第34話 昼食で一息。



 「大事な話も終わったことだし、そろそろみなさんのところに行きましょうか? 」


「そうですね」


 俺は千穂さんにそう返事を返すと


「もうすぐお昼ですからみなさんの元に行きましたら一緒に昼食にしましょうね」


 千穂さんはそう言いながら席を立ち、俺を伴ってリビングへと向かった。




「終わりました。美樹先輩、遠藤先輩」


 リビングに着くとすぐ俺は千穂さんと話が終わったことをふたりに伝えた。


「おかえり、山口くん」


「おかえりなさい、蒼汰さん。何事もなかったですか? 」


 遠藤先輩は軽い感じだったが美樹先輩はとても心配してくれていたようだ。


「はい、無事にお話は済みましたよ。許嫁は解消してもらえるそうです」


 美樹先輩に俺がそう伝えると


「お母様、本当ですか? 」


 美樹先輩はすごい勢いで千穂さんに確認をとっている。


「はい、許嫁は解消することにしましたよ。美樹、嬉しいのはわかりますがそんなに慌てなくてもいいでしょ? 」


「すいません。あまりにも嬉しくて……はしたなくてごめんなさい。蒼汰さん」


 なぜか千穂さんにではなく俺に謝る美樹先輩……


「まあ、これで美樹もなにも気にせず山口くんにアタックできるわけだな。私としても一安心だよ」


 ため息をつきながら言う遠藤先輩を見て……美樹先輩のお世話ってけっこう大変だったのかななんて思ってしまう俺だった。


「私からも蒼汰くんには美樹とのお付き合いについて許可出してるわ」


 千穂さんがそう言うと


「蒼汰くん? 」


 美樹先輩は千穂さんが蒼汰くんと呼ぶことになにか引っかかりを覚えたようで


「なぜ、お母様が蒼汰さんのことを蒼汰くんって呼んでらっしゃるのでしょうか? 」


 目が怖い……そんな表情で千穂さんに詰め寄っていた。


「やっぱり美樹とお付き合いするなら私も親しくなったほうが良いでしょ? だから蒼汰くんって呼ばせてもらうことににしたのよ。なに母親にヤキモチ焼いてるのよ、この娘は。なにもないわよ。それよりも蒼汰くんとのお付き合いを許可したことを気にしなさいな」


 千穂さんは呆れたように答えていた。

 俺はそんな美樹先輩をみて……もしかして嫉妬深い? のかなと思ってしまうのだった。


 その後、皆で昼食を取りながら簡単に千穂さんから俺との会話を上手くまとめて説明してもらった。俺の母親の話題はなしで。あまり話したくない内容なので気を使ってくれた千穂さんに感謝した。

 また、美樹先輩は俺が千穂さんを名前で呼んでいるのがどうも気に入らないようで


「お母様を名前で呼ぶのでしたら……私もそろそろ先輩を外して呼んでほしいです……」


「そういえば……私もいまだに遠藤先輩だな。そろそろ友人として名前で呼んでくれても良いのでは?」


 とふたりから責められることになった。いや、美樹先輩はわかるけどここで遠藤先輩まで言うか? と思いはしたが


「負けました。わかりました。これからは美樹さん、千夏さんと呼びますね。それとこれからは千夏さんも俺のことを名前で呼んでくださいね」


 そう伝えると、美樹さんは満面の笑みを浮かべ、千夏さんは自分から言ったにもかかわらず頬を赤くしてそっぽを向くのだった。

 ちなみに名前呼びに関して千夏さんを睨むことはなかった美樹さんでした。




 そういえば、相楽・妹がいないなと思っていたら、今日はお出かけしているらしい。というか今まで忘れててごめんな。


 さて、昼食も終わったのでそろそろ失礼しようと思っていたのだが、美樹さんに止められてしまった。


「お時間があるのならもう少し居て頂けると嬉しいのですが。蒼汰さん、今日はお母様との会話ばかりで私とはあまり会話できておりませんから……」


 少し頬を赤くしてそう言われると帰るに帰れないなと


「わかりました。もう少し帰る時間を遅らせますね」


 そう言って美樹さんに付き合うことにするのだった。

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