第05話 愚痴を聞いてくれるやつがいることはいいことだ。



 翌日、俺は少し気持ちが重い気がしながらもとりあえず学校へと赴いた。告白やら受けたこともないわけで。そう、普段女性と関わるのは圭佑のネタくらいしか無いわけで。俺のことでなんて今までなかったわけで。それなのにお断りするしかなかったわけで。なんだかなあと今日はため息しか出ないそんな日さね。


 朝からため息をついていると、


「どうした? めずらしくため息とか……幸せ逃げるぞ」


 休み時間に、圭佑から声をかけられた。


「んーちょっとね。めずらしく圭佑ネタ以外でイベントあってね。ちと気が重い」


「ん? 珍しいな。なにがあった? 」


「別に話しても問題はないと思うんだが。相手がいるからなあ」


 俺は少し困ったように話す。


「悩みなら聞くぞ、というか俺しか言える相手いないだろ? 」


 圭佑はちょっとムカつくことをいいやがる。


「ちとムカつくけど、まあたしかにそうだけどさ。悩みってわけじゃないんだよなあ、終わったことだし」


「なら愚痴として聞こう。なんぞや? 」


 圭佑は興味津々で俺に聞く。普段、俺に大した出来事が有ることもないわけで、溜息つくくらいの出来事に相当気になるのだろう。


「まあいいか、話しても。昨日告白されたもんでね。圭佑も知ってのとおりこんなの初めての出来事なもんで。だけど、断らざるをえない告白だったからさ。しっかりお断りしたわけさね。もともと拒否って苦手だから、今回お断りしたのが結構きててね。辛いもんだなあって思ってさ、圭佑の苦労がわかったなあって」


 そう、圭佑はモテる割に告白されても付き合ったこと無いんだよな。好きな人でもいるのかななんて思ったりするけれど。

 

「うむ、そうだろそうだろ。と、俺のことよりその相手がすごく気になるけど。そこは言わないんだろう? 」


「断ったわけだし振ったことになるからねぇ。流石に言えないかな」


 俺は、すこし困った顔でそう伝えた。


「まあそうだろうな、相手に失礼だし。それ以上は聞かないよ。でもその娘いい子だな、蒼汰の良さがわかるとは。そういや最近、蒼汰のことふざけた用事で話しかけるやつ増えてるな。前々から蒼汰に言ってるけど俺のことで聞きに来た奴ら、無視していいぞ」


 そう、圭佑は俺に圭佑のことを聞いてくる失礼なやつは相手にしなくていいといつも言ってくれてるわけだけど、ただ、どうしてもスルーできないんだよなぁ、俺。拒否、拒絶に苦い思い出があるから、たとえ俺が嫌なことでもどうしてもできない。まいったもんだ。


「わかってるんだけどね。無視とか拒絶とかしたくないんよね、俺。だから、俺が悪いし諦めてるから良いよ」


 そう圭佑に返すしかなかった。


 「まあ、無理はするなよ。またなんかあったら聞いてやろう。ハンバーガーおごりでどうだ? 」


 なぜか奢らせようとする圭佑。


「おごってくれるなら話してやろう」


 俺はそう言い返してやった。

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