第30話 駅前で待ち合わせ。



 今日はとうとう美樹先輩のお宅へ伺う日だ。昨日は嫌な夢を見てしまったけれど、体調的には問題ないなと確認できた。あれかな、美樹先輩の母親に会うってことで母親つながりで見てしまったとか……。まあ気にしてもしょうがないか。


 朝から伺う予定なのでおしゃれではない俺は適当にTシャツとジーンズに着替え朝食の準備を始めた。今日は軽くパンにコーヒー。目玉焼きはどうしようか。親父が欲しがるだろうしつけとくか。

 準備をしている途中に、親父が部屋から出てきた。


「親父、今日は朝から出かけるから。帰りは何時になるかわからん。昼と夜の飯は自分でなんとかしてくれな」


「了解。にしてもめずらしいな、いつも家にこもってる蒼汰が。もしかしてデートか? いやそれはないな」


 親父は失礼なこと言ってくれちゃっている。


「失礼な。まあ「デートは無理」は否定しないよ。それでも一応友達がひとりから3人に増えたんだぞ! 」


 あまり威張れることではないが一応言っておく。


「そりゃすごいな、こりゃ赤飯か? 」


「ん? それなんか違うだろ? 」


 そんなことを話しながらふたり笑いあう。




 食卓に朝食の準備を終えふたり席へと座る。座る位置は対面だ。


「親父は今日も仕事か? 」


「まあな、ほんとうちの会社は人使いが荒いからなかなか休めないんだよ」


 親父はため息をつきながらそんな事を言う。


「無理だけはすんなよ。家族は親父だけなんだから倒れられたら困る」


「うん、ちゃんと気をつけてるよ」


 親父は嬉しそうにそう答えた。




 俺は美樹先輩の家を知らないため、10時に駅前で待ち合わせをして向かうことになっている。なので朝食後できることをしてしまい9時半に家を出た。駅には10分程で着くため十分時間をとっている……はずだ。ただ、美樹先輩がちょっとわかんないからなあ。早く来すぎて何時間待ちとかなってないかなと少し不安になってしまう。


 駅前に着くと美樹先輩と遠藤先輩がもう待っていた。なんでふたりはいつも俺より早いのかなあ……そんなことを思いながら


「お待たせしました、先輩。おふたりとも早いですね。もしかして長い時間待たせてしまいましたか? 」


「おはようございます、蒼汰さん。それほど待っていませんよ? 」


 美樹先輩はそう言うが


「おはよう、山口くん。美樹はそう言うが……ここに着いたの8時半だよ。10時待ち合わせなのに。もっと遅くて良いと言っても待ちきれない様子だし、山口くんが早く来てまたせたら大変ですって言って引っ張られてきたよ。1時間以上待ちだね」


 ジト目で美樹先輩を見ながらそう言った。




「もう、千夏ちゃんばらさないで下さい。恥ずかしいです」


 美樹先輩は顔を真赤にして遠藤先輩に言うのだった。

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