもなかったから。蒼汰くんの話をしただけだから。


「ごめんなさい、亜美さん。ふたりをみていると駄目でした。わかっちゃいました。圭佑くん、学校とは違うんですよ。亜美さんを見る目が顔が、他の方を見る時と違うんです。流石にそれを見たら圭佑くんが誰を思っているのかわかります。だから我慢できませんでした。ごめんなさい。もう涙止まりません」


 そう言って涙を流しながらこちらを見る相楽さん。私にはよくわからないものを見てしまっていたようで。


「多分、亜美さんはいつもみている圭佑くんだと思います。でも、私が見たことのない圭佑くん。だから亜美さんにはわからないんだと思います。亜美さん、好きなら早く捕まえないと居なくなりますよ。圭佑くんかっこいいから」


 そう言って、相楽さんは玄関へと、そして靴を履き走って帰って行く。


 


 そして私は相楽さんの言葉を聞いてただただ困惑して動くことができなくなっていた。

 





 私、美優はとにかく走って走って家へと向かいました。早く家に帰って部屋にこもりたい。泣きつくしてしまいたい。

 そんな考えを持って向かっていたからか曲がり角で人とぶつかってしまいました。


 向こうは歩いていたからでしょうか? 上手くバランスを取り私からの衝撃を上手くかわして抱きとめてくれました。


「ごめんなさい」


 そう言って顔を上げると相手は山口くんでした。なんでこんなところに……


「なんだ、相楽か。いきなり突撃してきたからびっくりしたぞ。ちょうど今お前の家からの帰りでね。歩いてたらドーーーンだ」


 そんな事を言い、少し笑う山口くん。

 そんな顔を見ていると気が抜けてしまったからか涙が溢れてきてしまいました。


「おいおい、どうした? んー。よくわかんないが、泣きたいなら泣け。泣け泣け」


 私の頭を撫でながらそう言う山口くん。




「この、馬鹿山口くん」


 そんなことを言ってしまうも、私はただ山口くんの胸を借りて泣き続けてしまうのでした。

 

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