番外編-05 食べてあげるね。
相楽さんが帰ってしまった後も私、亜美はしばらく動くことが出来なかった。相楽さんに対して申し訳ない気持ちともしかすると圭ちゃんが私を好きかもしれないという嬉しい気持ちで頭の中がこんがらがってどうしたら良いかわからなくなっているそんな私。
それでも相楽さんから放たれた「好きなら早く捕まえないと居なくなりますよ」という言葉が、圭ちゃんを渡したくないという気持ちを強くさせていく。
それがいつもの私を思い出させる。私らしくないなと。いくならガツンと行っちゃわないとって。
部屋に戻り、圭ちゃんに
「ごめん、相楽さん帰っちゃった」
帰ったことだけを伝えた。私に放たれた言葉は隠してしまって。
「そっか。よくわからないけど、学校に行った時にでも聞いておくよ。もしかすると嫌な思いさせたかもしれないし」
圭ちゃんは心配そうにそう言った。
心配する優しい圭ちゃんだけど、なぜか他の女の子を心配する圭ちゃんを見てすこしイライラ。だから私は
「圭ちゃーーーーん」
そう言って圭ちゃんの背中に抱きついた。
「亜美姉ちゃん、いきなりどうしたの? 」
圭ちゃんはいきなりだったからなのかすこし驚いている。よく私から抱きついたりしてるのにね。
「はぁ」
相楽さんとの会話以降どうしても圭ちゃんに対しての気持ちが溢れちゃってる。おもわずため息出ちゃった私。
「ため息なんてついちゃっていつもの亜美姉ちゃんらしくないね。ほんとにどうしたの? 」
圭ちゃんは心配そうに私に声をかけた。もうこうなったらいつもの私らしく行っちゃえと
「圭ちゃん、食べちゃっていい? 」
そんなことを呟いてみる。
「ん? 何を食べるの? ここに食べ物なんて無いよ? 」
圭ちゃん意味分かんないだろうね。
「食べるのは圭ちゃん」
そう言って圭ちゃんに軽いキスをする。
「ん? んん!? 亜美姉ちゃんどうしたの!? 」
圭ちゃんは驚いて大きな声を上げる。そりゃそうだよね。いきなりキスするんだもの。
「さっき話したよね。告白された時にある人の顔が思い浮かんだって。好きな人がいるって。あれ、圭ちゃんのことだよ」
私は素直に圭ちゃんに思いを伝える。
「……」
圭ちゃんは無言のままだ。
ちょっと気不味い雰囲気が流れてしまった。思わず伝えたけれど振られたとしてもしょうがないかなって思ってる。私が圭ちゃんが好きだと気付いたの最近だしね。ただ、思いは昔から一緒にいた分大きいと思ってる。相楽さんの言葉に後押しされちゃった感じあるけれど、多分逃せば今後機会はなかなかないかなあなんて思ったりしてた。4つも年上だから躊躇しちゃう気もしたりして。だからいいのだ、今で。
「えっと……」
圭ちゃんが話し出す。
「俺も亜美姉ちゃんのことが好きだよ」
圭ちゃんが嬉しい言葉を私にくれた。
「俺、亜美姉ちゃんが好きなの蒼汰だと思っていたから。ずっと我慢してたんだよ? それをいきなりこんな告白してくるなんて……それに亜美姉ちゃんらしいね。食べていいってさ。どうぞ食べてくださいな」
圭ちゃんはそう言って笑ってくれる。この笑顔、学校では見せないのかな? 私だけに見せてくれているのかな? なんて考えてしまう私。
そして、振られずに済んだ。幼馴染から恋人へ。これからもずっといられると思うととても嬉しくて私は圭ちゃんにまたキスをしてしまう。
「これからずっと食べてあげるね、圭ちゃん」
そう言って私も圭ちゃんに微笑みをかえすのでした。
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