第26話 美樹の追及。



 山口くんと斎藤くんがメンズトーク? をしている一方、私、千夏と美樹は教室で食事およびガールズトーク? をすることとなった。ここのところ山口くんと一緒に食事をしていたけれども、今日は一緒ではないということで「なにかあったのか? 」「これはチャンスじゃね? 」と私達に声を掛けてくる男子生徒が多発していたのだが、


「今日は千夏ちゃんと大事な話があるのでごめんなさい」


 いつもなら考える素振りさえする美樹だが今日は即座に断りを入れていた。


「めずらしいな。美樹が即断して断るとは」


 私も珍しいと驚きながらそれを見て呟いた。


 美樹は私に振り向きながら


「そうですね。ちゃんと理由がありますから……でしょうか? 」


 そんな事を言う。


「ということは本当に私に大事な話がある……ということかな? 」


「そうです、千夏ちゃん!今日はお話があるのです」


 そう言って慌てて席に座り、私を見つめる。


「何事かよくわからないがまずは食べながらでも話そうか」


 千夏はそう言って美樹に食事を促す。


「そうですね。久しぶりのふたりでの食事。楽しみましょう」


 そう言ってお弁当の蓋を開け、ふたり共に食べ始めた。




「それでですね、千夏ちゃん」


 けれども、食べ始めて即美樹が話し出した。


「最近気になる人ができましたか? 」


「ん? 気になる人とは? 」


 意味がわからないことを言い出した美樹に私は問い返す。


「気になる人とは異性の人のことです! 」


 なぜか美樹は胸を張ってそんな事を言う。

 私はどちらかというと男の人は苦手な方だ。まあ、話せないというわけではないが。けれども、どうも同い年の男の人は外見ばかりを重視するせいか好ましく思えない。特にいつも美樹と一緒にいることも関係しているかもしれない。美樹に寄ってくる男の人は多くが外見ばかりを褒める。逆に美樹の内面を褒めることはろくに聞いたことがない。


 まあ、私の場合、男っぽいせいか男の人から声が掛かることはそうない。掛かるとすれば美樹と外出時のナンパくらいか。そう、美樹といるときにしか声が掛からない。私はおまけということだろうか。なんだか言ってて悲しくなる部分もあるな。


「うーん。そんな人は居ないのだが……男の人の知り合いなんて山口くんとその友達の斎藤くんくらいだし……」


「そういえば、斎藤くんとは気楽に話せてましたね。なぜでしょうか? 」


 美樹は私が男の人が苦手なことを知っている。だからそう思うのだろう。


「山口くんの友達だからな。信用していた……ということが理由なのかな? 」


 私もはっきりと断定できないような弱い言葉で美樹に返す。


「蒼汰さんを信用していたから……ですか。では、なぜ蒼汰さんを信用しているのですか? 」


 続けて美樹が私に尋ねてくる。確かになぜだろう。そんなことを今まで考えたことは無かった私。

美樹が好きになった人だから。

美樹の告白に外見で判断するのはなく誠実な答えを返す人だったから。

普段会話する中でも誠実さが溢れていたから。


「山口くんが誠実な人だとわかったからかな。美樹との告白、直接会話した中でそう感じたからだと思うよ」


「それにですね千夏ちゃん。普段あまり冗談を言わない千夏ちゃんが斎藤くんに気になる人は誰? と聞かれた時、蒼汰さんと答えましたよね? あれはなぜです? 」


 冗談を言う言わないは別にして、確かに気になる人と言って山口くんを出してしまった。美樹がいるにも関わらずに。今考えると不思議なことだと私も思う。


「うーん。なぜかと言われると私もよくわからない」


 私は美樹に降参するしか無かった。私にもわからないのだ。


「私が思うに千夏ちゃんもきっと蒼汰さんのことが本当に気になっていると思うのです」


 美樹はそんな事を言う。でも私にはそんな実感はない。というより考えたこともなかった。


「そう言われると気になる、気にならないで言えば気にはなっているだろうと思う。それで美樹はなにが言いたい? 」


 何が言いたいのかよくわからない美樹に確認する。


「千夏ちゃんいろいろと言ってごめんなさい。千夏ちゃん自身よくわかっていないようですのでこのへんで止めておきます。でも私が伝えたことよく考えてみてください。そして、私が何を言いたかったのか理解できた時はちゃんと教えてくださいね、隠さずに。」




「もしそうでも否定しませんから。嫌いになんてなりませんから。大事な友達ですから」


 そう言って、美樹はおかずを一口食べ、にこっと笑いかけるのだった。

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