第07話 美樹は諦めていないぞ。



 放課後、帰宅部の俺はのんびりと帰る準備をしていた。そこに圭佑が


「もう帰るのか? 」


と、声をかけてきた。


「ああ、帰って家事しないとだからな」


 そう、男しか居ない家庭。親父は仕事、俺が家事当番。することいっぱいあるわけさ。


「まあ大変だろうが頑張れ。俺は部活に行ってくる。またな」


 圭佑はそう言って教室を出ていった。


 ひとりで教室を出て下駄箱へ、下駄箱を空けてみると手紙が一つはいっていた。この前は相楽先輩の呼び出しラブレターだったが、今日のはなんだろうと気になって手紙を開けてみる。そんなところで開けるのかと思うかもしれないが、俺のことなんて圭佑以外気にするやつなんていないだろうと周りを気にする気もないからね。


 開けて読んでみると、どうも遠藤先輩からのようだ。SNSのIDが記載され連絡がほしいと書いてあるメッセージだった。こんなに簡単に教えて良いものかと思うも、あれかな、今日の昼休みの出来事についての話かなと、とりあえずは手紙をポケットに入れ家へと帰宅した。


 家へと帰宅し部屋で着替えた後に風呂や部屋の掃除、夕飯準備と手早く済ます。今日の夕飯はカレーだ。煮込む時間を簡単にしてるため、ちょっとサラサラカレーだけど。まあまずくはないと思ってる。そこは男飯ということで勘弁してくれ。


 あとは親父が帰ってきたら飯や風呂の準備するだけの状態にして部屋へと戻る。さてと遠藤先輩からもらったID登録して連絡するかなと手紙を取り出し、スマホへ登録。早速連絡を入れる。


「ども、山口です。手紙を見まして連絡しました。登録してから何ですがこんなに簡単にID教えちゃ駄目ですよ。変な人に漏れたら大変ですから」


と、挨拶以外にIDを簡単に教えたことへの注意をメッセージで送っておく。忙しいだろうし返事はすぐ来るわけ無いだろうと思っていたが、即座にピコンと音がなり返事が届く。


「遠藤です。IDは山口くんに教えても問題ないと判断させてもらった。それでも注意してくれてありがとう。それと今日は本当に申し訳なかった。どうしても美樹が山口くんの姿が見たいと聞かなくてな」


 やっぱり俺を見に来ていたわけだ。


「見られるのは別にいいんですが、ちょっと人だかりできすぎて大変なことになってましたよ。もう少し周りに与える影響を考えたほうが良いと思いますよ。相楽先輩もだけど遠藤先輩も。ふたりとも人気があるようですからね」


 とりあえず、思ったことを返す。


「そうなのか? 美樹はともかく。わかった、今後気をつけることにするよ。だが、山口くんに会うにはああするしか無いのもある。もし昼休みにでも食事に誘ったら来てくれるかい? 」


 言われて少し悩むが、


「んー難しいですがその時考えます。ただ、そうなったらこそっと連絡下さい。周りのみんなに知られるとちょっと大変なことになりそうです。それよりも俺、お付き合い断りましたよね? それなのになんでこんな事になってるんでしょう? 」


と、疑問に思ったことを聞いてみた。


「あーはっきり伝えておいたほうがいいよね。美樹は諦めていないぞ。問題がなければ考える余地はあると君は言っただろう? だから問題を片付けてまた告白しようと考えてるぞ」


 そんなまさかの答えが帰ってくる。


「そんな簡単には行かないでしょう? 許嫁の話とか。無理だと思ったからあの条件で俺に伝えてきたのでしょうに」


「そうなんだがな。まあ、美樹が頑張るようなのでその辺は諦めてくれ」


と、遠藤先輩は伝えてきた。まあ、泣きそうだった相楽先輩が元気なようでちょっと安心した俺だった。




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