番外編-01 圭佑と亜美姉ちゃん。



ドスン ふにゃん


 いつものように体に重みがかかる。まあ、それがなにかはもうわかっているんだけど。


 隣に住む4つ年上の幼馴染、それは亜美姉ちゃん。毎朝俺にダイビング。


 ぶっちゃけこれは俺の1日の活力だったりする。好きな人にくっつかれて喜ばない男は居ないだろ?


「おはよう、亜美姉ちゃん」


 俺、圭佑はいつものように目を覚まして挨拶した。そんな俺に


「ほんと私が起こさないとだめな子だよね、圭ちゃん」


 そう言って俺の上でニコニコ笑顔の亜美姉ちゃん。こんな子供っぽいところも俺は好きで。


「今日は休みなのにこんなに早くどうしたの? 」


「んー。暇だったから」


 亜美姉ちゃんは暇だったようです。


「休日一緒に出かける人とかいないの? 」


 俺はそんな事を言ってみる。


「んー。出かけようと思えばできる友達いるけどね。でも、今日はいいかなあ」


「彼氏は? 」


「はははっいるわけないじゃん。いじめるなあ、圭ちゃんは」


 少し苦笑いをしながらそんな事を言う。だけど、俺の場合それを聞いて安心するんだけどね。


「圭ちゃんこそ彼女とか居ないわけ? 今更だけどかっこいいのに全然そういうの見ないよね? 」


 珍しく彼女の話題なんてだしてきた。


「んー。好きな人いるからね。その人じゃないと付き合う気ないし」


 すこし緊張しながらそんなことを返す。やっぱり好きな人に向けてこういう言葉を言うのは恥ずかしいもんだな。


「えー好きな人いるの? 誰? 誰? 」


 すごい勢いで俺に問いただそうとしてくるけど


「言うわけ無いだろ。ほらほら、上から降りて」


 そう言って話を逸らそうと亜美姉ちゃんを上から下ろそうとした。


「むー。わかったわよ」


 素直に降りてくれた亜美姉ちゃん。話も逸らせたし……ちょっとむすっとした可愛い顔も見れたことでびしっと起きますか。




 リビングにふたりで降り、俺は朝食が準備してあるテーブルへと座る。うちの両親は休日であってもほとんど休みがないようで大概仕事に行かなきゃならないようで。今日もふたりとも仕事のようだ。


 ちなみに朝食は2人分テーブルに用意されている。もうひとり分は亜美姉ちゃんのものだ。うちの母ちゃんももう慣れたもので、来ることがわかっているからしっかりと用意してくれちゃってたりする。ほんといつもありがとう、母さん。


 横並びに座り朝食をとる。なぜ、横並びか? 両親がいる場合に対面は両親が座るからだ。なので、この座り方がデフォルトなわけで。


 さて、食べますか。ふたり揃って


「「いただきます」」


 いつもの朝、いつもの風景だ。




「そういえば蒼汰だけど相楽先輩と付き合うかもしれないよ? 」


 いつも聞かれる話題なだけに今日は俺から話題を出した。


「えっそうなの? 羨ましいなあ。彼女できるかもなんだ」


 ん? 俺が思っていた反応となんか違う気がした。


「……。亜美姉ちゃん、もっと悲しだり叫んだりするかと思った」


「んー。好きだけど、何ていうのかなあ。蒼汰くんを好きな気持ちは恋愛とは違うんだなあってなんかわかった気がして。そう、どっちかというと弟として? だから、蒼汰くんに彼女ができるかもって聞いて逆に嬉しくなっちゃってる。抱きつきたい……」


抱きつくポーズを目の前でしている亜美姉ちゃん。


「ほーそういうことだったんだ。俺にいろいろと聞きに来るからてっきり恋愛感情で好きなのかと思ってたよ、というか抱きつきたいのはかわらないわけね」


 俺はこの会話に安心していることを表情には出さないようにして返答した。


「抱きつきたいのはかわんないわよ? んー。三日前だったっけ、一昨日だったかな? 大学で告白されたのよ。でね、断ったことは断ったんだけど告白された時にわかったのよ」


 亜美姉ちゃんは俺を焦らせる話をし始める。待て待て、告白されたとか聞いてないって。


「それで? 」


「その時にね。蒼汰くんじゃなくて、別のある人の顔が浮かんだわけよ。それで……ああっそうだったのかぁって」


「は? 誰それ? 浮かんだのって? 」


 俺は慌てて聞き返す。


「言うわけ無いじゃん。まあ、それで誰が好きかわかってしまったわけで。告白されるのなんて初めてだったからね、私。告白してくれた人には悪かったけど、私が理解できたっていうか」


「悪い、好きな人のことなんて簡単には言えないよね。俺も言えなかったわけだし。そっかぁ、亜美姉ちゃんは好きな人を自覚したわけか」




「そうだね。やっとわかったって感じかな? 」


 そう言って笑う亜美姉ちゃんはとても可愛かったのだった。

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