第31話 美樹の母親。
俺達3人は、美樹先輩の家へと歩いて向かっている。そこまで遠くはないらしい。毎日途中まで一緒に帰っているわけで、いつも俺と別れる場所から10分くらいの場所とのこと。
「蒼汰さん、今日は来てくださってありがとうございます」
「いえ、こちらこそお誘いありがとうございます」
「……いまさらそんな挨拶交わす必要ないんじゃないか? 」
ふたり挨拶交わしているところを見て、遠藤先輩は今更感を感じたみたいだ。
「まあ、山口くんは緊張しているんじゃないか? 」
「ははは、美樹先輩のお母さんと何を話すのか緊張はしてますね」
俺は素直に緊張していることを伝えた後、落ち着くようにいつもの飴ちゃんを口に含んでおいた。
「美樹のお母さんは厳しいけど良い人だから多分大丈夫だよ」
そんな話をしながら歩いていれば時間もあまり感じずに美樹先輩の家へと着くことが出来た。そこそこ大きい家で……いや、うちと比べればそこそこではなく大きい家なんだが。
俺は緊張しながらも美樹先輩の後をついていく。
「じゃ入りましょうか? 」
そう言って、美樹先輩は玄関の扉を空け
「ただいま帰りました」
帰宅の挨拶をした。
すると、2階の部屋から一人の女性が出てきた。俺は部屋にいても外の声が聞こえるんだと全然関係ないことを考えたのは内緒だ。
綺麗な人ではあるが、少しきつめな眼をした人。もしかしてこの人が美樹先輩のお母さんかなと俺は感じていた。
階段を降りてきて
「美樹おかえり。そして千夏ちゃんいらっしゃい。いつも美樹をありがとね。そしてはじめまして、山口くんで良かったかしら。私は美樹の母親の千穂【ちほ】よ。よろしくね」
やはり美樹先輩のお母さんで合っていたようだ。
「千穂さんおひさしぶりです。美樹にはいろいろと面倒かけられてますよ? 」
「千夏ちゃんそんな事言うんですか? 」
「ははは、冗談だよ」
ふたり、楽しそうに美樹先輩のお母さんと会話をしていた。
俺も挨拶をしなければと
「はじめまして、山口 蒼汰と言います。美樹先輩にはいつもお世話になっております」
と挨拶をする。こんなんでいいのかと思いながらも。
「そんなに改まること無いのよ? 私のことは千穂と呼んでね。美樹もその妹の美優もいるから、名前で呼ばないと分かりづらいでしょ? 」
そう言って微笑んでくる。見ている限り遠藤先輩の言うとおり優しそうな人だなと思った。笑顔も作られたものじゃないなと思えたし。
「さてと、早速だけど私、山口くんとふたりでお話したいので美樹と千夏ちゃんはリビングで寛いで待っててくれるかしら」
いきなりふたりで会話ですか? 千穂さん。結構敷居が高いな、ほんと。
「え? 私達がいちゃ駄目なんですか? 」
美樹先輩は驚いて美穂さんに尋ねた。
「そうね。美樹にも悪いけど席を外してて。変なことしないから大丈夫よ。ただ、山口くんのことをじっくり聞きたいだけだから。」
「話を聞くだけなら私がいても問題ないじゃないですか? 」
美樹先輩は引き下がらずに一緒にいようと母親に言い寄る。
だけど俺としては、千穂さんと話をするならふたりのほうがいいかもしれないと思い直した。どこまで話すか今のところ考えていないが、あまり美樹先輩たちに話したくない内容が出るかもしれないとそんな気がしたからだ。
「美樹先輩待って下さい。俺、千穂さんとふたりで話してきますから。待っててもらえませんか? 」
俺は美樹先輩を抑えることにした。
「え? わかりました……残念ですが蒼汰さんがそうおっしゃるなら。リビングで千夏ちゃんと待っていることにします。でも、何かあれば教えて下さいね」
美樹先輩、心配してくれてありがとうございます。
「山口くん、ゆっくり話してくると良い。美樹はちゃんと見ておくから」
そういって遠藤先輩も優しい声でそう言ってくれた。
「話はついたようね。では私の部屋へ行きましょうか? 山口くん」
俺は千穂さんの後に着いていき、2階の千穂さんの部屋へと行くのであった。
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